人数が増えるほど仕事のチームの質は低下してしまうという研究
チームで協力することで、1+1が3にも4にもなる。
これは本当にあり得ると思いますか?
確かにメンバーがお互いを補い合って協力すれば、個人個人で働くよりも大きな成果が発揮できそうです。しかし、チームの人数が増えることはいいことばかりではありません。
例えば、チームの中に嫌な奴が一人いるだけでチーム全体のモチベーションが下がってしまうとか。チームメンバー任せにして責任感が薄れてしまうとか。大きなチームになるほど、1+1が1.5とかにすり減ってしまうことも考えられるんですね。
そこで本稿では
- チームの人数が増えるほど、チームメンバーの行動が悪化して、チーム全体の質が低下してしまうのではないか?
ということを調べてくれたモントリオール大学の研究(*1)を見てみましょう。
チームサイズとメンバーの行動
この研究では97つのチームを対象に、
- チームの大きさ
- チームメンバーの行動
- メンバーが感じているチームの質の良さ
を測定しています。
ここで測定しているチームメンバーの行動とは、チームを邪魔する次の4つの悪い行動になっています。
- 寄生行動
チームメンバー任せにして、自分は働かずに楽をしようとする行動。チームのサイズが大きくなると、一人一人の責任感が薄れるので、寄生行動が増える可能性がある。 - 攻撃行動
個人を責めるなどの攻撃的な行動。チームが大きくなるほど、全員が仲良く一致団結するのも難しいので、攻撃行動が増えてしまう可能性がある。 - 自慢行動
他人を押し下げてチームの成果を自分のものだと誇張する行動。チームが大きくなるほど個人の貢献度も曖昧になるので、自分のおかげだと感じやすくなってしまうことがあり得る。 - リソースの悪用
チームの共有の物品や装置などのリソースを悪用する行動。チームメンバーが増えるほど、効率的なリソースの分配が分かりにくくなるので、自分ばかりリソースを使おうとしてしまったりする。
そして、チームの質は次の5つの質問で測定がされています。
- チームの雰囲気は良いか?
- チームの人間関係は良好か?
- チームメンバーはお互いにうまくやっているか?
- メンバー同士で学び合っているか?
- このチームで働きたいと思っているか?
まとめると、
- チームが大きくなるほど、4つの問題行動(寄生、攻撃、自慢、リソース悪用)が増えてしまうのか?
- これらの問題行動が増えるとチームの質まで低下してしまうのか?
を分析しているわけですね。
結果:チームが大きくなるほど質は低下するのか?
分析の結果見てみると、
- チームサイズが大きくなるほど、寄生行動が増えた(β=0.43)
- チームサイズが大きくなるほど、攻撃行動が増えた(β=0.52)
- チームサイズが大きくなるほど、自慢行動が増えた(β=0.37)
- チームサイズが大きくなるほど、リソースの悪用が増えた(β=0.50)
となっています。チームが大きくなるほど、4つの問題行動の全てが増えてしまうという結果になっています。
さらに、チームの質にどのように影響していたのかというと、
- チームサイズが大きいほど、チームの質は低かった(β=−0.33)
- 寄生行動が多いほど、チームの質は低かった(β=−0.25)
- 攻撃行動が多いほど、チームの質は低かった(β=−0.45)
- 自慢行動が多いほど、チームの質は低かった(β=−0.29)
となっています。
唯一リソースの悪用はチームの質とは関係がなかったようですが、3つの問題行動はチームの質を低下していて、結果としてチームサイズが大きいほどチームの質は悪くなってしまうということです。やはり、チームは大きければいいというものではなく、最適なチーム人数を考えることが大切みたいですね。
まとめ
本稿では「チームが大きくなるほど、チームの質は低下してしまうのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- チームの人数が増えるほど、寄生、攻撃、自慢、リソースの悪用などの問題行動が増えてしまう
- これらの問題行動が増えると、チームの一体感やこのチームで働きたいという気持ちが低下して、チームの質が悪化してしまう
ということですね。
統計的に見れば1+1が3にも4にもなるチームは少数で、1+1が1.5とかにすり減ってしまうチームの方が一般的だということですね。各個人が明確な役割と責任感を持てるくらいの少数精鋭なチームが良いのでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Team Size and Quality of Group Experience: The More the Merrier?