チームの多様性を活かすには、実はモチベーションも欠かせないという研究結果

最近ではチームの多様性が仕事の場面で特に注目されるようになりました。

スキルや性格が違う様々なバックグラウンドのメンバーがチームとして協力し合うことで、創造的なアイデアが出たり、異なる切り口の問題解決案が出たりと、チームのパフォーマンスが高まるという理屈ですね。

しかし、この多様性を実際に活かすのは難しい側面も多くあります。メンバーが多様になればなるほど、メンバー同士で意見が噛み合わなかったり、似たメンバーが小グループを作ってチーム内で分断してしまったりという問題も起こり得るわけです。

そこで、本稿では「多様性を発揮させてチームのパフォーマンスを上げるために大切なことは何か」をドイツで行われた研究(*1)を参考にお話ししていきたいと思います。

多様性を発揮するために必要な2つのこと

この研究では多様性を発揮してチームのパフォーマンスを高めるために必要な要素として、2つのことが重要なのではないかと言っていいます。

①多様性への信条

一つ目はチームメンバーの多様性の信条です。つまり、多様性はチームのパフォーマンスを上げるために大切なもので、私は多様なメンバーとうまく協力し合う必要があると信じているかどうかです。

なので、ただ多様なメンバーを集めるだけではダメで、チームプレイが大切だとみんなの意識をしっかりと共有する必要があるということですね。

②タスクへのモチベーション

この研究が考える2つ目に必要な要素がモチベーションです。

多様性なメンバーの集まるチームでは、自分とは価値観が全く違う人ともうまくコミュニケーションを取る必要があります。このときにメンバーのモチベーションが低いと、わざわざ自分と違う面倒な人とは話したがらなくなってしまって、チームがうまく回らなくなってしまうのではないかということです。


以上、これらの2つが揃えば、多様なメンバーの意見の食い違いや分断を乗り越えて、チームのパフォーマンスを向上できるのではないかというのがこの研究の着眼点ですね。

実験:この2つでパフォーマンスは上がるのか?

それで、本当に「多様性への信条」と「タスクへのモチベーション」が多様性の高いチームのパフォーマンスを上げてくれるのかを、この研究では実験により確かめています。

この実験では3~4人のチームを43組作って、それぞれのチームに協力が必要なタスクをこなしてもらいます。どんなタスクかというと、コンピュータ上のシミュレーションの世界で森林の管理人となってもらいます。森の木を伐採して売ったり、新しい苗木を植えたり、肥料をあげたり、あるいは害虫を駆除したりして、売り上げをできるだけ多くあげることを目指すんですね。一見すると簡単なようですが、肥料などの緻密な管理で、実はかなり複雑で難しいタスクとのこと。みんなでうまく協力する必要があるわけですね。

実験の結果

そうして得られたタスクのパフォーマンスと、メンバーの「多様性への信条」と「タスクへのモチベーション」がどう関係しているのかを分析した結果が次のグラフ。

左側のグラフがモチベーションが低かったチームのグラフ、
右側のグラフがモチベーションが高かったチームのグラフ

横軸がチームの年齢や専門といった多様性の高さ、
縦軸がチームのタスクのパフォーマンスとなっています。

グラフを見ると4本の線のうち3本は右下がりになってしまっています。これらは多様性が高まるにつれてパフォーマンスが落ちてしまっているんですね。

一方で1本だけ右上がりのグラフがあって、多様性が高くなることで逆にチームのパフォーマンスを向上させるのに成功しています。この1本が「多様性への信条」と「タスクへのモチベーション」の両方が高いグループなんですね!

つまり、まとめると

  • 多様性を活かしてチームのパフォーマンスを上げるには「多様性への信条」と「タスクへのモチベーション」の両方が必要!
  • どちらか一方でも失われると、多様性は悪く作用してチームのパフォーマンスを低下させてしまう

ということがこの研究からわかった成果になります。

まとめ

本稿では、多様性を生かしてチームのパフォーマンスを高めるためには「多様性への信条」と「タスクへのモチベーション」の両方が必要!というお話をしました。

タスクへのモチベーションも必要ということで、モチベーションが上がらないとなかなか多様なメンバーで協力しようという気にななれないみたいですね。確かに考えの違う人たちを集めると意見をまとめるのにも一苦労なので、自分の気の合う人たちで決めたくなってしまうこともありますよね。

また、この研究の2つの要素が足りないと多様性はパフォーマンスを下げる側に悪く作用することもあるということで、何でもかんでも多様なメンバーでコラボしようとすると高いコストがかかってしまうこともあり得ます。なのでタスク内容に応じて、必要なメンバーを考えてチームの多様性の組み方を最適化するのがいいのかもしれませんね

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1: When beliefs are not enough: Examining the interaction of diversity faultlines, task motivation, and diversity beliefs on team performance


Naoto

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

コメントする