スポーツのパフォーマンスに練習量はどれだけ影響するのか?の研究

楽器の演奏にしても、スポーツにしても、一流レベルのパフォーマンスを身につけるためには、膨大な練習が必要になります。

バイオリニストは練習量を調べたエリクソン博士の研究では、、トップレベルのプロは1万時間の練習をしていたことが分かっていて、ある分野で一流のエキスパートになるには1万時間の練習が必要だという「1万時間の法則」として有名になりました。

しかし、スポーツや音楽、チェス、学問など、全く異なるスキルの分野で全て1万時間が必要というのはいくらなんでも言い過ぎで、

  • 分野によって必要な練習量は違うのでは?
  • そもそも、分野によって練習の大切さも違うのでは?

という疑問が考えられます。

そこで本稿ではスポーツに注目して、練習量はどれだけスポーツのパフォーマンスに影響するのかを分析してくれてたケース・ウェスタン・リザーブ大学の研究(*1)を見ていきましょう。

練習はどれだけスポーツのパフォーマンスに影響するのか?

この研究では、様々なスポーツの練習量とパフォーマンスの関係を調べた研究33件をメタ分析でまとめてくれていて、実験対象者数はトップアスリートからローカルのクラブレベルまでトータルで2,765人にもなります。

集められた研究のスポーツの種目は様々で、種目のタイプによる練習の大切さの違いを分析するために次のポイントにも注目しています。

  • 個人種目とチーム種目で練習の大切さに違いはあるのか?
  • 外部ペースの種目(バレーボールなど)と自分ペースの種目(体操など)で差はあるのか?
  • ボールを使う種目と使わない種目で差はあるのか?
  • オープンスキルの種目(サッカーなどの臨機応変に行動する種目)とクローズスキルの種目(ボウリングのように動作の状況が変わらない種目)で差はあるのか?

それでは結果を見ていきましょう。

結果

まず全てのスポーツを総合したときの結果と見てみると、

  • スポーツのパフォーマンスのうち練習量で説明される割合は18%だった

ということ。

世界トップレベルのプロから地元の大会レベルのアマチュアまで、スポーツのパフォーマンスは人によって大きく差がありますが、練習量はその差の18%しか説明できず、残りの82%は他の要因だということです。思っていたよりもずっと低い値で意外ですね。

結果②:スポーツの種類のよる違い

そしてスポーツの種類による違いの分析結果を見てみると、

  • 個人スポーツで練習量の影響は19%
    チームスポーツで練習量の影響は17%
  • 外部ペースのスポーツで練習量の影響は17%
    自分ペースのスポーツで練習量の影響は41%
  • ボールを使うスポーツで練習量の影響は20%
    ボールを使わないスポーツで練習量の影響は15%
  • オープンスキルのスポーツで練習量の影響は17%
    クローズスキルのスポーツで練習量の影響は19%

ということ。どの結果も統計的には有意ではなかったということですが、自分ペースのスポーツのみ41%と高めの値になっているのが特徴的ですね。

この結果からすると、水泳や100m走、アーチェリーなど、相手からの影響をあまり受けることがなく、自分のペースでパフォーマンスを発揮することが求められる種目の方が練習は大切ということですね。

結果③:スキルによる違い

さらにこの研究ではスキルのレベルや年齢によって練習量の大切さに違いがあるのかも分析しています。

その結果は

  • 若いアスリートで練習量の影響は19%
    大人のアスリートで練習量の影響は18%
  • ローカルレベルのサブエリートで練習量の影響は19%
    世界レベルのエリートで練習量の影響は1%
    サブエリートとエリートを合わせると練習量の影響は29%

ということです。

世界レベルのエリートでは、練習量の影響はたったの1%というのは驚きですね。ただ、サブエリートとエリートを合わせたときに29%に上昇しているので、エリートが練習をしていないというわけではなく、サブエリートと比べるとエリートの方が練習量は多い傾向があるのだと思います。

つまり、練習量だけでもある程度までは上達できるけど、世界レベルの争いになるとそれ以上の何かが必要になるということでしょう。その何かはまだ分かっていませんが、それは遺伝的な要因や練習の質的な要因が関連しているのかもしれませんね。

結果④:スポーツを始める年齢

そして最後に、この研究ではスポーツを始める年齢については分析してくれていて

  • スポーツを始める年齢はパフォーマンスとは関係ない

という結果が得られています。

普通に考えると、小さい頃から英才教育を受けた選手の方がパフォーマンスが高そうですが、実はこれはウソということですね。もちろん英才教育ですごい選手になる人もいますが、遅れて開始して世界レベルになる人も同じだけいるということです。

なんでも最近の研究では、小さい頃はいろんなスポーツを体験させて、様々な運動能力を鍛えた方が、将来のスポーツのパフォーマンスが上がるみたいな研究もあるみたいで、小さい頃から一つの種目だけをやらせるのが正しいとは言い切れないみたいです。

まとめ

本稿では「スポーツで練習量はどれだけ大切か?」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 練習量はスポーツのパフォーマンスに18%影響する
  • 自分のペースで行える種目なら練習量の影響は41%になる
  • 世界レベルのエリートでは練習量は1%しか影響しない
  • スポーツの開始年齢も早い方がいいということは無い

ということですね。

ここで言いたいのは練習が必要無いということではなく、単純に練習の量を増やせばいいわけでは無いということです。練習の質を向上させるであったり、フォームや戦略を改善するであったりと、スポーツのパフォーマンスを高めるには他にも色々なことを考える必要があるということですね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : The Relationship Between Deliberate Practice and Performance in Sports: A Meta-Analysis

Naoto

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