スポーツ選手のメンタルの強さは、心理トレーニングで鍛えることができるのか?
スポーツのパフォーマンスを高めるのには体を鍛えることももちろん大切ですが、強いメンタルを手に入れることも大切です。
例えば、マラソンのような持久力が必要な種目では、後半になって肉体的にキツくなってきたときにメンタルの強さがないと、その体のキツさに心が負けてパフォーマンスが低下してしまいますよね。
そこで問題になるのが
- メンタルはどうすれば強くすることができるのか?
です。この問題についてはスポーツ心理学などの分野でも研究がされていて、メンタルを鍛えるためのトレーニングやプログラムを実践してもらってその効果の測定がされています。
そしてニューヨーク州立大学らの研究(*1)がこれらのメンタルの改善トレーニングが本当に効果があるのか分析してくれていましたので、本稿はその中身を見ていましょう。
メンタルの改善トレーニング
ニューヨーク州立大学の研究では、メンタルを鍛えるトレーニングの効果を検証した1000以上の研究の中から、一定の基準を満たした質の高い研究12件を厳選して、それらをメタ分析でまとめてくれています。
そして、その結果として分かったのは
- メンタルを鍛えるトレーニングは全体的に見て、大きな効果があることがわかった
- その効果の程は平均の効果量d=0.80で、95%信頼区間では0.18〜1.89になる
ということです。効果量d=0.80というのは結構大きめな値で、メンタルのトレーニングの効果の高さが分かります。日々のちょっとしたことでメンタルの調子が上がったり下がったりするように、メンタルは心の中の考え方の問題なので、トレーニングで物事の見方を少し変えるだけでもメンタルはずっと強くなるのかもしれませんね。
しかし、この研究にも弱点があって
- 具体的にどんなトレーニングが効果が高いのかまでは分かっていない
- 短期的なトレーニング効果を測定した研究を扱っていて、長期的な効果があるかは分からない
ということなので、その点は注意が必要です。
メンタルを鍛えるトレーニング
それでは研究では具体的にどんなトレーニングが行われたかのサンプルを紹介したいと思います。しかし、どの方法が強い効果があるのかまではまだ分かっていないので参考程度で見てみてください。ちなみに、これから紹介するのは競歩の選手向けの内容になっています。
①コースのメンタルマップを作る
この坂道はキツいから注意みたいにコース上にあるキツさや疲労感を感じるポイントをマッピングしておく。また、コースの節目節目に目印となる場所を決めてコースを細かい単位に分割する。本番に走るときは今走っている部分のみに集中する。
②セルフトーク
レース中に辛いときやパフォーマンスを上げたいときに「まだまだいける!」みたいに自分で自分を励ます言葉をかける。このときにネガティブな言葉はポジティブな言葉で言い換えるようにする。例えば、”辛い”は”頑張っている”とかに言い換える感じ。
③集中力を維持するテクニック
右足、左足、右足、左足・・のように動作に集中する。
過去のことや未来のことは考えずに今に集中する。
音楽で集中力を高める
④自信を高める
自信は準備と自分を信じることから生まれる。自分の信じる方法を選ぶ。自分でコントロールできるものに集中して、対戦相手のことなど自分でコントロールできないことは気にしないようにする。
⑤イメージトレーニングする
自分が本番を走っている時を想像して、そのときにどんな姿やどんな表情でいたいのかをイメージする。レース中に障害にぶつかったときに、どんな風に対処するのかをイメージしておく。痛みや辛さに対してどんなメンタルの葛藤があるのかをイメージしておく。最後にゴールする瞬間をイメージする。
⑥レース中にイメージする
本番で走っている最中に、自分の心の壁を壊すイメージをする。太陽の光が体の疲れや痛みを和らげれくれているイメージをする。
まとめ
本稿では「メンタルは心理トレーニングて鍛えることができるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- メンタルの心理トレーニングには大きな効果がある(効果量d=0.80)
- トレーニングの方法は、セルフトークやメンタルマップ、集中テクニック、自信を高めるテクニック、イメージングなど色々ある
- ただし、具体的にどんなトレーニングが効果があるのかは分かっていない
ということですね。
メンタルの心理トレーニングは大きな効果が期待できるということで、これは嬉しい研究結果でした。私は筋トレをするようになって「自分は強くなっている」というイメージができてからメンタルも強くなった気がします。こんな感じで、ちょっとした考え方の変化でもメンタルは向上するのかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]