不誠実な行動で共感能力が下がってしまうという研究

ダニエル・ゴールマンの著書「EQ 心の知能指数」をはじめとして、最近では共感能力が大切だと言われるようになりました。

共感能力が高い人とは、相手の感情を読み取るのがうまくて、自分の感情にも適切に対処ができる人のこと。共感能力が高いと良好な人間関係を作ることができるので、仕事でも人生でも成功がしやすいと考えられています。

なので共感能力は高めていきたいわけですが、ミシガン大学らの研究(*1)によると

  • ずるいことやイカサマのような不誠実な行動をとると、共感能力が低下してしまう

という結果が得られていました。本稿ではその中身を見ていきましょう。

不誠実な行動と共感能力

そもそもなんでこの研究が不誠実な行動で共感能力が低下してしまうと考えたのかというと、2つの考えが元になっていて、

  • 不誠実な行動は自己中心的な行動である
    例えば、テストでカンニングをしていい点を取ったり、トランプでイカサマをして勝ったりなど、自分の利益のためにルールや相手の信頼を裏切るわけですね。
  • 人間は自分のアイデンティティを他の人との関係の中で認識する
    「私はお母さんの子供」「私はこの人の友達」みたいな関係性を認識することで、自分のアイデンティティが作られるわけですね。

つまり、この2つを合わせると、

不誠実な行動を取る
→自分の視線が自己中心に向いてしまう
→他者との関係性の認識が薄れて、相手の気持ちを読み取る能力が低下してしまう

と考えたわけですね。

イカサマは共感能力を低下させるのか?

それでこの研究では、実際にイカサマしたときに共感能力が低下してしまうのかを944人を集めて実験しています。この実験で参加者はサイコロを振るタスクと感情を読み取るタスクの2つを行います。

  • サイコロを振るタスク
    サイコロを5回振って、出た目のスコアの合計に応じて賞金がもらえるタスク。参加者はサイコロを振る前に表か裏を決めて、表を選んだ場合はサイコロで出た目がそのままスコアになる。裏を選んだ場合は、サイコロで出た目の裏側の数字がスコアになる(5が出たら裏の2がスコア)

そして、このタスクで参加者は2つのグループに分けられていて、

  1. イカサマできないグループ
    表か裏の選択を毎回サイコロを振る前に宣言してもらう
  2. イカサマできるグループ
    表か裏の選択は心の中でやってもらって、スコアだけを記録してもらう

イカサマできるグループは、初めは”表”と心の中で決めてたとしても、出た目の数字を見たあとで”裏”に変えてもバレないんですね。

そして、半分の人にイカサマをしてもらった後で行ってもらうのが、

  • 感情を読み取るタスク
    42個の短い動画を見てもらって、その動画に写っている人の表情や声などから感情を当ててもらうタスク

このタスクにより、イカサマをしたグループと、イカサマをしなかったグループで相手の感情を読み取る能力に差が出るのかが確認できるわけですね。

結果

それで結果がどうだったのかというと

  • イカサマできるグループの人は明らかに平均スコアが高かった
    (実際にイカサマしていることが確認された)
  • 感情を読み取るタスクの成績は、イカサマをしたグループは、イカサマをしなかったグループよりも低くなっていた

ということで、やはり不誠実な行動は共感能力を低下させてしまうことが確認されたわけですね。

しかし、その効果の大きさを見てみると

  • 共感能力の低下の効果量はd=0.20で小さめ
    (平均23.68点の感情読み取りタスクの成績が大体1点ほど有意に低下してしまうくらい)

ということ。サンプル数が多めなので統計的には有意なものの、共感能力の低下は少しだけのようですね。まあ今回の実験の不誠実な行動もサイコロの数値をごまかす程度のものだったので、人の影で悪口を言うみたいなもっと不誠実な行動なら共感能力も大きく低下してしまうという可能性もありますね。

結果2

次に、この研究では人によって共感能力の低下に違いがあるのではないかということも調べてくれていて、次のグラフのような結果が得られています。

グラフの点線が人間関係に鈍感な人の結果で、
グラフの実線が人間関係に敏感な人の結果を表していて、

このグラフから読み取れるのは

  • 人間関係に敏感な人ほど、不誠実な行動をした後には共感能力が低下しやすい
  • 人間関係に鈍感な人は、不誠実な行動をしても共感能力は低下しない

ということですね。

人間関係に敏感な人は、普段は鈍感な人よりも高い共感能力を持っているようですが、不誠実な行動をすると共感能力が低下して鈍感な人を下回ってしまっています。これはなかなか面白い現象ですね。

まとめ

本稿では「不誠実な行動は共感能力を低下させてしまう」というお話をしました。

ポイントをまとめると

  • イカサマやズルのような不誠実な行動をすると、共感能力が低下してしまう
  • ただし効果量はd=0.20で小さめ
  • 特に人間関係に敏感な人ほど、この効果を受けやすい

ということですね。

不誠実な人は自分勝手なイメージがあるので、感覚的にも不誠実さが共感能力を低下させてしまうのは分かる気がします。共感能力を高めたければ、裏表を作らずに普段から誠実でいることが大切みたいですね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : The Interpersonal Costs of Dishonesty: How Dishonest Behavior Reduces Individuals’ Ability to Read Others’ Emotions

Naoto

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

コメントする