ネガティブな感情とポジティブな感情で記憶の正確さが変わるという研究

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人の記憶はあまり正確ではありません。一度覚えたことを忘れてしまったり、実際にはなかったことを間違って記憶してしまったりということが起こりますよね。

この現象は心理学の研究でも実験されていて、次のような問題で再現ができます。

①5秒で次の単語をできるだけに多く記憶してください。
「ベッド、休む、目が覚める、疲れ、起きる、うたた寝、ブランケット、うとうと、眠る、いびき、昼寝、平和、あくび、眠気」

②それでは、”睡眠”という単語はリストの中にありましたか?

と聞くと、睡眠はリストには無いのに、多くの人がリストにあったと間違った回答をしてしまうことが分かっています。リスト内の単語はどれも睡眠に関係するものなので、睡眠という単語もあたかもリストにあったかのように間違って記憶してしまっているんですね。

それで、本稿で注目するのは「記憶の間違いと感情の関係」で、

  • ポジティブな感情のときと、ネガティブな感情のときで、記憶の間違いの起きやすさに差が出るのか?

を見ていきましょう。

感情と記憶の正確さ

今回参考にするのがバージニア大学の研究(*1)です。この研究では、100人の学生を次の2つのグループに分けて、先ほどの記憶問題と同じ形式の実験で、記憶の正確さを測っています。

  1. ポジティブ感情グループ
    ポジティブな感情を高める音楽を8分聴いた後で、記憶問題に挑戦する
  2. ネガティブ感情グループ
    ネガティブな感情を高める音楽を8分聴いた後で、記憶問題に挑戦する
  3. コントロールグループ
    音楽を聞かずに、そのまま記憶問題に挑戦する

記憶問題は15個の単語がセットで1問ができていて、それが36問用意されています。1つの単語が表示されるのは0.25秒だけで、15個の単語を5秒もたたない時間で記憶しなければいけないという、なかなかハードな設定になっています。

結果

結果として、記憶の間違いの割合が次のグラフになっています。

白い棒グラフがポジティブ感情グループ、
黒い棒グラフがネガティブ感情グループ、
灰色の棒グラフがコントロールグループの結果です。

このグラフから分かるのは

  • ポジティブ感情グループとコントロールグループでは、記憶の間違いの確率が高い
  • 一方で、ネガティブ感情グループだけが、記憶の間違いを少し低く抑えることができている

ということです。なので正確に記憶をすることが必要な場面では、感情的にはネガティブになった方が良いということなんですね。

なぜネガティブで記憶間違いが減るのか?

それではなぜネガティブな感情で記憶の間違いが減るのかというと、ポジティブな感情とネガティブな感情にはそれぞれ異なる役割があることが原因だと示唆されています。

まず、ポジティブな感情には、発想を柔軟にしたり、物事の関連性をよく見えるようにしたりと、視野を広げる役割があります。ポジティブな時に新しいことに挑戦したくなるのも、この視野の広がりと関係しているわけですね。

一方で、ネガティブな感情には、神経質に物事の些細な点まで見るようにしたり、これまでのやり方に固執したりと、視野を狭める役割があります。ネガティブな感情のときには、確実でミスが無い方法を優先する傾向があるのも、この視野の狭まりが関係しているわけです。

それで、今回の記憶の間違いは、リストの15個の単語の共通点を見出しているからこそ、その共通点と関係する単語があったと錯覚してしまうわけです。

そのため、広い視野で単語の全体像を見渡すポジティブな感情の方が、単語間の共通点を見出しやすく、記憶の間違いも発生しやすくなってしまう。一方で、ネガティブな感情は、単語の全体の共通点よりも、個々の単語をミスなく記憶することに視野がいくので、記憶の間違いも起きにくいということなんですね。

なので、ポジティブな感情とネガティブな感情のどちらにもメリット・デメリットがあって、

  • 全体を関連させたり、全体の要旨を把握したい場合には、ポジティブな感情の方が良い
  • 細かなところまで正確に記憶する必要がある場合には、ネガティブな感情の方が良い

と使い分けるのが良さそうですね。

まとめ

本稿では「感情と記憶の間違いやすさ」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • ネガティブな感情では、視野が狭まり、個々の要素に目がいくので、記憶の正確さは上がり、間違った記憶も少なくなる
  • ポジティブな感情では、記憶の間違いは増えてしまうが、視野が広がるので、色々なものの共通点を見つけたり関連させる力が向上する
  • どちらもメリット・デメリットがあるので場面によって使い分けるのが大切

ということですね。

できれば避けたいネガティブな感情にも、場面によっては良い効果があるということです。例えば、プレゼンの発表内容を覚えなければいけないときには、プレゼンへの不安がネガティブな感情として意外と役に立っているのかもしれませんね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : With sadness comes accuracy; with happiness, false memory: mood and the false memory effect

Naoto

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