運動で腸内細菌も改善されるのか?の肥満体型を対象にした実験
メタボリックシンドロームは心血管疾患や2型糖尿病など様々な病気のリスクを上げてしまいます。メタボリックシンドロームは腸内細菌とも関連していて、肥満体型の人と健康的な体型の人の腸内細菌を比べてみると、腸内細菌のバランスや多様性に差があることが分かっています。
腸内細菌を整えることが健康に良いことは間違いなく、腸内細菌が乱れて悪い菌が増えてしまうと、リポ多糖という内毒素が多く発生してしまい、それが全身の慢性炎症を促進して、それも病気のリスクを高める原因になってしまいます
腸内細菌を整えるには、ヨーグルトや食物繊維を多く含んだ食品など、腸内細菌に良い食べ物を食べるのがオススメされます。しかし、他にも方法はあって、
- 運動も腸内細菌を整えてくれるのでは?
ということをトゥルク大学らの研究(*1)が調べてくれていました。本稿では、この研究を参考に、運動と腸内細菌の関係を見ていきましょう。
運動と腸内細菌
トゥルク大学らの研究では、26名の肥満体型の人を集めて、2週間にわたって週3回(合計で6回)の運動をしてもらっています。ここで運動には2種類のパターンが用意されていて、どちらかの運動が割り振られています。
- スプリントインターバルトレーニング
30秒の全力サイクリングと4分の休憩を4〜6回繰り返す運動 - 中強度の連続トレーニング
最大心拍数の60%くらいの中程度の負荷の運動を40分〜60分継続する運動
そして2週間の運動が終了した後に、腸内細菌の変化や体内の炎症の変化が測定されています。
結果①:運動で腸内細菌は変わるのか?
2週間の運動の後で、腸内細菌のどのような変化が現れたのかというと、
- どちらの運動でも、バクテロイデス門の細菌が増えて、フィルミクテス門とバクテロイデス門の細菌の比率が低下した
ということ。もともと肥満の人は、フィルミクテス門とバクテロイデス門の細菌の比率が高い傾向があることが分かっています。なので、運動によってこの比率が低下したということは、腸内細菌が健康体に近づいたということを意味しています。
それで、もう少し詳しく細菌の変化を見てみると、
- 全身の炎症と関連するClostridium属の細菌が減っていた
- 糖尿病予備軍で特に多いBlautia属の細菌が減っていた
という感じで、健康に良いバクテロイデス門が増えるだけでなく、腸内環境にあまり良くない細菌も減っていたということ。
なので結論としては
- 運動で肥満体型の人の腸内細菌は改善される
ということですね。
結果②:炎症は減るのか?
腸内細菌が乱れてしまうことは、体内の炎症を進めてしまうため健康に悪いということでした。そこでこの研究では、運動で腸内細菌が改善すると体内の炎症も改善されるのか?についても測定してくれています。
その結果は、
- 運動によりTNFα、CRP、LBPといった炎症に関連する物質が有意に減っていた
ということ。
つまり、運動によって体内の炎症まできちんと改善していたということですね。炎症は様々な病気のリスクを高めてしまうものなので、炎症が改善されるということは色々な病気の予防になっているということです。
まとめ
本稿では「運動で腸内細菌は改善するのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 肥満体型の人が運動すると、腸内細菌は改善された
(いくつかの悪い細菌が減り、健康な人に多い良い細菌は増えた) - 腸内細菌が改善されることで、体内の炎症も低減することができた
- 炎症を抑えることで様々な病気のリスクを軽減することができた
ということです。
腸内細菌には食生活も大切なので、腸に良い食べ物と運動を組み合わせれば、腸内環境はもっと良くなると思います。注意点として、今回の研究は小規模の実験であることと、肥満体型の人が対象であることは考慮が必要だと思います。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Exercise Training Modulates Gut Microbiota Profile and Improves Endotoxemia