幸せは追い求めるほど不幸になっちゃうは、どの国でも変わらないのか?
幸せのパラドックスと言って「幸せは追い求めるほど、逆に不幸になってしまう」ということがアメリカの心理学の研究で発見されています。もっと幸せにならなければいけないという執着心が、現状への満足感を低下させてしまっていると考えられるわけですね。
しかし、幸せには様々な形式があるため、国や文化が違うと追い求める幸せの形もだいぶ変わってきてます。そうなると、アメリカで発見されている幸せのパラドックスが、他の国では起こらない可能性もあるわけですね。
そして、この点に着眼したのがカリフォルニア大学らの研究(*1)で、
- アメリカ、ドイツ、ロシア、東アジア(日本・台湾)で幸せのパラドックスは起こるのか?
- 国によって差があるなら、追求してもよい幸せの形とはどんなものか?
を調べてくれています。この結果が面白かったので、本稿ではその中身を見ていきましょう。
幸せのパラドックスは国を超えるのか?
この研究では、次の4つの地域で幸せのパラドックスの測定を行っています。
- アメリカ(307人)
- ドイツ(91人)
- ロシア(184人)
- 東アジア(日本109人+台湾95人)
測定した項目としては
- 幸せをどれだけ追い求めているか?
- 今の幸福感はどのくらいか?
- 周りの人の幸せを考えているか?
となっています。面白いのが3つ目の項目で、アメリカのような個人主義の国では自分の幸せのみ追求しがちで、東アジアのような集団主義の国ではみんなの幸せを追求しやすいのでは?ということを測定しているんですね。
結果:幸せのパラドックス
それぞれの国で幸せのパラドックスが起きたのかの結果は、
- アメリカでは、幸せを追求する人ほど幸福感は低下してしまった(r=−.26)
- ドイツでは、幸せの追求は幸福感とは関係がなかった(r=−.11)
- ロシアでは、幸せを追求する人ほど幸福感が高かった(r=.31)
- 東アジアでは、幸せを追求する人ほど幸福感が高かった(r=.25)
ということ。
幸せのパラドックスが起きているのはアメリカのみで、私たちの住む日本では幸せを追求する人ほど幸福感が高いという結果になっています。この結果から分かるのは、幸せのパラドックスは国ごとに異なる何らかの文化的な要因を受けていているということですね。
結果2:なぜアメリカでは不幸になるのか?
アメリカで幸せを追求するほど不幸になってしまう原因として、周りの人の幸せが関係していることが今回の研究で分かっています。周りの人間関係や幸せは幸福にとって大切な要素の一つであることは既に分かっていて、今回の研究でも
- どの国でも、周りの人の幸せを考えている人ほど自分の幸福感も高かった
という結果が得られています。
そして、国ごとにどれだけ周りの人の幸せを考えているのかの結果を見てみると
- アメリカとドイツでは、自分の周りの人の幸せはあまり考慮せずに、自分の幸せを追っている傾向があった
- ロシアと東アジアでは、強く幸せを追求する人ほど、自分の周りの人の幸せも大切にしていた
ということ。個人主義と集団主義の文化的な違いが幸せの追求の仕方にも出ているということですね。アメリカでもちゃんと周りの人の幸せを考える人は幸福感が高いのですが、文化的にそのような人が少ない傾向があるので幸せのパラドックスが発生してしまっているわけです。
つまり、この研究の結論としては
- 自分だけの幸せは追い求めるほど不幸になるけど、周りの人も含めた幸せは追い求めるほど幸せになれる
ということですね。
まとめ
本稿では「幸せのパラドックスはどの国でも起こるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 個人主義の国では幸せのパラドックスが起こりやすく、集団主義の国では幸せのパラドックスは起こらない
- なので、人は自分だけの幸せを追い求めるほど不幸になるけど、周りの人も含めた幸せを追い求めるほど幸せになれる
ということですね。
家族や友人との良好な関係が幸福感につながったり、仕事の社会的な意義が働きがいにつながったり、ボランティアや他人にお金を使うことが自分の幸福感につながったりと、振り返ってみると他人のためが自分を幸福にしてくれる研究結果って多いですね。なので、自分だけ幸せを追い求めすぎて、かえって不幸になってしまわないように注意しましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Culture shapes whether the pursuit of happiness predicts higher or lower well-being