読書力を上げるのにメタ認知を活用するのが良いという研究

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学校で教科書を読み込んだり、大学で専門書を読み込んだり、大人になったらビジネス書を読み込んだりと、小学生から大人まで本を正しく理解する力は大切なものです。

そして、同じ本を読んでも人によって理解の深さやスピードが違うものですから、効率的に知識を伸ばしていきたいなら、本の理解力を向上させることも大切です。

本稿ではどうすれば本の理解力を向上できるのかに注目し、

  • メタ認知戦略で本の理解力が向上するのか?

について調べてくれたドクツェイリル大学の研究(*1)を見てみましょう。

メタ認知とは?

メタ認知とは”自分の行動や考え方を客観的に認知してコントロールすること”です。例えば、なぜ自分はこの勉強をする必要があるのか?とか、今の勉強方法で本当に良いのか?とかを自分自身で客観的に考えることで、自分を正しい方向にコントロールしていくということですね。

メタ認知は学習にとっては大切なもので、メタ認知が足りないと本来の目的とは違う方向に努力が向いてしまう可能性があります。例えば、毎月10冊本を読むことを目標にすると、その目標を達成するために読みやすい本を選ぶようになってしまって、本当の学習効果が得られないかもしれません。このときにメタ認知ができると、自分は本当に必要な知識を習得できているのか?を客観的に自分自身で問い正すことができて、正しい学習方法へ軌道修正することができるわけです。

メタ認知の学習には3つの観点があって

  • 知識の習得方法のメタ認知
    既存の知識と関連付けたり、分散学習で記憶への定着を高めたりなど、どんな知識の習得方法が自分にとって効果的なのかのメタ認知
  • 方向性のメタ認知
    目指すゴールはどこで、どのような計画でそれを達成するのかといった、知識習得のプランニングと成果のモニタリングのメタ認知
  • リソースのメタ認知
    時間をどのようにうまく確保するのかや、学習に集中できる環境を整えるにはどうすれば良いのか、自分はどんなときにサボってしまうのか、といったリソース面のメタ認知

これらを自分自身で客観的にモニターしてコントロールできるようになると、学習は正しい方向で効果的に行えるというわけです。

メタ認知を読書に応用する

ドクツェイリル大学の研究(*1)では、

  • メタ認知を読書に応用した場合に、本の理解力が向上するのか?

を実験により確かめてくれています。

この研究では130人の学生をメタ認知グループとコントロールグループに振り分けて、メタ認知読書の効果を測定しています。メタ認知グループでは週に45分のメタ認知読書の訓練を5週間にわたって受けてもらっています。メタ認知の読書のテクニックがどのようなものかというと

  • 強みを活かす
    例えば、図や表のデータを読み取るのが得意なら、本の中の図表に力を入れて読むなど
  • 意味を推測する
    わからない単語があった場合などに、その意味を自分で推測して読む
  • 既存の知識を活かす
    読んでいる本に関連して自分が既に持っている知識を活用して読み込む
  • 評価する
    読んでいる文章が自分の知識や理解を高めてくれるものなのかを評価する
  • ゴールとの関連付けをする
    自分がこの本を読んで得たい知識のゴールに対して、今読んでいる部分はどのように関連するのかを考える
  • 知識を区別する
    読み取った知識が既に知っている知識なのか、新しい知識なのかを区別しなら読む
  • 難易度を考える
    読んでいる本の難易度が自分にとってどのくらいのものなのかを考える
  • 知識を修正する
    新しい知識と既存の知識の関係を考えて、既存の知識を改訂していく
  • この後のトピックを予測する
    この後にはどんな展開になるのかを予測しながら読む

ざっくりとやっていることをまとめると

  • わからない点やその後の展開は読みながら予測する
  • 本当に必要な知識なのかを評価して取捨選択する
  • 既存の知識に新しい知識を関連付けて情報を整理する

といった感じですね。

結果:メタ認知読書の理解力

それで、5週間でメタ認知読書を学んでもらった後で

  • 語彙力
  • 文章の理解力

がどれだけ向上したのかを測定したのかの結果が次の表になっています。

語彙力文章の理解力
メタ認知読書+7.05 (34.17→41.22)+4.30 (117.41→121.71)
通常読書+2.60 (34.47→37.07)+2.54 (116.32→118.86)

この表から分かるのは

  • メタ認知の読書テクニックを学ぶことで、語彙力と文章の理解力がより大きく向上した

ということですね。

なので、本を読むときには、ただ本に書かれている情報を読み取るだけでなく、この本から何を学びたいのかや、本の情報はこれまでの知識とどのように関連するのかを考えながら読むと良いでしょう。

まとめ

本稿では「メタ認知読書の効果」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 本を読むときにメタ認知の視点を持つと、本の理解力が向上する
  • どのような視点を持つと良いのかというと、
    ・なぜこの本を読むのか?
    ・この本からどのような知識を得たいのか?
    ・新しい知識と既存の知識をどのように関連付けてまとめるのか?
    ・わからない単語や文章の意味するところは何か?

ということですね。

メタ認知で読むと時間がかかりそうですが、既存の知識とダブっていて効果の薄い部分をサッと流して読むのもメタ認知読書の一つのテクニックです。特に難しくて読み応えのある本は、既存の知識との関連付けや意味の推測をしながらじっくりと読み込んで理解力を上げていくと良いのではないでしょうか。


[参考文献]

*1 : HOW TO ENHANCE READING COMPREHENSION THROUGH METACOGNITIVE STRATEGIES

Naoto

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