チャリティーはお金の寄付より、時間の寄付を尋ねると良いという研究

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献血に参加したり、お金を寄付したりと、人のために何かをしてあげることは自分の幸福感も向上してくれます。しかし、現状では自分から寄付先を探す人はごく少数で、多くの人は頼まれた寄付に応じてあげているとのこと。

そのため大切になるのが寄付の頼み方で、頼み方次第で寄付の金額も変わってくる可能性があります。もちろん寄付者からできるだけ多くの金額を取ろうという訳ではなく、頼み方を工夫することで

  1. 寄付者が社会への貢献をより強く感じられて、より強い幸福感を得られる
  2. その結果として寄付額も向上し、慈善事業側もより多くの活動が推進できる

というWin-Winの関係を築くことが目的です。

この点について、カリフォルニア大学の研究では

  • お金の寄付を募るより、時間の寄付を募る方が、参加者は大きく寄付をしてくれるのでは?

ということを調べてくれていました。本稿ではこの研究を参考に、社会貢献を強く感じさせ、チャリティーへより意欲的に参加してもらう方法について学んでいきましょう。

お金の寄付と時間の寄付

カリフォルニア大学の研究では、お金を寄付してほしいと言われたときと、時間を割いて慈善活動に参加してほしいを言われたときでは、慈善活動の認識の仕方が変わると言っています。

これがなぜかというと、

  • お金は物と結びついている
    普段の生活に必要な食事からブランド品まで、人はお金を払って物を買っているので、お金はものと強く結びついている。そのため、お金の視点で物事を考えると、人は利益を最大化する思考になりやすく、寄付するときにも社会貢献を感じにくくなってしまう。
  • 時間は経験と結びついている
    人は時間を考えるときには、「その時間に何をするか?」と経験ベースで考える傾向がある。そのため事前活動のために時間を使ってほしいと言われると、具体的に自分が慈善活動をしている姿をイメージしやすく、社会貢献や幸福感を強く感じられる。

という感じで、お金の寄付と時間の寄付で、異なる思考回路が働くと考えられるんですね。

実験:時間の寄付を尋ねると、お金の寄付も向上する?

カリフォルニア大学の研究では、お金の寄付と時間の寄付の違いを実験のより確かめています。実験の参加者には寄付を募るのですが、このときに2つのパターンを用意していて

  • 「この事前活動に何時間くらいボランティアとして参加できるか?」を答えてもらった後で、お金の寄付金額を聞く
  • 「この事前活動にお金でいくら寄付できるか?」を答えてもらった後で、お金の寄付金額を聞く

最初の質問でお金の思考と時間の思考のどちらかを呼び起こして、その後でお金の寄付金額を聞いているわけですね。

結果:時間の寄付の効果

早速結果を見てみると

  • お金の寄付を質問した後よりも、時間の寄付を質問した後の方が、寄付金額は統計的に有意に高かった

ということ。お金の質問の後の寄付金額が平均6.65ドルに対して、時間の質問の後の寄付金額が平均11.50ドルと、時間の質問の方が大きな寄付金額になっています。

ちなみに、

  • 寄付できる時間が大きかった人ほど、お金の寄付金額も大きかった

ということも分かっています。つまり、ボランティアに参加できない罪悪感が寄付金額を高めていることはなく、逆に自分自身がボランティアに参加することを想像することで寄付金額を高まるということです。

結果2:なぜ時間の寄付は寄付金額を高めるのか?

続いて、なぜ時間の寄付が寄付金額を高めてくれているのかを分析した結果を見てみると、

  • 時間の寄付を尋ねられた人は、事前活動に寄付することが自分の幸せになると強く感じている傾向があった
  • お金の寄付を尋ねられた場合には、事前活動に寄付することが自分の幸せになるという感覚は高まらなかった
  • つまり、時間の寄付を尋ねると、寄付者はより自分事として社会貢献や幸福感を感じられるようになり、それが寄付金額を高めている

ということ。

まさに冒頭で述べた「寄付者は寄付により幸福を得て、慈善事業側は寄付金額が増えて活動を推進できる」というWin-Winの関係を強めることができるということですね。

まとめ

本稿では「時間の寄付とお金の寄付の効果の違い」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • お金は物と結び付いていて、利益最大化の思考になりやすいので、お金の寄付は社会貢献や幸福感を感じにくい
  • 時間は経験と結び付いていて、具体的な活動を想像しやすいので、時間の寄付は社会貢献や幸福感を感じやすい
  • 時間の寄付を事前に想像させるだけでも、その後の寄付金額が向上し、寄付者も社会貢献や幸福を強く感じられる

ということ。

慈善稼働を行うときは、寄付者が活動を具体的にイメージできるようにして、社会貢献や寄付することの幸せを感じやすくしてあげると良いでしょう。寄付する側の立場としても、自分がその活動に参加しているところを想像してみると、寄付によりより大きな幸せが得られるでしょう。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : The Happiness of Giving: The Time-Ask Effect

Naoto

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