昇進を続けると無能になってしまう?ピーターの法則は本当に存在するのかの研究

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ピーターの法則とは、人は出世を続けるといずれは限界点に達して無能になってしまうというもの。詳しい説明は後で書きますが、この法則に従うと、出世をするほど会社は無能な人で溢れてしまうというとんでも無い状況に陥ってしまうんですね。

そこで本稿では、

  • ピーターの法則は本当にあるのか?

について調べてくれた研究を見てみましょう。

ピーターの法則とは何か?

ピーターの法則とはローレンス・J・ピーターが提唱する社会学の法則で、

  1. 人は今のポジションで高いパフォーマンスを発揮すれば、次のポジションへ昇進していく
  2. しかし、いずれは能力の限界でそれ以上の出世ができなくなる
  3. 能力の限界に達したとき、その人はポジションで求められるパフォーマンスを満たせず、無能になってしまっている
  4. みんなが能力の限り出世を続けると、会社がポジションを満たす能力を持たない無能ばかりになってしまう

というもの。

例えば、プログラマーとしてものすごく優秀な人がいて、リーダーに出世したとしましょう。しかし、リーダーにはより多くの能力が求められるもので、プログラミングスキルだけでなく、マネジメント能力やリーダーシップが必要になります。そのため、プログラマーとして優秀とリーダーとして優秀は別の問題で、この人がリーダーに相応しい能力を持っていければ、出世によって無能なリーダーになってしまうわけです。

つまり、ピーターの法則とは、人は今のポジションで十分な能力を発揮できる限り出世をしていって、最終的には自分の能力に見合わない高いポジションで無能になってしまうということ。ピーター博士は、会社を支えているのはまだ出世の余地があって高いパフォーマンスを発揮している人だから、無理に出世せずに最大パフォーマンスが発揮できるポジションに留まった方が良いとも言っているんですね。

ピーターの法則は本当に存在するのか?

全米経済研究所の研究では、53,035人のセールスマンを対象にして、ピーターの法則が本当に起きるのかを分析しています。これらのセールスマンのうち1,531人がマネージャーに出世をしているので、セールスマン時代のパフォーマンスと、出世後のマネージャーとしてのパフォーマンスでどれだけ変化が起きるのかを測定したんですね。

ちなみに、出世後のマネージャーとしてのパフォーマンスは、自分の部下がどれだけパフォーマンスを発揮できているかで測定がされています。

結果1:出世前のパフォーマンスと出世後のパフォーマンス

早速結果を見てみると、

  • セールスのパフォーマンスが2倍高いと、出世する可能性は14.3%向上していた
  • しかし、出世前のセールスのパフォーマンスが2倍高いと、出世後に部下のパフォーマンスが7.5%低下してしまっていた

ということ。

なんと、セールスマンとして優秀なほどマネージャーに出世しやすいようですが、セールスマンとして優秀であるほどマネージャーとしては無能という結果になってしまっています。まさにピーターの法則が当てはまっているわけですね。

結果2:他人との協力とマネージャーの実力

さらに、この研究では、他人との協力も考慮した分析も行なっています。マネージャーは部下を含め多くの人と関わり合うポジションのため、人との協調性が大切になるわけです。この分析の結果としては、

  • セールスマン時代に他の人との協力が2倍多かった人は、マネージャーになると部下のパフォーマンスが12.3〜16.9%向上したいた

ということ。

つまり、セールスマン時代からマネージャーに相応しい能力を持っている人であれば、出世に部下のパフォーマンスを向上できるというわけです。

逆に他人との協力が少ない人の結果を見てみるとすごいことになっていて

  • 他人との協力がない一匹狼なセールスマンがマネージャーに出世すると、部下のパフォーマンスが35%も低下してしまった

ということ。いくらセールスマンとして優秀でも、一匹狼タイプではマネージャーとしては無能になってしまうわけですね。

結果3:ピーターの法則を防ぐにはどうすればいいのか?

それではピーターの法則を防ぐにはどうすればいいのかというと、研究者が言うには

会社は出世の判断をするときに、今のポジションのパフォーマンスでなく、出世後のポジションへの適性で判断をするべきだ。そうすることで部下のパフォーマンスは30%ほど改善されるだろう。

ということ。

会社によっては高いパフォーマンスのインセンティブとして出世を提示するところもあります。例えば、営業成績がトップ3に入ったら昇進のチャンスがもらえるとかですね。研究者の提言に照らし合わせると、この方法は今のポジションのパフォーマンスで昇進を判断する方法なので、会社に無能なリーダーが増やしてしまうでしょう。

なので、パフォーマンスに対して高いボーナスを払うのは良いですが、出世に関してはその人の能力とポジションの適正で判断するようにしましょう。

まとめ

本稿では「ピーターの法則は本当にあるのか?」についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • 高いパフォーマンスを発揮している人を出世させると、無能なマネージャーが増えて部下のパフォーマンスは30%低下してしまう
  • 出世の判断をするときは、今のパフォーマンスでなく、出世先のポジションへの適合性で判断をした方がよい

ということ。

自分のキャリアを考えていく上でも、自分の性格や能力に適さないポジションへの出世は控えるというのも良い手でしょう。もちろん、上のポジションでも、努力してスキルを埋め合わせる自信があれば、成長の機会になります。自分の今の能力と将来の成長やパフォーマンスを考えて、キャリアを考えることが大切ということですね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : PROMOTIONS AND THE PETER PRINCIPLE

Naoto

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