アクティブ・ラーニングで理系科目の成績はどれだけ上がるのか?

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現在の学校の授業では、多くの時間が教室で座って先生の話を聞くことに費やされます。しかし、生徒が授業の内容を自分なりに解釈して納得するためには、しっかりと自分自身で考える必要があります。

そこで、アクティブ・ラーニングという、アクティビティを取り入れた学習方法が効果的だと言われています。アクティビティとは、

  • 授業で学んだ内容の要点を書き出す
  • 生徒同士でディスカッションをする
  • 練習問題やケーススタディを解く

など、生徒自身がアウトプットを出す活動のこと。こうした活動を授業に多く取り入れることが学びを促進すると考えられているんですね。

そこで本稿では、

  • アクティブ・ラーニングで理系の勉強の成績は向上するのか?

を調べてくれて研究を見てみましょう。

アクティブ・ラーニングと成績

ワシントン大学らの研究では

  • S:サイエンス
  • T:テクノロジー
  • E:エンジニアリング
  • M:数学

に分類される科目でアクティブ・ラーニングがどれだけ効果が出るのかを分析しています。STEMは日本で言うところの理系科目のようなもので、具体的には生物、化学、物理、コンピュータサイエンス、工学、数学などの科目が該当します。

分析の手法としては、STEM教育でアクティブ・ラーニングを行ったときの成績を調べた研究225件を集めて、それらの研究結果をメタ分析でまとめています。これらの研究を総計すると、29,300人の生徒のデータになるということで、信頼度も高めと言えるでしょう。

結果1:アクティブ・ラーニングと単位を落とす生徒の割合

まず最初にアクティブ・ラーニングと通常の授業での単位を落とす生徒の割合の差を見てみると、

  • 通常の授業では33.8%の生徒が単位を落としていた
  • アクティブ・ラーニングにすると単位を落とす生徒は21.8%に減った

ということ。

なんとアクティブ・ラーニングと比べると、通常の授業では約1.5倍もの生徒が単位を落としてしまうという結果になっています。この差は結構大きいのでは無いでしょうか。

アクティブ・ラーニングになると授業についていくのが大変になりそうですが、アクティビティを通じて理解は深まります。結果としてみると、理解の向上により授業が分からなくてついていけない生徒が減るのかもしれませんね。

結果2:アクティブ・ラーニングと試験の点数

次にアクティブ・ラーニングでの試験の点数の結果を見てみると、

  • アクティブ・ラーニングで学んだ生徒は、通常の授業で学んだ生徒よりも、試験の平均点が6%高かった

ということ。

平均点が6%向上はあまりピンとこないかもしれませんが、成績がCの生徒がC+に、Bの生徒がB+になるくらいの成績の向上が、クラス全体に得られたくらいのイメージでしょうか。

結果3:効果が高いアクティブ・ラーニングの特徴

最後にアクティブ・ラーニングの効果が高かった研究の特徴を見てみると、

  • 生徒の人数が少ないほど、アクティブ・ラーニングの効果も高まった

ということ。分析では50人以下、50〜110人、110人以上の3つの分類で比べていて、50人以下では110人以上の2倍ほどの効果が得られています。人数が多くなりすぎると、生徒がアクティビティに取り組むのをうまく指導しきれなくなってしまうのかもしれませんね。

ちなみに、

  • アクティブ・ラーニングはSTEMのどんな科目でも同じように効果が得られていた
  • アクティブ・ラーニングは科目のレベルが入門でも応用でも効果が得られていた

という結果も得られています。なので理系の勉強をするならどんな授業でもアクティブ・ラーニングは有効でしょう。

まとめ

本稿では「STEM教育とアクティブ・ラーニング」についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • アクティブ・ラーニングでSTEM教育の成績は6%ほど向上し、単位を落とす生徒は30%ほど少なくなる
  • アクティブ・ラーニングはどんな科目でも効果があるが、生徒が少ないクラスほど効果が高かった

ということ。

アクティブ・ラーニングは成績を向上してくれるということで、先生はぜひ指導に取り入れましょう。生徒側も自分自身でアクティブ・ラーニングを取り入れるのも良いと思います。例えば、授業の要点を5分で書き出す、授業で気になったことを自分で調べてまとめる、練習問題を解いてみるなど、自分でアウトプットを出す活動を行えば理解を深められるでしょう。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Active learning increases student performance in science, engineering, and mathematics

Naoto

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