紙の本と電子書籍で理解力を上げてくれるのはどっち?のメタ分析

最近ではKindleなどの電子書籍がかなり普及していて、同じ本を紙の本と電子書籍のどちらでも読めることが多いですよね。私も読書が好きなのでスマホでKindleはよく使いますし、一方で紙の本も好きでよく買っています。
それでは紙の本と電子書籍のどちらがいいのだろう?と考えたとき、両方に色々とメリット・デメリットがあるので人それぞれ好みは変わると思います。私は小説などの物語系の本はあまり読まずに、ビジネスや学術書など情報取得のための本をよく読むので、”より深く理解できること”を大切にしています。
そこで、面白い研究(*1)があって、この研究では紙の文章とデジタルの文章で理解力に差があるのかを検証してくれています。論文のタイトルは”Don’t throw away your printed books”で、紙の本を捨てるなって言っていますね(笑)。
大規模のデータで見る 紙の本 vs 電子書籍
この研究は紙の文章のデジタルの文章の理解力の差を比較した54件の研究をまとめたメタ分析を行っています。これらの研究で行われた実験の総対象者数は17万1055人ということで、データの規模が大きくて十分に信頼できる結果が得られていると思います。
早速、その結果がどうだったのかというと
- 電子書籍は紙の本と比べて内容の理解度が少し下がった
(効果量d = -0.21)
ということで、理解力を上げたいなら紙の本が良いという結果が得られていますね。ちなみに効果量がd=−0.21というのは、比較的小さめの値となっていますが、元々読書の理解度は短期間で大きく変動するものではないことを考慮すると、そんなに効果が小さいとも言えないようです。例えば、小学校の生徒が1年で向上する読書の理解力の効果量が0.32なので、電子書籍は小学生の1年の理解力の成長の約2/3相当の理解力をマイナスしてしまうということなんですね。
理解力を下げてしまう要因の深掘り
さらにこの研究では、読む文章の特徴や読み方によっては紙の本と電子書籍の理解度の差が大きくなったり、逆に差がなくなったりしてしまうのではないかという深掘りもしています。
その結果が
- 電子書籍の理解度低下は情報系の文章だけで見られて、物語系の文章では紙の本でも電子書籍でも理解度は同じ
(物語系の文章の効果量d=−0.01)
(情報系の文章の効果量d=−0.27) - 時間制限があると電子書籍の理解度低下が大きくなり、自分のペースで好きなだけ時間をかけて読めるなら理解度低下は小さくなる
(時間制限ありの効果量d=−2.6)
(時間制限なしの効果量d=−0.9)
ということで、専門書のような情報系の文章を読むときや、速読のように短時間で読みたいときなんかは紙の方が理解度が上がるようですね。
ちなみに、この研究では統計的に有意とはいかないけど、他にも関係ありそうな要因がわかっていて、
- スマホのような携帯端末とパソコンを比べた場合は、パソコンの方が電子書籍の理解度低下が大きかった
(パソコンの効果量d=−0.23)
(携帯端末の効果量d=−0.12) - 1ページに文章が収まってスクロールが必要ない場合は、電子書籍の理解度低下は小さかった
(スクロース必要有りの効果量d=−0.25)
(スクロール必要無しの効果量d=−0.13)
ということ。本のような長い文章になると電子書籍では理解度が低下してしまう可能性があるみたいですね。私は普段はスマホで電子書籍を読むので、スマホで理解度の低下が小さくなるのは嬉しいですね。
まとめ
本稿では紙の本と電子書籍のどちらが理解力をあげるのに有効かの研究を紹介しました。
ポイントをまとめると
- 電子書籍よりも紙の本の方が理解力は高くなる
- 特に情報系の文章や時間制限がある場合にこの効果は大きくなる
ということです。
ちなみになぜ電子書籍だと理解度が下がってしまう原因については、スマホなどのデジタルの文章では内容をあまり深く理解しようとせずに、スラスラと浅く読んでしまうからではないかを考えられています。
電子書籍は持ち運びに便利だったり、安かったりと何かと便利なので、電子書籍の方がいいという人もいると思います。私も洋書を読むときには、電子書籍の文章中の英単語を押すだけで意味が出てくる機能にめちゃくちゃお世話になっているので、電子書籍を捨てることは出来なさそうです。電子書籍がいいけど理解力も落としたくないという人は、本の理解力を高めるテクニックを使えば内容をしっかりと深く理解して読むことができると思いますので、参考にしてみてください。
以上、それでは良い読書ライフを!