ベンチプレスの動作を速くすると筋力が高まりやすくなるという研究結果
本稿のテーマは「ベンチプレスの動作速度」についてです。
効果的に筋力をつけるためにはフォームや重量、セット数などのトレーニングの方法を最適なものにする必要があり、どのようなトレーニング方法が効果的なのかという問題については色々と研究がされているんですね。
そして、それらの研究の中の一つとして、「ベンチプレスの動作速度」に注目した面白い研究(*1)がありましたので、本稿ではその研究の内容を参考に効果的なベンチプレスの速度について説明していきたいと思います。
効果的なベンチプレスの動作速度とは?
この研究では合計20名の筋トレ経験者を集めて、2つのトレーニング方法をそれぞれ10名ずつ実践してもらってその効果を比較しています。
どのようなトレーニング方法を比較したのかというと、
①速い動作のベンチプレストレーニング
1RM(MAX重量)の85%の重量で、速い動作速度でトレーニングしてもらう。あらかじめ測定した最大速度から20%以上速度が低下したらそのセットは終了する。セット間のインターバルは2分間。
②好きな速度のベンチプレストレーニング
こちらも1RMの85%の重量だが、動作速度は自分の好きにして良い。1セットの回数は筋力が疲れるまで。セット間のインターバルはこちらも2分間。
という2つの方法です。
2つのトレーニングの結果
この2つのトレーニングを3週間にわたって実践してもらった結果、
セット数 | 1セットの回数 | 動作速度[m/s] | 1RM[kg] | |
高速トレ(開始時) | 7±0.04 | 2.33±0.52 | 0.38±0.02 | 99.7±3.08 |
高速トレ(終了時) | 9 | 3.17±0.75 | 0.39±0.03 | 109.8±4.06 |
通常トレ(開始時) | 7.98±0.04 | 7±0.42 | 0.14±0.02 | 97.5±1.90 |
通常トレ(終了時) | 9 | 8.33±1.03 | 0.15±0.01 | 97.7±2.14 |
ということで、この表から分かるのは
- 高速トレの人はトレーニングの動作速度は2倍以上速かった
- 高速トレだと1セットの回数は下がってしまう
(動作速度が遅くなったらセット終了なのでしょうがない) - 3週間のトレーニングで1RMが大きく伸びたのは高速トレだった
(高速トレ+10.2kg vs 通常+0.11kg)
ということなんですね。
通常トレは限界まで追い込むので1セットで7回前後となっていますが、高速トレは動作速度が落ちてきたら止めるので1セットで2〜3回程度となっています。高速トレでは動作速度が通常トレの2倍以上になっていますし、1RMの85%という高重量をこの速度を落とさずにできるのは3回程度が限界なんでしょうね。
そして、トレーニングの結果として面白いことがわかっていて、通常速度のトレーニングではほとんど筋力は伸びずに、高速トレの場合に10kgほども伸びています。つまり、筋力を伸ばすのには、毎セット限界まで追い込むのでなく、速く動作させることを意識して、速度が少しでも落ちたら休憩する方が効果的ということですね。
通常速度のトレーニングが有効なとき
それでは通常速度のトレーニングは必要ないのかというと、そういうわけではないと思います。なので、自分が考える通常速度のトレーニングが有効な場合をいくつか挙げてみたいと思います。
①初心者の場合
まず初心者の場合には、フォームがまだしっかりと習得できていないことと、筋肉自体がベンチプレスの動作に適応できていない可能性があるので、まずはゆっくりと丁寧に筋トレをすることをお勧めします。重量も比較的に軽めで1RMの50%以下から始めて徐々に上げていった方が良いと思います。
②筋肉の肥大が目的の場合
先の研究では筋力(最大重量)の伸びを比較していましたが、筋肉量の変化については比較がされていませんでした。一般的に筋力を高めるためには高い強度が重要で、筋肉量を増やしたいならトレーニングボリュームが大切と言われています。高速トレはトレーニングの強度を高くするもので、1セットの回数は落ちてしまっています。なので、筋肉量を増やしたい場合には通常の速度で高回数を行う方が有効だと考えられます。
③筋肉が刺激に慣れてしまったとき
筋トレの効果を高める方法としてピリオダイゼーションという方法があります。これは筋肉がトレーニングの刺激に慣れてしまわないように、重量や回数を変えて刺激を新しくする方法です。なので、高速トレで重量の伸びが悪くなってきたと感じたときには、一時的に通常速度に戻して刺激を変えてみるのも良いと思います。
以上、通常速度のトレーニングが有効の3つの場合でした。
筋力を伸ばしたいときは高速トレを優先しつつ、場合に応じて通常トレを取り入れる使い分けをすると良いと思います。
まとめ
本稿では「ベンチプレスの動作速度」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- ベンチプレスの最大重量を伸ばしたいときは、押し上げること速度を速くすることを意識して、速度が落ちたらそのセットは切り上げて休憩した方が良い
- 次の場合には通常速度のトレーニングをを取り入れるのもあり
①初心者の場合
②筋肉量を増やしたいとき
③筋肉への刺激を変えたいとき
ということですね。
私はどちらかというと丁寧にゆっくり動作させて限界まで追い込むタイプだったので、今回速い動作のトレーニングも試してみました。実践した感触としてはまず1セットが3回程度で短いので、ガッと集中してパワーは発揮できてる感じがします。そして、限界の回数まで追い込まないため1セットの疲労感も比較的少なく、休憩を挟みながらセット数を増やすことで最高パワーのトレーニングを何回も実施できている感じがしてなかなか良さげでした。あとはこれを続けたときに筋力がしっかり伸びてくれれば最高ですね。
以上、それでは良い筋トレライフを!
[参考文献]
*1: Effect of Different Pushing Speeds on Bench Press