幸福感で選択が変わる?幸福感と損失の感じ方の研究
人の選択には感情が大きくが大きく作用するもので、
リスクをとって大胆な選択をできるときもあれば、
損失が怖くて保守的な選択を優先するときもあよね。
そして、幸福感も選択の傾向に影響して、幸せだと感じているときと、不幸だと感じているときで、損失に対する感度が変わるというんですね。
そこで、本稿ではこの「幸福感と選択の傾向」について、一つの研究(*1)を参考にお話ししていきたいと思います。
幸福感が低下すると選択が変わる
これまでの研究により、幸福感が低下すると選択の傾向が変わるということが分かっていて、主に2つの変化があるということなんですね。
選択の変化1:損失に敏感になる
幸福感が低下してしまっている人は、心の痛みへの耐久力が低下してしまっているので、できるだけネガティブな経験を回避しようとするんですね。
この効果を検証した実験でも、意図的に気分を落ち込ませたときには痛みへの耐久力は低下して、逆に意図的に気分を高揚させたときには痛みへの耐久力が向上することが分かっています。
つまり、この現象は一時的は幸福感の低下でも起こるようで、例えば、友達と喧嘩したとか、仕事でヘマをしたとかで、気分が落ち込んだときには、それ以上ネガティブな経験は避けようする傾向が強くなるということです。
選択の変化2:リスクを取りやすくなる
幸福感が低下したときの選択の変化の2つ目が、よりリスクを取りやすくなるということです。
例えば、
- 確実に1万円もらえる
- 60%の確率で2万円もらえて、40%の確率で何ももらえない
のどちらかを選択する場合、前者の選択はリスクのない確実な選択で、後者はリスクがあるけどもらえる金額の期待値も高い選択になります。
このような選択において、幸福感が低い人の方がリスクの高い選択を取りやすいことが分かっているんですね。
2つの変化は矛盾している?
幸福感が低下すると
- 選択の変化1:損失を避けるようになる
- 選択の変化2:リスクを取りやすくなる
という2つの変化があるということでした。
しかし、リスクを取るということは、損失の可能性を高めることになるので、一つ目の損失を避けるようになる変化と矛盾しているように思えます。
この矛盾を解き明かそうとしてくれたのが(*1)の研究で、この研究では「損失の頻度が関係しているのでは?」ということを調べてくれています。
幸福感の低下と損失の頻度の回避
この研究では、120人の学生を集めて、幸福感を低下させた後でどのように選択の傾向が変わるのかを実験しています。
どのように実験したのかというと、まず120人の学生は次の2つのグループに分けられ、それぞれコールセンターの電話対応を聞いてもらいます。
- 幸福感低下グループ
悪質なお客さんからのクレームを聞かされるグループ - コントロールグループ
紳士なお客さんの丁寧な対応を聞かされるグループ
そして、その後に選択の傾向を調べるために
- 50通貨もらえるけど、50%の確率で50通貨を失うかもしれない
- 50通貨もらえるけど、10%の確率で250通貨を失うかもしれない
- 100通貨もらえるけど、50%の確率で250通貨失うかもしれない
- 100通貨もらえるけど、10%の確率で1250通貨失うかもしれない
というような選択肢の中から、どれか一つを選ぶというタスクを繰り返して行ってもらいます。
そうすると、50%の確率の損失を多く選択する人は、結果としては小さな損失が頻度多く発生するのに対して、10%の確率の損失を多く選択する人、頻度は少ないけど大きな損失が時々発生するということになります。
これによって、損失の選び方として頻度を取るのか、一回の大きさを取るのかの傾向がわかるということですね。
実験の結果
そして実験の結果を次のグラフでわかりやすくまとめてくれています。
このグラフは横軸が幸福感、縦軸が損失の頻度を取る確率、となっています。
そして、グラフが右上がりの直線になっていることから
- 幸福な人ほど小さな損失が多く発生することを選択する確率が高い
- 不幸な人は、損失が頻度高く発生することを避けて、一回の大きな損失で済ませようとする傾向がある
ということが分かります。
つまり、これが不幸な人が損失は嫌うのにリスクを取りやすくという矛盾の答えで
- 幸福感が低下すると、損失の大きさは気にせずに損失の頻度を避けるようになる
というのが原因ということなんですね。
なので、ネガティブな気分になっているときは、冷静な選択ができずに一発逆転を狙ったリスクの高い選択をしてしまう可能性があるので注意が必要ということですね。
まとめ
本稿では「幸福感と選択の傾向の変化」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 幸福感が低下すると、頻繁な損失を回避しようとする傾向がある!
- 幸福感が低下すると、損失の大きさを気にせずにリスクを取りやすくなる傾向がある!
- なので幸福感が低下してしまっているときには、冷静な判断が必要!
ということですね。
幸福感が低下したときに嫌うのは「損失の大きさ」ではなく「損失の頻度」というのがキーポイントでした。例えば、投資やギャンブルで負ければ負けるほど一発逆転を狙ってしまって、逆に損失が膨らんでしまうなんてことはあり得そうなので注意しましょう。
[参考文献]
*1: Unhappiness Intensifies the Avoidance of Frequent Losses While Happiness Overcomes It