お金よりも時間を優先する人の方が将来幸せになるという研究結果
毎日生活していると、お金が足りなくて悩むこともあれば、時間が足りなくて悩むこともあります。
もっとお金があればいいところ住めるのにとか、
もっと時間があれば資格の勉強ができるのにとか。
どちらも限られたリソースなので、仕方がないことですね。
それで時間とお金はトレードオフの関係にあって、時間でお金を買うこともできれば、お金で時間を買うこともできます。
例えば、残業を増やしたり、副業をすれば、時間を消費して追加のお金を稼ぐことができます。一方で、お金を使って時間を買うためには、家賃が高くても通勤時間が短く済む家に住んだり、家事の代行サービスを使ったりすることができます。
それで人によって、お金を優先するのか、時間を優先するのかの考え方は違っていて、実は人生の幸福感を高めてくれるのは時間を優先することだと研究(*1)により分かっているんですね。
時間とお金の優先度
これまでの研究でも、40ドルとかのお金をあげて、時間を買ってもらうか、物を買ってもらうかした場合には、時間を買った人の方が幸福感は高まることが分かっています。つまり、時間を買うことで幸福感が向上するという短期的な効果は確認されているんですね。
一方で、本稿で注目するのは2019年の研究(*1)で、この研究では時間を優先する思考が一年後の長期的な幸福感につながるかどうかを調査しています。卒業間近の大学生を1060人を集めて、時間とお金の優先度を測定した後で、1年後に幸福感がどう変わるのかを分析してくれているんですね。
結果1:時間は長期的な幸せにつながるか?
研究の結果として分かったことは、まず卒業間近の時点で
- お金よりも時間を優先する人は全体の61.7%
- 時間よりもお金を優先する人は全体の38.3%
だったということ。全体の2/3くらいは時間の方が大切と思っていたということで、あまりお金を持たない学生の間でも時間を大切に思う人の方が多いみたいですね。
そして、1年後に幸福感がどう変わったのかというと、
- 時間を優先する人の方が1年後の幸福感が高かった(t=4.19; P<0.001)
- これは卒業前の時点の幸福感をコントロールしても同じだった
ということ。つまり、卒業時点で幸福感が高かろうが低かろうが、時間を優先する人は一年後には、お金を優先する人よりも幸せになる傾向があったということです。まさに時間を優先することが長期的に見ても幸せにつながるという相関関係が確認されたわけですね。
結果2:なぜ時間は幸せにしてくれるのか?
それでこの研究では、なぜ時間を買うことが幸福につながるのかということも少し深掘りして調べていて
- 時間を買う人の方が、内発的に好きだと思う活動が多く行っていた
- 幸福感の向上の一部は、この内発的な活動が増えたことだった
ということ。
当たり前ですが、時間が増えれば、それだけ自由に時間が使えるようになるので、余暇の活動が増えて、それが幸福感を向上させてくれるわけですね。大切なのは内発的に好きな活動を増やすことで、テレビを見てダラダラ過ごすとかで時間を無駄遣いしてしまうと幸福感は向上しない可能性があります。
ちなみに他の研究では
- 裕福な人ほど、余暇の時間を楽しくない活動に使ってしまっている
- 収入が高い人ほど時間が欠乏している感覚も高くなってしまう
ということが分かっています。お金を優先する人は仕事のことが頭から離れなくなったり、仕事の疲れで休暇も活動的になれなかったりするのかもしれません。なので、本当に自分の好きな活動をするには、ある程度の時間的なゆとりが必要なのかもしれませんね。
そして時間が増えることで幸福感が高まる関係は、内発的な活動の効果を除いても一部残るということで、この部分が何かについてはこの研究では分かっていません。時間を優先する人は、時間のプレッシャーのストレスが軽減するみたいな研究もあるので、そういった要因が効いているのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「お金よりも時間を優先することの長期的な効果」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- お金よりも時間を優先する人は、長期的にも幸福感が高くなる傾向がある
- 余暇の時間で、自分の好きな活動を増やすことが、幸福感の向上につながっている
ということです。
「時は金なり」という言葉がありますが、時間がくれる幸福はお金がくれる幸福よりも大きいということで、幸福感に関して言えば「時は金よりも大切」と言えますね。
時間のゆとりがないと、どうしても仕事や今の生活に縛られてしまうと思うので、お金で時間を買うことで、色々なことに挑戦できれば良いのではないでしょうか。特に自分の生活を振り返ってみて、毎日同じような生活になってしまって退屈な人は、新しい時間を買ってみると良いと思います。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]