前向きなユーモアを持っている人ほどメンタルが強いという研究

メンタルがタフな人は、困難な状況や高いストレスの中でも、高いパフォーマンスを発揮することができます。世界で戦うスポーツ選手や、逆境に負けずにバリバリ働くビジネスマンなど、メンタルが強い人はプレッシャーに負けずに忍耐強く行動して成功を掴み取ります。
こうしたメンタルの強さは誰もが憧れるものだと思いますが、実際に強いメンタルを手に入れるのはなかなか難しい問題です。
そこで、メンタルが強い人ってどんな特徴があるのか?の研究がされていて、その中の一つが「メンタルが強い人はユーモアのスタイルが前向きだ」という結果になっていて面白かったので、本稿で紹介したいと思います。
ユーモアのスタイル
ユーモアは人を笑わせるような愉快さのことですが、漫才を見て笑ったり、内輪ネタで笑ったり、他人を馬鹿にして笑ったり、自虐ネタで笑ったりと、ユーモアにも様々な種類があります。
それで、心理学の研究ではユーモアの4つのスタイルに分類していて
①親和的なユーモア
仲間のみんなを笑わせるようなユーモアのスタイル。生活の中でこんな面白いことがあったよ〜みたいな仲間といるときにする笑い話がこのユーモアに当たります。
②自分向上のユーモア
自分をポジティブに保つためのユーモアのスタイル。自分の失敗や困難な状況の中でも面白いことを見つけて前を向くタイプのユーモアです。
③攻撃的なユーモア
誰かを攻撃するユーモアのスタイル。誰かの嫌味を言ったり、悪口で盛り上がったりといったタイプのネガティブなユーモアです。
④自滅的なユーモア
自分を犠牲にして他人の笑いをとるユーモアのスタイル。かわいそうな自分を笑いにする自虐ネタのタイプのユーモア。
と、2つのポジティブなユーモアのスタイル(①,②)と、2つのネガティブなユーモアのスタイル(③,④)に分類がされています。
ユーモアのスタイルとメンタルタフネス
それで、ウェスタンオンタリオ大学の研究(*1)が「ユーモアのスタイルがポジティブな人ほどメンタルが強いのでは?」ということを分析してくれています。
この研究では、201組の双子を対象にして、4つのユーモアのスタイルと様々なメンタルの強さの要素の相関を調べてくれています。双子を研究対象としたのは、遺伝的な要因が与える影響と、遺伝以外の環境的な要因が与える影響を切り分けるためです。
分析の結果が次の表になっています。
①親和的 | ②自分向上 | ③攻撃的 | ④自滅的 | |
コミットメント | .18 | .25 | −.11 | −.08 |
コントロール | .14 | .33 | −.13 | −.14 |
感情のコントロール | .33 | .41 | −.01 | −.18 |
人生のコントロール | .01 | .25 | −.11 | −.08 |
自信 | .24 | .31 | −.11 | −.16 |
能力への自信 | .23 | .40 | −.10 | −.19 |
対人関係の自信 | .38 | .29 | .12 | −.10 |
挑戦 | .20 | .36 | −.05 | −.07 |
全体的なメンタルタフネス | .26 | .40 | −.08 | −.15 |
この結果から分かるのは
- 親和的なユーモアと自分向上のユーモアの2つが高い人は、メンタルの強さのほとんど全ての要素が高い傾向がある
- 逆に攻撃的ユーモアと自滅的ユーモアが高い人は、メンタルの強さの様々な要素が低い傾向がある
ということ。つまりユーモアがポジティブな人はメンタルが強くて、ユーモアがネガティブな人はメンタルが弱い傾向があるということですね。
参考
ちなみに、ネガティブなユーモアのスタイルの中で、攻撃的なユーモアと対人関係の自信の相関のみはプラスになっています。これは、他人を笑い者にする人は、自分への自信が強い傾向があるせいだと考えらて、この傾向は他の研究でも確認されているようです。いくらプラスの相関とは言え、他人を下げて自信を得るのは健全なことではないので、やめておいた方が良いでしょう。
また、全体的に数値の大きさを比較すると、
- ポジティブなユーモアの正の相関の値と比べて、ネガティブなユーモアの負の相関の値は小さめになっている
ということが分かります。つまり、ネガティブなユーモアのマイナス効果よりも、ポジティブなユーモアのプラスの効果の方がメンタルの強さへの影響は強いということですね。
遺伝的な要因と環境的な要因
この研究では遺伝的な要因と環境的な要因の2つの影響の切り分けもしてくれています。遺伝的な要因は生まれつきで決まるもので変えられないので、環境的な要因に注目してみましょう。
そうすると、環境的な要因としてポジティブなユーモアのスタイルと優位な相関があったメンタルの要素は
- コミットメント
- 感情のコントロール
- 能力への自信
- 対人関係の自信
- 挑戦
- 全体的なメンタルタフネス
ということです。
つまり、ポジティブなユーモアのスタイルを意図的に増やすことができれば、後からでもこれらのメンタルの要素は向上することができるかもしれないということですね。
まとめ
本稿では「ユーモアのスタイルとメンタルの強さ」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- メンタルが強い人ほど、ユーモアのスタイルが前向きである
(親和的なユーモアや自己向上のユーモア) - メンタルが弱い人ほど、ユーモアのスタイルがネガティブである
(攻撃的ユーモアや自滅的ユーモア) - ポジティブなユーモアを鍛えることで、メンタルが強くなる可能性がある
ということですね。
困難な状況ほど笑いが大切ということですが、必要なのは前向きな笑いで、悪口や自虐などのネガティブな笑いは逆効果ということです。なので、困難な状況のときほど、その中に面白さを探してみると良いでしょう。ユーモアを鍛える方法については以前の記事にまとめていますので、参考にしてみてください。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Laughter and resiliency: a behavioral genetic study of humor styles and mental toughness.