失業の良い効果。失業が仕事のマッチングを向上してくれる?
失業と聞くとどうしても悪いイメージがあります。ニュースでも景気が悪いときには、失業率が悪化しているとよく報道されるので、失業ってなんかすごい悪いことのように思えてしまいます。
しかし、失業保険の効果について調べてくれたノッティンガム大学の研究(*1)によると、失業にも良い面があるようで、
- 失業した人がより良い仕事を探すことで、人と仕事のマッチングの質が上がるのでは?
ということ言っていて面白かったです。
そこで本稿ではこの研究を参考に、自分にあった仕事を見つけるための探すための方法についてお話ししてきたいと思います。
失業手当と再就職のトレードオフ
この研究は失業手当の期間や金額が仕事選びに与える影響について調べています。失業手当が充実していると失業期間中もある程度の収入ができるので安心感がありますよね。しかし、失業手当に安心するほど次の仕事探しのモチベーションが上がらないというネガティブな効果も発生してしまう可能性があります。
実際に、失業後に時間とともに再就職する人の多さがどのように変化するのかのグラフが次のようになっています。
濃い線が失業手当を貰わない人、薄い線が失業手当をもらっている人で、失業手当をもらっていない人は失業から3ヶ月後に再就職率がピークになっているのに対して、失業手当をもらっている人はそのピークがなく再就職は1年後まで低いままになってしまっています。
しかし、再就職までに時間がかかることは悪いことだとは言い切れず、時間をかけて良い仕事を探している可能性もあるわけです。逆に失業手当がない場合には生活への焦りが生まれて、待遇の悪い仕事でも仕方なく引き受けてしまうということも考えられます。
そこでノッティンガム大学の研究では
- 失業手当があると、人は本当により良い仕事探しができるのか?
について調べてくれています。
失業手当と仕事探しの質
この研究ではヨーロッパの失業者のデータの分析と、失業手当の制度が変わった国でその前後でのどのような変化があったのかを分析していて、その結果として分かったことは
- 失業手当の期間が長いほど、再就職は遅れて、失業している期間は長くなってしまう
- 失業手当の期間が長いほど、次の仕事での賃金が少し向上する
- 失業手当の期間が長いほど、次の仕事の継続期間が少し長くなる
ということ。なので、失業手当により安心して仕事が選べる状況があると、次の仕事として自分に合った質の良い仕事を見つけやすくなるということですね。ただし、劇的に効果があるわけではなく、効果の程はあくまで少し向上するくらいのものだったということです。
ただし、この効果にも条件があって
- 失業手当の期間の終わりに差し掛かると、次の仕事の賃金や継続期間の向上効果は得られなかった
ということ。失業手当が終わってしまう焦りから、質の悪い仕事を引き受けてしまったということですね。なので、再就職先を探すときには時間的にも余裕を持って行ったほうが良いみたいです。
以上、この研究から分かった教訓をまとめると
- 失業は次の仕事で自分と仕事のマッチングの質を向上してくれる
- ただし、それには次の仕事を安心して探せる状態でないとダメ
ということですね。
転職と今回の研究を活かすには?
1回の就職で自分にあった仕事に着くのはなかなか難しいものだと思います。なので、自分にあったキャリアを探すには、色々な仕事を実際に体験してみないとわからないこともあるかもしれません。
そんなときに、安心して仕事が探せない状況で下手に転職を繰り返すと、負のスパイラルに陥って追い込まれてしまう可能性があるので注意が必要です。今回の研究を活かすなら、自分にあったキャリアを選ぶには余裕を持った状態で選択をすることが大切ということなので、
- 今の仕事を続けながら、副業として新しい仕事を体験してみる
- 今の仕事を続けながら、もっと良い次の仕事を探す
- すぐに転職する気がなくても、より良い仕事のオファーのアンテナを貼っておく
など安心しながら次のキャリアの形成を計画すると良いでしょう。
まとめ
本稿では「失業の良い効果」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 失業には次の仕事で自分と仕事のマッチングの質を向上してくれる良い効果がある
- ただし、この効果は金銭面や時間面で安心して次の仕事を選べないとダメ
- なので、自分にあった仕事探しは安心感を持ってじっくりとできる状況で行おう!
ということですね。
安心してじっくりと次の仕事を選ぶことが大切ということで、今の仕事が合わないと思う人は参考にしてみてください。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]