高齢者はなぜ若者の音楽が嫌いなのか?歳を取ると音の好みも変わるという研究
人それぞれ音楽の好みには違いがありますが、特に世代によって好きな音楽に大きなギャップがあると思います。例えば、高齢者の方は昔懐かし好きだった歌手を聴き続けることが多くて、なかなか新しい音楽が好きになれないことが多いですよね。
そこで、本稿ではこの問題に注目して
- 高齢者はなぜ若者の音楽が好きになれないのか?
について、いくつかの文献を参考にお話ししていきたいと思います。
高齢者と若者のギャップ
歳を取るほど若者向けの音楽を受け付けなくなってしまうのにはいくつかの理由が考えられるので、順番に説明していきたいと思います。
①音楽は聴き続けるほど好きになる
人はより多く接するものを好きになるという傾向があります。音楽で言えば、昔から何回も聴いている音楽ほど好きの度合いが強くなります。なので、歳を取るほど長く聴き続けている大好きな曲が増えるので、新しい曲が入り込むスペースが減ってしまいます。
また、若者は音楽を検索したり友達をシェアしたりすることで「新しい音楽に触れる機会が多い」のに対して、33歳を超えたあたりから新しい音楽を自分から探す頻度が減ってしまうということも分かっています。そのため、歳を取るほど昔から好きな曲を繰り返して聴くことが多くなります。
②音楽の多くは若者向けに作られている
流行りの音楽の多くは、そもそも若者に向けて作られていることが多いです。例えば、「若者が夢を追いかける歌」とか、「大人への反抗的な歌」とか、「若者同士の恋愛の歌」とかですね。特に若い時期は感情的にも敏感な時期なので、こういった音楽の歌詞に深く共感することも多いです。
一方で歳を取ると、若者向けの歌詞はあまり心に響きませんし、感情的にも落ち着いているので深く共感することもなくなるわけですね。そのため若者の歌を好きになることは少なく、昔から好きな曲を懐かしむことが増えます。
聴覚は歳を取ると変わる
そしてもう一つの理由として、聴覚は歳を取ると衰えるということがあります。歳を取ると音の可聴範囲が狭まってモスキート音が聞こえなくなるのは有名ですよね。
それで「年齢と音のハーモニー」について研究した実験で面白いことが分かっていたので、本稿ではその中身を少し覗いてみましょう。
音のハーモニーとは複数の音が重なり合った状態のことを言います。ある特定の周波数同士の音が合わさると協和音として綺麗なハーモニーになるのに対して、他の周波数同士では不協和音の美しくない音になってしまいます。
それでこの研究では、18〜81歳の様々な年齢の人に、88通りの音のハーモニーを聞いてもらって
- 脳が複合された音を分解する処理能力
- 聞いた音が綺麗か不快かの主観的評価
を測定しています。
結果
その結果として分かったのが、
- 高齢者ほど脳の中で複数の音を分離する精度が低下していた
- 若者はより協和音が好きで、高齢者になるほど不協和音を好きになる傾向があった
ということ。
音の分離の精度が落ちてしまうと、若者には違う音に聞こえていても、高齢者には似た音に聞こえるということがあり得るわけですね。なので、高齢者から見ると、若者の曲はどれも似たような音が多いと思われてしまう可能性もあるわけです。
さらに音の好みを歳を取ると変わるということなので、若者にとっては美しいハーモニーでも、高齢者からすると別に美しくないとかもあり得るわけですね。
ということで、年齢による聴覚能力の低下や音の好みの変化が、新しい曲を受け付けにくくして、自分が若い頃聞いた曲を聞き続けてしまうのにも少し影響しているのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「高齢者はなぜ若者の音楽を好きになれないのか?」についてお話ししました。
その理由をまとめると
- 人は長く聴き続けた音楽ほど好きになって、新しい音楽を受け入れるスペースがだんだん無くなっていくから
- 新しい音楽の多くはそもそも若者向けに作られていて、若者以外には共感しづらいから
- 若者と高齢者では聴覚能力や音の好みが変わっているから
ということですね。
私も働き始めて自由時間が少なくなったときから、新しい音楽を探すことが減ってしまったような気がします。最近ではSpotifyやYouTubeなど音楽の聴き方も変わっていて、関連動画から新しいお気に入りの曲を発見することもあるので、なかなか面白い時代だと思います。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]