自分を高く評価してしまうバイアスが特に強まってしまう場合とは?
人には自分のことを他の人よりも高く評価してしまう傾向があります。例えば、「あなたは他の人の平均よりも運転がうまいと思いますか」と聞かれると、90%の人が自分は平均以上だと答えるようです。人が自分を正しく評価できるなら50%付近になるはずなので、40%以上の人が自分を過剰に評価しているわけですね。
それで、この自己評価が高くなってしまうバイアスは多くの研究で確認されていますが、ワシントン大学の研究が言うにはこれまでの研究では「評価項目の重要性」の観点が抜けてしまっているとのこと。
どういうことかというと、あなたの仕事の能力は平均以上かと聞かれれば、仕事は重要なことなので平均以上だと答えたくなる人が多いでしょう。しかし、あなたは平均よりもスイカ割りがうまいですかと聞かれると、スイカ割りはあまり重要でないことなので、別に平均よりも高くなくてもいいかと考える人が多くなります。つまり、自分がどれだけその評価対象の重要に思っているかが自己評価のズレの大きさに影響する可能性があるわけですね。
重要性と自己評価のズレ
それでワシントン大学の研究では5つの実験で、評価項目の重要性と自己評価の高さの関係を調べてくれています。
実験1:重要性と自己評価のバイアス
一つ目の実験ではシンプルに10個の項目(正直さ、親切さ、責任感、知性、有能さ、安心感、真面目さ、好感、独創性、社交性)について、
- ①その項目をどれだけ重要に思うか?
- ②その項目の自己評価はどのくらいか?
- ③その項目の他の人の平均を評価するならどのくらいか?
を29人を対象に測定しています。
そして、各評価項目の重要性と自己評価の過剰性の関係を分析していて、その結果が次のグラフになっています。
左が重要度の高い評価項目の結果で、自分の評価と他者の評価のギャップが大きいことがわかります。一方で右の重要度が低い項目の結果では、自己評価が少し低下してギャップが縮んでいることわかります。つまりこの実験で分かったのは
- 自分が重要だと思う項目ほど、自己評価は過剰に高くなりがち
ということですね。
実験2: 他の人を特定の人にするとどうか?
一つ目の実験では自分と他の人の平均と比べていてのに対して、2つ目の実験では自分と特定の一人の人を比べるバージョンで、同じ実験を行っています。
その結果も実験1と同じで
- 平均でなく他の特定の人と比べる場合でも、自分が重要だと思う項目ほど、自己評価は過剰に高くなりがち
ということです。
実験3: 重要性を操作するとどうか?
そして、3つ目の実験でも同じように10個の項目の重要性と自己評価・他者評価を測定するのですが、その前に少し工夫がされていて、
- 高重要性グループ
半分の人にはこの10項目は人生において大切な要素だと説明する - 低重要性グループ
もう半分の人にはこの10項目はみんなに共通する一般的な要素だと説明する
とグループを分けて意図的に重要度を高く感じさせたり、低く感じさせたりしています。
そして結果が次のグラフです。
左の重要度を高められたグループで自己評価と他者評価のギャップは大きくなっていて、右の重要度を下げられてグループではギャップは縮んでいます。つまり
- 評価対象の項目が重要さの見方が少し変わるだけで、自己評価のバイアスの強さも変わってしまう(より重要だと思えば、より自己評価のバイアスも強くなる)
ということですね。
実験4: 基準を自分にするか、他人にするか
そして、4つ目の実験では「他人を基準に自分を評価した場合」と「自分を基準に他人を評価した場合」で自己評価の高さに違いが出るのかを確かめています。
その結果はざっとまとめると
- 他人を基準に自分を評価した場合の方が、自己評価は高くなりやすかった
ということ。
実験5: 自己評価が傷ついているときだとどうか?
そして最後の実験では、最初に頭を使うタスクに取り組んでもらい、「あなたの成績は下位23%でした」というフィードバックで自己評価を傷つけた後で、10項目の重要さと自己・他者評価の測定をしています。
そして、その結果がどうだったのかというと、
- 自己評価が傷ついている状態の方が、自己評価のギャップは大きくなった
ということ。
自己評価が傷ついたときには、少しでも自己評価を回復しようとして、自分の中で自分は有能だと感じたがる心理が働くみたいですね。これには注意が必要で、実際に能力がない人ほど、自分では自己評価が高く思いがちになってしまう可能性が考えられます。
まとめ
本稿では「自己評価バイアスと評価項目の重要性」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 人は自分が重要だと思うことほど、自己評価が高くなりがち
- 特に自己評価のバイアスが強まってしまうケースは次の3つ
①ちょっとした説明とかでこの項目は重要だと思わされたとき
②他人との比較で自己評価をしたとき
③自己評価が傷ついてしまっているとき
ということですね。
自分の弱点を正しく知ることができれば、より自分を成長させることができると思うので、これらのバイアスに注意して客観的に正しい自己評価をしていきたいですね。他人に自分の評価をフィードバックとしてもらうのもギャップを減らすのに有効だと思います。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Understanding the Better Than Average Effect: Motives (Still) Matter