自分好みの情報を探すバイアスが強い人ほど、フェイクニュースの判断も下手になるのか?
最近ではテレビやネット、SNSなどで情報が流れるようになり、それに伴いフェイクニュース(偽のニュース)という、あまり正確でない情報も多く流れるようになりました。
そして、人にはこれらの情報を自分の好みで偏って処理してしまう傾向があって、
- 自分が既に信じている情報と一致する情報はすんなりと受け入れる割に、自分の信じる情報と違う情報には批判的になりやすい
- 自分と一致する情報を好んで探しやすい
といったバイアスがあると言われています。なので、人は自分の信じる情報と方向性が一致するなら、それがフェイクニュースであっても信じてしまいやすいというわけですね。
そこで情報の正確さを分析する力が必要になるのですが、
- 情報の分析にも好みが作用するなら、自分の好みの情報を良い方向に分析してしまうのでは?
という可能性も考えられます。そうなると情報に触れれば触れるほど、自分の信じる方向に情報のバイアスがどんどん強くなっていってしますし、バイアスが強くなるほどフェイクニュースにも騙されやすくなってしまいます。
そこで、イェール大学の研究(*1)が
- 情報のバイアスが偏っている人ほど、フェイクニュースに騙されやすいのか?
について詳しく分析してくれていましたので、本稿ではその中身を見ていきましょう。
バイアスとフェイクニュース
この研究では合計で3,446人を対象にして、ニュースがリアルかフェイクかを見分けてもらう3つの実験をしています。
ニュースの内容は政策の好みに応じて3つに分類されていて、
- 民主主義者好みのニュース(リアル5件、フェイク5件)
- 共和主義者好みのニュース(リアル5件、フェイク5件)
- ニュートラルなニュース(リアル5件、フェイク5件)
となっています。民主主義を支持する人は民主主義好みのフェイクニュースに騙されやすく、共和主義を支持する人は共和主義好みのフェイクニュースに騙されやすいと考えたわけですね。
それで参加者は
- 各ニュースの確からしさはそれぞれどのくらいだと思うか?
- トランプとクリントンのどちらを支持しているか?
- 情報を自分好みに判断しやすい傾向がどのくらいか?
といったことを測定されています。
結果:
結果として、情報のバイアスとフェイクニュースの騙されやすさについては
- 自分好みニュースも自分好みでないニュースも、好みのバイアスの影響を受けずに、同じようにフェイクニュースが情報の正確性が低いと見破ることができていた
- そして、より分析的な人ほど正確にフェイクニュースの信憑性の低さを見破っていた
ということが分かっています。
なんと、自分の主義と同じニュースでも、その情報の確からしさをちゃんと判断しようとすれば、バイアスの影響を受けずにフェイクニュースを見破ることができたということです。
さらに、もう一つの実験で「ニュースのもっともらしさ」の影響も調べていて
- 分析的な人は、突拍子がなくて信じがたいニュースに懐疑的になって、現実的でもっともらしいニュースをより正確な情報だと感じていた
ということ。あることないこと書かれる週刊誌のようなフェイクニュースは、インパクトを求めているので突拍子のない情報が多いですが、分析的な人はきちんとそういった情報をフェイクニュースの疑いがあると判断できているわけですね。
この研究が意味するところ
以上の研究結果から、この研究が意味するところをまとめると、
- 人はニュースの信憑性を分析しようとすれば、情報の好みのバイアスの影響を受けずに、フェイクニュースの正確性を判断できる。
- なので、情報の正確性を判断しようとすることで、自分好みに分析してしまって情報のバイアスがもっと偏ってしまうような悪い効果はない。
- なぜ現代の多くの人がフェイクニュースに騙されるのかというと、そもそもニュースの信憑性を考えようとする分析的な思考が働いていないから
ということですね。
情報の確からしさを判断する思考のない人は、自分の好みの情報へとどんどんと傾いていって、極端な意見になってしまうわけです。これを防ぐには、食いつきたくなる情報があったときには、「その情報の正確性はどうか」をちゃんと考えることが大切ということですね。
まとめ
本稿では「フェイクニュースと情報のバイアス」についてお話ししました。
結論をざっくりとまとめれば
- フェイクニュースに騙されるのはその情報の信憑性を何も考えていないから
- 情報の信憑性を考えるようにすれば、ちゃんとフェイクニュースにも強くなる
ということですね。
まあ当たり前のことかもしれませんが、情報で溢れている今だからこそ大切なことですね。
[参考文献]