後方プランニングで計画の精度が上がるという研究
未来は不確実なもので正確な計画を立てることは難しいことです。これまでを振り返ってみても、立てた計画通りにピッタリと完了することは稀で、いくらか遅延してしまうことの方が多いのではないでしょうか?実はこれは誰にでもあることで、人は計画を立てるときには楽観的になってしまうバイアスがあって、計画はかなり理想的な計画になってしまう傾向があるんですね。
それで、ウィルフリッド・ローリエ大学らの研究(*1)が
- 後方プランニングという計画の立て方をすれば、バイアスを軽減してより正確な計画が立てられるのでは?
ということを調べてくれていましたので、本稿ではその中身を見ていきましょう。
前方プランニングと後方プランニング
後方プランニングとは「計画を後ろから逆引きで立てていく計画の立て方」になります。
普通の計画の立て方は前方プランニングといって、最初にこれやって、次にこれやってと、時間の流れに沿った形で前から計画を立てています。後方プランニングはこれの逆で、完成系はこうだから、そのためにこれが必要で、さらにそのためにはこの手順が必要でと、計画を後ろから逆引きで立てていくわけですね。
それで、なぜ後方プランニングで計画の精度が向上するのかというと
- ①前方プランニングは楽観的になりやすい
前方プランニングでは、スタート地点から最終的なゴールまでの計画を前から立てていくため、スタートからゴールまでを一直線に繋いだ理想的な計画になりがちです。そのため、障害や失敗が計画から漏れやすかったり、最終的なゴールを精査する前に計画を立て始めてしまっているので、必要な手順に漏れが発生してしまったりします。
- ②後方プランニングなら漏れが少ないはず
一方で、後方プランニングであれば、最初に達成するべきゴールを明確に決めるので、必要な手順に漏れが発生しにくくなります。さらに、後方プランニングで後ろ詰めで計画を立てると、この日までにこの手順まで終わらせなければ最終日に間に合わなくなるという締め切り感が強くなるので、心理的にも楽観的になりにくくなるはず
と考えられるわけですね。
後方プランニングは効果はあるのか?
ウィルフリッド・ローリエ大学らの研究(*1)では実際に後方プランニングが効果があるのかを4つの実験で確かめてくれています。
これらの実験では
- 恋人とのデートの計画立てのタスク(期限6時間)
- 12ページ以上の論文の執筆タスク(期限2週間)
- 実際に自分が抱えているタスク(期限2週間程度)
といったいくつかの種類のタスクを使って、
- 前方プランニングで計画を立ててもらった場合
- 後方プランニングで計画を立ててもらった場合
- 特に指示せずに自由に計画を立ててもらった場合
で計画がどのように変わるのかを測定しています。
結果
結果としてどのようなことが分かったのかというと、
- 自由に計画を立てた人は、前方プランニングとほぼ同じ結果だった
- 後方プランニングで計画を立てた人の方が、タスクは期限近くまでかかると考えていて、前方プランニングの人は、タスクは期限よりももっと早く終わると楽観的になっていた
- 後方プランニングの人は、障害を考慮する数が多くなっていて、計画のステップ数も他のプランニングよりも多くなっていた
- 後方プランニングの人は、自分が期限に近づいていっているという感覚よりも、期限が自分に近づいてきているという感覚が強かった
- 後方プランニングの人は、タスクを開始するのが遅くなっていた(計画を後ろ詰めで考えたので、開始時期も後ろに寄ってしまった)
- 実際にタスクを完了した実績と照らし合わせても、後方プランニングの方が計画のズレは小さかった
ということ。
ざっくりとまとめると、「後方プランニングで計画の精度は向上する。だけどタスクの開始まで後ろ倒ししないように注意は必要かも」という感じですね。なので、一度後方プランニングで後ろ詰めの計画を立ててから、それを開始時期を合わせる形でシフトすれば良いのではないでしょうか。
まとめ
本稿では「計画の精度をあげる後方プランニング」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 人は意識せずに計画を立てると前方プランニングになって、かなり楽観的な計画になってしまう
- 後方プランニングで最終ゴールから逆引きで計画を立てると、より詳細な計画が立てられて、計画の精度も向上する
- しかし、後方プランニングだと計画が後ろ詰めになって、タスクの開始時期も後ろにずれてしまうこともあるので、そこら辺はうまく調整しよう
ということです。
後方プランニングでは、最終ゴールを詳細にイメージして、それまでのステップを具体的に漏れなく計画できることが大切そうですね。そして、最終期日に対して、何日前までにはここまで終わっていないとダメという、具体的な計画に落とし込めれば良いでしょう。
[参考文献]
*1 : Backward planning: Effects of planning direction on predictions of task completion time