筋トレでパワー重視の種目にすることで本当にパワーは向上するのか?
多くの人にとって筋トレをする目的は
- 筋肉を増やして、かっこいい体が欲しい
- 筋力を増やして、もっと重い重量をあげられるようになりたい
の2つだと思います。しかし、スポーツのパフォーマンス向上のためのトレーニングでは、これら2つの目的に加えて
- パワーを増やして、瞬間的に発揮できる力を向上させたい
ということもあると思います。
ここでいうパワーとは「筋力×速度」のことです。例えば、高くジャンプするときには、足の筋力を瞬間的に発揮して飛び上がる必要があります。サッカーのボールを蹴る瞬間や、短距離のスプリントの瞬間など、スポーツでは筋力だけでなく、パワーが重要になる場面が多いんですね。
そこで、ニューファンドランドメモリアル大学の研究(*1)が
- 通常の筋トレとパワー重視の筋トレでどれだけパワーの向上効果が違うのか?
について調べてくれていましたので、本稿はその中身を見ていきましょう。
通常の筋トレ vs パワー重視の筋トレ
まず最初に通常の筋トレとパワー重視の筋トレがどのようなものかを説明します。
- 通常の筋トレ
一般的に行われている筋トレのこと。腕立て伏せや腹筋、ダンベルやマシンを使ったトレーニングなど、重量をかけて筋肉を動作させることで鍛えるトレーニング方法。
- パワー重視の筋トレ
通常の筋トレと違ってより瞬間的に筋力を爆発させることが必要な種目を中心にしたトレーニング。例えば、ジャンプや短距離の全力疾走、ボールを投げるなど。
という感じで、筋トレが筋力・筋肉量の向上をメインの目的にしているのに対して、パワー重視の筋トレではパワーをメインの目的にしているわけですね。
それでニューファンドランドメモリアル大学の研究(*1)では、この2つのパワーの向上効果を比較するためにメタ分析という手法で、過去の研究結果107件を総合して比較しています。この研究では子供の身体能力開発を目的にしていて、18歳までの子供を研究の対象にしています。
結果:パワー重視のトレーニングの効果
この研究ではパワーの向上効果として
- ジャンプ力の向上
- スプリントの速度の向上
の2つをメタ分析でまとめてくれて、その結果が次の表の通りになっています。
パワー重視の筋トレ | 通常の筋トレ | |
ジャンプ力の向上 | +0.69 | +0.53 |
スプリントの向上 | +0.38 | +0.48 |
この結果から分かるのは
- ジャンプ力は確かにパワー重視の筋トレの方が効果が高かった
- しかし、スプリント力は通常の筋トレの方が効果が高かった
と、どっちが良いのかがなんとも言えない結果となっています。
通常の筋トレはパワーが本来の目的でなく、筋力がメインの目的です。そのため、通常の筋トレの方が最大筋力を向上させる効果は強かったということもわかっています。パワー重視のトレーニングでは瞬間的に筋力を発揮するのが上手くなっても、筋力自体はあまり向上していなかったんですね。
なので、パワー重視のトレーニングだけではなかなか最大パワーは伸び辛くなってしまうようで、結論としては
- 通常の筋トレで最大筋力を鍛えることと、パワー重視の筋トレで筋力を瞬間的に使いこなすこと、この2つのトレーニングをバランスよく行うのが大切
ということみたいですね。
まとめ
本稿では「通常の筋トレとパワー重視の筋トレ」の効果の違いについてお話ししました。
ポイントをまとまると
- 通常の筋トレは筋力と筋肉量を増やすのに効果的
- パワー重視の筋トレは筋力を瞬間的に発揮させる力を向上させるのに効果的
- パワーを向上させるには、この両者をバランスよく行うのが良い
ということですね。
スポーツで使う特定のパワーを向上させたい場合は、まずはそれに必要な筋力を鍛えて、その次に実践的なパワー重視のトレーニングで筋力の瞬発力を鍛えるのが良さそうですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]