Grit(やり抜く力)が強い人ほど幸福感は高いのか?
Grit(やり抜く力)とはアンジェラ・リー・ダックワース教授が提唱している言葉で、
- Guts:ガッツ、根性があること
- Resilience:レジリエンス、逆境から立ち直ること
- Initiative:イニシアチブ、自ら行動を起こすこと
- Tenacity:テナシティ、粘り強く続けること
の頭文字をとったものです。Gritはやり抜く力の名前の通り、成功するのにとても大切な要素の一つで、学業での成功や、仕事での成功、スポーツでの成功など、様々な場面で活躍することがわかっているんですね。
それで、今回注目するのはGritと幸福感の関係で、ジョージ・メイソン大学の研究(*1)が
- Gritが高い人ほど幸福感も高いのか?
- Gritと幸福感の関係は世界のどこの地域でも同じなのか?
を調べてくれていましたので、本稿ではその中身を見ていきましょう。
Gritと幸福感
ジョージ・メイソン大学の研究では、世界109カ国の7617人分を対象にGritと幸福感の関係を調査しています。
人によって何に幸福を感じるかにはバラツキがありますし、それには国や地域の文化も大きく影響します。なので、当然Gritが幸福につながるかにも文化が影響することが想定できるので、この研究では世界中からデータを取得することで Gridの幸福感が世界で共通するものなのかを調べてくれています。
そして、この研究にはもう一つポイントがあって、それはGridを次の2つの要素に分解していることです。
- 忍耐強く努力する力
- 一つの目標を追い続ける力
冒頭でGritは4つの単語の頭文字をとったものと紹介したように、Gritの中にはいくつかの意味合いが混ざり合っているので、Gritを一つの指標にまとめてしまうとその特性をうまく分析しきれないことがあるんですね。
つまり、この研究では
- 「忍耐強く努力する力」と「一つの目標を追い続ける力」がそれぞれ幸福感とどのように関係するのか?
を世界規模で分析しているということです。
結果:忍耐強く努力する力と幸福感
最初にGritの一つ目の側面の忍耐強く努力する力の結果を見てみると
- 忍耐強く努力する力が高い人ほど、幸福感が高い傾向があった
- 忍耐強く努力する力が高い人ほど、自分の信じる幸福なライフスタイルを持っていた
- 忍耐強く努力する力が高い人ほど、逆境に強い性格をしていた
ということで、忍耐強く努力する力が幸福感につながっていることが分かります。
さらに、
- 忍耐強く努力する力と幸福感の関係は、世界中のどの地域でも同じだった
ということ、忍耐強く努力する力は世界共通で大切な要素だということですね。
忍耐強く努力する力がある人は、逆境を乗り越える強さを持っていたり、自分の目標に向かって努力する充実感、自分の人生の意味感などを感じやすかったりするので、それらが幸福感につながっているのでしょう
結果2:一つの目標を追い続ける力
続いて、Gritの2つ目の側面の一つの目標を追い続ける力の結果を見てみると
- 一つの目標を追い続ける力は幸福感や、自分の信じる幸福なライフスタイルを持っているか、逆境に強い性格をしているかとは、弱い関係しかない、または逆にネガティブな関係があった
ということ。
一つの目標を追い続ける力の側面は幸福感にはつながらないという意外な結果となっています。研究者が言うには、一つの目標に固執することは、逆を言えば新しいことに挑戦する機会を減らしてしまうので、必ずしも幸福につながるとは限らないんようなんですね。例えば、自分には向いていない目標なのに、とにかく続けることが大切だと思ってその目標に固執してしまうと幸福感は低下してしまうかもしれません。
なのでこの研究から分かることは、「幸福感を向上するためには、忍耐強く努力することはやっぱり大切、だけど一つの目標に固執する必要はなく、自分の好きなように新しい目標に切り替えても良い」ということですね。
まとめ
本稿では「Gritと幸福感の関係」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- Grit(やり抜く力)には「忍耐強く努力する力」と「一つの目標を追い続ける力」の2つの側面がある
- 幸福感につながるのは「忍耐強く努力する力」の方だけで、この関係は世界中で共通している
ということですね。
幸福感を向上させたいのであれば、新しいことにも挑戦していって、今やりたいことにとことん努力する姿勢が大切ということです。忍耐強く努力する力をどうすれば向上できるのか?という問題はあるものの、このポイントを理解しておくともう一踏ん張り努力をできそうですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]