不安や憂鬱にはメタ認知がかなり効くぞという研究
メタ認知とは、自分の思考や行動を客観的に認知することです。メタ認知能力が高い人は、ダイエット中にケーキを前にしたときでも「あっ、今自分は誘惑に負けそうになっている」と客観的に気づけたりするんですね。
そして、今回考えるのはメタ認知とネガティブ感情です。不安や憂鬱などのネガティブな感情に弱い人は、これらの感情を過剰に感じてしまっていたり、あるいは尾を引いて感情をなかなか切り離せなかったりしています。この問題の根本的な原因の一つは、物事をポジティブに見るか、ネガティブに見るかの認識の歪みがあります。ネガティブな感情に弱い人は、小さな失敗でも過剰に自分を責めてしまったり、他人から言われた些細な一言にとてもひどく傷付いたりと、物事を過剰にネガティブに認識しがちなんですね。
そこで、物事を過剰にネガティブに認識してしまう歪みを解消するのに役立つのが、メタ認知というわけです。メタ認知では客観的に自分の思考や行動を認識するので、過度にネガティブになっていることに気づければ、認識の歪みを自分で直すことができるんですね。
本稿では、
- メタ認知療法は不安や憂鬱などのメンタルの症状の改善にどれだけ効果があるのか?
をまとめてくれたコペンハーゲン大学の研究(*1)を参考に、メタ認知の大切さについて学んでいきましょう。
メタ認知はどれだけ効果があるのか?
この研究では、メタ認知療法の効果を調べた研究25件を集めて、メタ分析でまとめてくれています。ちなみに、これらの研究の総対象者数は1536人となっています。
集められた研究の特徴としては
- メタ認知療法グループとコントロールグループで効果を比較している
(コントロールグループは、何もしないグループまたは他の療法のグループ) - メタ認知療法は6回〜14回のセッションになっている(平均は9.5回)
- メタ認知療法の効果としては、不安、抑鬱、反芻思考などが測定されている
- メタ認知療法の直後の効果だけでなく、3ヶ月後〜2年後まで効果が持続するのかも確認しているものが多い
という感じです。
結果1:メタ認知療法の効果
早速メタ認知療法の効果を見てみると、
- 実験前と比べたときのメタ認知療法の効果量はg=1.72で大きな効果が確認された
- 療法終了後のフォローアップ調査でもg=1.57と大きく効果が持続していることがわかった
ということ。
効果量は0.8を超えると大きな効果と言えるのですが、この研究ではメタ認知療法直後で1.72、数ヶ月後のフォローアップでも1.57とかなり大きな効果があることが確認されています。メタ認知には良い効果があることは度々聞いていましたが、ここまで大きな効果量が出るのはすごいですね。
結果2:他の療法と比べるとどうか?
続いてコントロールグループの種類に応じた効果量の結果を見てみると、
- 何もしないグループと比べると、メタ認知療法の効果量はg=2.06であった
- 他の療法のグループと比べると、メタ認知療法の効果量はg=0.68で、メタ認知療法の方が効果が高かった(フォローアップでは効果量g=0.39)
ということ。
何もしないグループと比べるメタ認知療法に大きな効果があるのは当然ですが、認知行動療法などの他の療法と比べてもメタ認知療法は十分に優秀な療法であることが分かります。
不安や憂鬱などのネガティブな感情に振り回されやすいという人は、とりあえず、物事をネガティブに考えすぎてないのか?を客観的に見つめ直すようなメタ認知の視点を訓練してみると良いのではないでしょうか
まとめ
本稿では「メタ認知療法の効果」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- メタ認知には不安や憂鬱などのメンタル面をかなり大きく改善する効果がある。
- さらにその効果はメタ認知療法が終了した後でも長く持続する
- メタ認知療法の効果は他の療法と比べても優秀
ということ。
メタ認知療法の効果が長続きするので、一度メタ認知の視点や考え方を習得できれば、それ以降はずっとネガティブな感情に強くなると思います。メタ認知を鍛えるにはマインドフルネス瞑想なども活用するといいでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : The Efficacy of Metacognitive Therapy: A Systematic Review and Meta-Analysis