全般的なメタ認知能力は何歳くらいから身につくものなのか?
メタ認知能力とは、自分の状況や考え方などを客観的に理解する能力のことで、学校の勉強にも役立つ大切な能力の一つです。なぜメタ認知が学習にとって大切なのかというと、客観的に自分の失敗を理解することでそれを改善できたり、自分の実力や弱みを理解することでそれを補うような戦略的学習ができるようになるからなんですね。周りの人を見ても、受験や資格勉強が上手い人は、合格するまでの道のりを自分で戦略的に考えて計画しているものですよね。
このメタ認知能力と学習の関係については研究がされていて、
- 特定の領域のメタ認知能力は他の領域の学習にも役立つのか?
例えば、数学のメタ認知が上手い人は、国語の成績も向上するのか?ということ - 領域に依存しないメタ認知能力は何歳くらいから身につくものなのか?
小さい子供のうちはメタ認知能力は特定の領域にとどまってしまうことが分かっている。
ということが考えられています。
本稿ではこれらの問題について実験で確認してくれたゲント大学の研究(*1)を見ていきましょう。
メタ認知能力と年齢
ゲント大学の研究では8歳〜9歳の子供147人と7歳〜8歳の子供77人を対象に、メタ認知能力と学習成績の関係を調べています。どのように調べたのかというと、
- 算数のタスク
足し算と掛け算といった年齢に見合った算数の問題60題を解く - スペリングのタスク
穴抜けになった単語に正しい文字を入れてスペルを完成させる問題60題を解く(海外の研究なのでスペリングは日本で言う国語のようなもの)
の2つを行ってもらって、算数とスペリングの学習成績を測定しています。
そして、この研究で大切なのは同時に算数とスペリングのメタ認知能力も測定しているところです。どのように測定したのかというと、タスクの各問題で自分は正解したと思うか、不正解だと思うか、どちらかわからないかの3択を答えてもらっています。メタ認知能力が高い人は、自分の実力を客観的に理解できているので、正解/不正解をより正確に答えることができるわけですね。
そして、これらで得られたデータから
- 算数のメタ認知能力がスペリングの成績に影響するのか?
- 逆にスペリングのメタ認知能力が算数の成績に影響するのか?
- 年齢はどのように関係してくるのか?
といったことを分析してくれています。
結果:8歳〜9歳の子供の場合
最初に年齢が8歳〜9歳の子供の結果としては、まず当たり前のことですが、
- 算数のメタ認知能力が高いと、算数の成績が良かった
- スペリングのメタ認知能力が高いと、スペリングの成績が良かった
と言うことで、同じ領域内ではメタ認知能力が成績の向上につながることが確認されています。
次に、領域を跨いだ結果を見てみると、
- 算数のメタ認知能力が高いと、スペリングのメタ認知能力も高い傾向があった
- 算数のメタ認知能力が高いと、スペリングの成績も良かった
- スペリングのメタ認知能力が高いと、算数の成績も良かった
と言うこと。つまり特定の領域のメタ認知能力が、他の領域の成績まで向上しているということですね。これは、8歳〜9歳の子供は領域を超えた全般的なメタ認知能力が身についているというを意味しています。
結果:7歳〜8歳の子供の場合
同様に7歳〜8歳の子供の結果を見てみると
- 算数のメタ認知能力が高いと、算数の成績が良かった
- スペリングのメタ認知能力が高いと、スペリングの成績が良かった
と、同じ領域内ではメタ認知能力が成績の向上につながるという結果は得られています。
しかし、領域を跨いだ結果を見てみると
- 算数のメタ認知能力とスペリングのメタ認知の能力には何の相関もなかった
- 算数のメタ認知能力は、スペリングの成績に関係なかった
- スペリングのメタ認知能力は、算数の成績に関係なかった
という結果になっています。つまり、7歳〜8歳の子供は、特定の領域のメタ認知能力は身についていても、領域を跨いだ全般的なメタ認知能力は身についていないということ。これらの結果をまとめると、全般的なメタ認知能力が身につくのは8歳〜9歳あたりからということですね。
まとめ
本稿では「メタ認知能力と領域・年齢の関係」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- メタ認知能力は学習成績を向上させる大切な能力である
- 7歳以下の子供の場合には、メタ認知能力は特定の領域の範囲内にとどまる
- 8歳以上になると、一つの領域のメタ認知能力が他の領域の成績を向上させるようになり、全般的なメタ認知能力が身につき始める
ということですね。
メタ認知能力は子供だけでなく大人にとっても大切な能力です。メタ認知能力が領域を超えるということで、例えば受験で得たメタ認知学習が仕事でも役に立つことは大いにあると思います。なので、どんな領域でもいいので、メタ認知能力を高める訓練をしてみてはいかがでしょうか。
[参考文献]