小学生に自分で学ぶ力を教えるには、どんなトレーニングが効果的か?

学校の授業に出なくてはいけなかったり、学校の宿題をやらなければいけなかったり、勉強がすっかり受け身になって、やらされているものになってしまっていないでしょうか?
学校で教えてもらう知識も大切ですが、本当に大切なのことは自分で学習する力をつけること。
自分で学ぶ力が高い人ほど
- 学業成績が良い
- 学習へのモチベーションが高い
- 社会人になっても勉強を続ける習慣ができる
ということが研究で分かっているんですね。
それでは、どうすれば自分で学ぶ力がつけられるのか?
これには教育心理学を始めとする分野の研究が参考になって、
- 自分で学ぶ力を伸ばすトレーニング方法
が実際に色々と開発されています。
本稿では、これらの研究成果についてまとめてくれたフランクフルト大学の研究(*1)を見ていきましょう。この研究からは小学生から自分で学ぶ力を伸ばすための効果的な方法について学ぶことができます。
3つのトレーニング戦略
まず最初に、自分で学ぶ力を伸ばすトレーニング方法には、戦略として大きく3つの方針があります。
戦略①:認知的スキルを向上させる戦略
最初の戦略は、効果的に勉強するための認知テクニックを教えるもので、主に4つの方法があります。
- 反復テクニック
効果的に長期記憶に知識を記憶させるために、何度も繰り返して勉強する方法を教える - 精緻化テクニック
知識を深く記憶するために、すでに持っている知識と新しい知識を繋げるようにして記憶する方法を教える - 構造化テクニック
中心となる知識と、そこから派生する関連知識など、知識の構造を整理するようにして記憶する方法を教える - 問題解答テクニック
自分で手を動かして練習問題を解くことで理解度を上げる方法を教える
戦略②:メタ認知的スキルを向上させる戦略
メタ認知とは客観的に自分を認知すること。この戦略では、自分の実力や求められる学習レベルなどを客観的に分析して、学習の計画や学習効果をモニタすることをトレーニングする。
- 計画
学習の計画を立てる方法を教える - モニタリング
計画通りに進んでいるのかを自分でモニタする方法を教える - 評価
自分の実力が伸びているのか、勉強の計画を見直す必要がないかなどを客観的に評価する方法を教える
戦略③:モチベーションを向上させる戦略
最後の戦略は、勉強へのモチベーションを向上させるためのトレーニングです。
- 原因の解明と自己効力感
成功したときや失敗したときに、何が良くて何が悪かったのかを分析するトレーニング。自分でどんな学習方法が良かったのかを見出していくことで、学習に対する自信も高まる。 - アクション・コントロール
勉強で失敗したときに、悩むよりも今できることにフォーカスして、具体的な行動をとってみるトレーニング。 - フィードバック
先生に積極的にフィードバックをもらいに行こうというトレーニング。良いフィードバックがもらえればモチベーションが上がるし、客観的に自分の実力を把握したり、学習計画を見直したりするのにも役立つ。
どんな方法が効果が高かったのか?
フランクフルト大学の研究では、
- これらのトレーニング方法は小学生にも効果があるのか?
- どんなトレーニング方法が効果が高いのか?
について、48件の先行研究をメタ分析でまとめてくれています。
トレーニングの全般的な効果
まず全てのトレーニングを総合した全般的な効果を見てみると
- 自分で学習する戦略を実際に使うことが増えた(効果量d=.73)
- 学業成績が向上した(効果量d=.62)
- 勉強へのモチベーションも向上した (効果量d=.76)
ということ。
効果量はどれも高い値になっているので、自分で学習するトレーニングは小学生にも十分に効果ありと言えるでしょう。学習成績の向上が大きさは「数学>読み書き能力>その他」という順になっていて、数学のような頭を使う科目で特に有効みたいです。
どんなトレーニング良いのか?
次に効果的なトレーニング方法について分かったポイントを並べると、
- 戦術①〜③は、複数を組み合わせた方が効果が高い
- 戦術①:認知的スキルの向上では、精緻化テクニックと問題解答テクニックが効果が高かった。しかし、複数の記憶テクニック組み合わせると効果は低下してしまった
- 戦術②:メタ認知スキルの向上では、計画とモニタリングの組み合わせ、または計画と評価の組み合わせが効果が高かった。また、メタ認知のテクニックを教えるだけでなく、それらの利益も教えてあげることで効果が高まった
- 戦術③:モチベーションの向上では、特にフィードバックが効果が高かった
ということ。
どの戦術も伸ばしたいスキルの狙いが違うので、うまく組み合わせてあげると効果が高まるようですね。
まとめ
本稿では「自分で学習する力のトレーニング」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 自分で学習する力のトレーニングは、小学生でも学習成績やモチベーションを向上する確かな効果がある
- 特に次の3戦略を組み合わせて使うと効果が高い
①認知スキル(精緻化/問題解答)
②メタ認知スキル(計画/モニタリング/評価)
③モチベーション(フィードバック)
ということですね。
小学生からトレーニング効果ありということで、早いうちから自分で学習する力を伸ばしていければいいですね。例えば、宿題を計画的に終わらせるように計画スキルとトレーニングしたり、それができたらフィードバックをあげたりとか、色々と活用できそうですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]