ブレインストーミングのモチベーションを向上する目標設定とは?
最近の仕事ではイノベーションが求められるようになり、クリエイティビティやチームのコラボレーションが重視されるようになりました。その中で、ブレインストーミングが行われる機会も増えたと思います。ブレインストーミングとは、簡単に言えば、みんなで集まってオープンにアイデアを出しあう会議のことですね。
しかし、ブレインストーミングはちゃんと成果を出すのは難しいもので、ただ集まってアイデアを出すだけでは、個人でアイデアを出した結果に劣ってしまうことが分かっています。
本稿では、この問題を解決するために、
- ブレインストーミングではどのような目標設定をすればいいのか?
についてミュンヘン大学の研究を参考に学んでいきましょう。
なぜブレインストーミングで良いアイデアが出ないのか?
ブレインストーミングをするよりも、個人でアイデアを出した方がいい結果が出ることが心理学の研究でわかっています。これにはチームで集まることの負の効果が働いていて
- 周りの目を機にする問題
「変な意見を言うと周りから変な風に思われてしまうのではないか?」という心の壁がアイデアを制限してしまう。 - 考える時間が減ってしまう問題
他人の意見を聞いている分だけ自分で考える時間が減ってしまうので、チームで集まるよりも個人で考えた方が全体の思考時間が増える - 社会的手抜き問題
チームになると個人の責任や成果が曖昧になるので、無意識のうちに他人任せになってパフォーマンスが低下してしまう - フリーライダー問題
意図的に自分はできるだけ楽をして、チームメンバーにやらせようとする人が出てきてしまう - モチベーション吸い取られ問題
一人でもチームにサボっている人がいると、それを目にした他の人のモチベーションが低下してしまう
といった問題が発生してしまうんですね。
これに対する攻略法もいくつかあって
- ファシリテータ役を用意して、どんな意見でも言い出しやすい雰囲気を作る
⇨周りの目を気にする問題を軽減できる - 個人でアイデアを考えてから共有する
⇨考える時間が減ってしまう問題を軽減できる
が有効だとされています。
ミュンヘン大学の研究では新しい攻略法として、
- 後半3つのサボる人が出てくる系の問題に対して、目標設定が活用できるのは?
と言うことを実験してくれています。目標設定はチームのモチベーションを高めるので、自分が足を引っ張りたくないと言う気持ちや、チームで協力しようという気持ちを高めてくれると考えられるわけです。
実験:目標設定とブレインストーミングのアイデア数
ミュンヘン大学の研究では、4人構成のチームを30組作って、「日常品(例えば傘など)の新しい使い方のアイデア」を3分間考えるブレインストーミングを行なっています。
このときに、目標の効果を測定するために、目標設定の方法で4つのグループに分けられていて、
- 目標無しグループ
具体的な目標はなく、ただベストを尽くすことように言われるグループ - 指示的な目標グループ
決められた目標が与えられるグループ - 自主的な目標グループ
チームで話し合って目標のアイデア数を決めるグループ - 自主的目標+個人目標グループ
チームで話し合って目標を決めた後で、各個人ごとの目標も決めるグループ
となっています。目標の難易度は事前に計った実力の40%アップを目指すチャレンジングな設定するように促されています。
結果:目標とアイデア数
ブレインストーミングの結果を見てみると
目標無し | 指示的目標 | 自主的目標 | 自主的+個人目標 | |
目標のアイデア数 | – | 38.3 | 37.6 | 34.2 |
実際にアイデア数 | 32.8 | 40.0 | 40.1 | 36.5 |
となっています。この結果からわかるのは
- どのタイプの目標でも、ブレインストーミングの成果を向上してくれる
と言うこと。個人目標も追加したグループは他の目標有りのグループと比べて、目標数も実際の成果も少し低くなっています。個人単位の成果で考えると、より現実的になって、目標の難易度が低下してしまうのかもしれませんね。
さらに、目標設定の心理的な変化を見てみると
- どのタイプの目標でも、チームの成功・失敗が個人としても大切だという気持ちが高まり、責任感や役割の曖昧さからくるモチベーションの低下を防げた
- 個人目標まで設定すると、他の人がサボるのではないかという不安が軽減できた
- 指示的な目標では、チームメンバーで弱みを補い合っていこうという気持ちと、内発的なモチベーションが高まった
ということ。
まとめると、チャレンジングな目標設定は、手抜きする人が出てくることによるモチベーションの低下を防いで、ブレインストーミングのパフォーマンスを確かに上げてくれるということが分かったわけですね。
まとめ
本稿では「ブレインストーミングと目標設定」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- ブレインストーミングでは、具体的でチャレンジングな目標設定をすることで、責任感の低下やサボりによるモチベーションの低下を防げる
- 個人目標まで設定すると、サボる人が出てくる不安が一層軽減されるが、目標の難易度が少し簡単になってしまう。
- 指示的な目標でチームの協調性や内発的なモチベーションを高めることができる。
ということですね。
ブレインストーミングに限らずに、チームで働くときは目標設定がないと、各個人の役割や責任が曖昧になってモチベーションが低下してしまうのかもしれませんので注意してきましょう。
[参考文献]