学習へのモチベーションの持ち方で、高い難易度に挑む姿勢が変わるという研究
勉強をするモチベーションの源泉には、知らないことを知りたいや、良い成績を取りたいなど、いくつかのタイプがあります。人によってこの勉強のモチベーションの持ち方は変わり、それによって勉強の仕方や勉強への姿勢も変わってきます。そして最終的にはそれらの勉強への姿勢の違いが、学習成果の差となって現れます。
本稿ではこの勉強のモチベーションのタイプと勉強の姿勢の関係の一つとして、
- 勉強に「望ましい困難」を積極的に取り入れるのは、どのようなモチベーションを持っている人か?
を調べてくれたカッセル大学の研究を見てみましょう。「望ましい困難」とは、優しい勉強するだけでなく、積極的に困難な学習を取り入れることで、学習成果の向上にとって必要なことでもあるんですね。
勉強のモチベーションのタイプ
心理学の研究ではモチベーションを分類する方法がいくつか考えられているのですが、カッセル大学の研究ではその中から4つのモチベーションのタイプを取り上げています。
- ①マスタリーモチベーション
自分の知識を深めたいとか、新しいスキルを身につけたいなど、自分の能力の向上を目的に勉強するモチベーション
- ②パフォーマンスモチベーション
テストで良い点を取りたい、他の人よりも良い成績をとって認められたいなど、成果を見せつけることを目的に勉強をするモチベーション
- ③回避モチベーション
赤点は取りたくない、他人から馬鹿にされるような成績は取りたくないなど、ネガティブな結果を回避したいというモチベーション
- ④負荷低減モチベーション
できるだけ最低限の勉強で済ませたいと考えるタイプのモチベーション
そして、カッセル大学の研究では97人を対象に、上記の4つのモチベーションと勉強にどれだけ望ましい困難を取り入れているかを測定しています。これらのデータから、どのタイプのモチベーションを強く持つ人が、望ましい困難を積極的に取り入れているのかがわかるわけですね。
結果:望ましい困難が高いのは?
研究の結果を見てみると、
- マスタリーモチベーションが高い人は、望ましい困難を積極的に取り入れている傾向があった(.26)
- パフォーマンスモチベーションが高い人は、望ましい困難が多くも少なくもなかった (.01)
- 回避モチベーションが高い人は、望ましい困難を避ける傾向があった (−.18)
- 負荷低減モチベーションが高い人は、望ましい困難を避ける傾向があった (−.27)
ということ。
望ましい困難にとってプラスになっていたのはマスタリーモチベーションのみとなっています。勉強の目的をテストの点数や成績にする人は、そのテストに必要なことは頑張っても、それ以上の困難で深い学習まではしない傾向があるのかもしれませんね。なので、積極的に困難な学習に挑戦して学習成果を上げるためにも、自分の能力の向上をモチベーションに考えてみると良いでしょう。
結果2:インターリービング学習
この研究では、望ましい困難に加えて、インターリービング学習をどれだけ取り入れているのかも測定しています。インターリービング学習とは、数学や英語、物理などの複数の勉強を細かく分散して切り替えながら学習する方法です。例えば、1日に数学、英語、物理をそれぞれ1時間ずつ勉強するとかですね。インターリービング学習は、一つの内容を集中的に勉強するブロック学習よりも、長期的な学習内容の定着率がいいことが分かっている方法でもあります。
それで研究結果を見てみると、
- マスタリーモチベーションが高い人のみが、インターリービング学習を積極的に取り入れていた
- 回避モチベーションと負荷低減モチベーションでは、インターリービング学習は避ける傾向があった
ということ。
望ましい困難と全く同じで、インターリービング学習が多かったのもマスタリーモチベーションのみとなっています。なので、マスターモチベーションが高い人は、望ましい困難とインターリービング学習という学習効率を上げる2つの方法を自然とできているわけですね。
まとめ
本稿では「勉強のモチベーションタイプと望ましい困難」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 純粋に自分の知識やスキルの向上を目的にするマスタリーモチベーションが高い人は、望ましい困難やインターリービング学習という良い学習方法を取り入れている傾向がある
- 回避モチベーションや負荷低減モチベーションは、望ましい困難とインターリービング学習を避ける傾向がある
ということ。
テストの点や成績が勉強の目的になってしまっている人は、自分の知識の向上にもう少し注目して上げると良いでしょう。難しい問題に挑戦したり、勉強中になぜ?と感じたとこを深掘りして調べて見たりして、望ましい困難を積極的に勉強に取り入れていきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]