内発的なモチベーションを高めるには、協力と競争の組み合わせが良いという研究

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心理学の研究ではモチベーションを大きく二つの種類に分けます。

  • 内発的モチベーション
    活動自体が好きという気持ちが源泉となるモチベーション
  • 外発的モチベーション
    報酬や他人に認められたいなど、活動自体の楽しさ以外のことが源泉となるモチベーション

勉強にしろ運動にしろ、物事を長く続けるためには内発的モチベーションの方が大切で、活動自体を楽しく感じていることが大切だと言われています。

そこで本稿では、

  • 内発的モチベーションを高めるのには、協力と競争、あるいはその両方のどれが効果的なのか?

について実験してくれたセントトーマス大学らの研究(*1)を見てみましょう。

協力と競争

活動に協力あるいは競争を取り入れることは、参加者のモチベーションを良い意味でも悪い意味でも左右することがあります。

どちらかといえば協力はモチベーションに良い効果があって、例えばチームを組んで全員で達成する目標を決めることは、参加者のモチベーションを高めてくれることが分かっています。一方で競争には悪い効果もあって、競争に勝つことを優先してチームのことよりも自分の利益を優先してしまうことが起こり得ます。そのため、競争はチームで協力が必要なタスクではマイナスの効果が大きく、個人ベースのタスクでのみモチベーションを高めてくれることが分かっています。

そしてセントトーマス大学の研究が注目したのは「協力と競争」の組み合わせ。この研究では競争と協力に関して三つの方法でバスケットボールのフリースローの実験を行っています。

  • 協力グループ
    2人がペアになって、それぞれ10回ずつフリースローを行うが、2人の総合点で目標が達成できたかが決まる
  • 競争グループ
    2人がペアになって、10回のフリースローのうちの成功回数が多かった方が勝者になる
  • 協力+競争グループ
    2人がペアになって、2人分の総合得点を、他のペアと競い合う

そして協力や競争の結果として、どの方法がフリースローのパフォーマンスや楽しさが一番高いのかを測定したんですね。

結果:フリースローの楽しさ

最初にフリースローの楽しさの結果を見てみると、

  • 協力グループが感じた楽しさは平均5.21だった
  • 競争グループが感じた楽しさは平均5.79だった
  • 協力+競争グループが感じた楽しさは平均7.75だった

ということ。

なんと協力と競争を組み合わせたグループが一番楽しさが高くなっています。一方で協力グループと競争グループではほぼ同じ楽しさのレベルになっていて、どちらか一方だけではあまり効果がないことが分かります。なので活動を楽しくして内発的モチベーションを高めたいなら、チーム内での協力とチーム同士の競争の両方を取り入れることが良いわけですね。

結果2:フリースローのパフォーマンス

続いて、フリースロー10回の成功回数のパフォーマンスの結果を見てみると、

  • 協力グループの成功回数は平均3.57回だった
  • 競争グループの成功回数は平均3.35回だった
  • 協力+競争グループの成功回数は平均6.01回だった

ということ。

楽しさと同様で、フリースローのパフォーマンスも協力と競争を組み合わせたときに一番向上しています。実験の結果からは、良いパフォーマンスを発揮した人ほど、フリースローの楽しさを高く感じていたことも分かっています。そのため、フリースローに競争や協力を取り入れることで、参加者が真剣にパフォーマンスを発揮するようになって、それが楽しさにつながっているということもあるのかもしれませんね。

まとめ

本稿では「協力・競争と内発的モチベーション」についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • 活動にチーム内での協力とチーム同士の競争の両方を取り入れると、活動の楽しさとパフォーマンスの両方が向上する

ということ。

考えてみるとチームスポーツはまさにチームで協力して、他のチームに勝つという構造になっています。なので、協力+競争が楽しいのは、チームスポーツのようにみんなで協力して挑戦する楽しさがあるからなのでしょう。競争にはモチベーションを上げる反面で、自分の利益を優先しやすくなってしまうデメリットもありました。チームでの競争になれば、競争に勝ちたいモチベーションが、チームで協力して勝ちを目指す形に向いていいのかもしれませんね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : The Effects of Cooperation and Competition on Intrinsic Motivation and Performance

Naoto

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