誘惑に負けないセルフコントロールを手に入れるためのテクニック集(後編)

最終更新日

Comments: 0

前編では自分自身で環境や認識を変えることでセルフコントロールを向上するテクニックを学びました。後編では外部要因により環境や認識が変わり、セルフコントロールを向上させるテクニックを学びましょう。自分自身で行動を選択するのは難しい面もあるので、会社や法律などの外部要因で良い行動を促進することも重要なんですね。

外部要因が認知を変える系

①社会の規範を示す

例えば電気の節約を促進するなら、「あなたの地域の平均の使用電力は〇〇Wで、あなたの節約状況は上位〇〇%ですよ」みたいな基準を示すことが効果があります。周りの人がみんな節約しているなら、自分も節約しなければという心理が働くわけですね。

ただし、社会の規範を示すことは逆効果になってしまうケースもあって

  • 平均を下回る人が自分が劣っていることを知ると、やる気を無くして良い行動が逆に減ってしまう
  • 平均を上回っている人が周りのレベルが低いことに気づくと、自分もそれくらいでいいかと頑張らなくなってしまう

ということ。使い所には気をつけましょう。

②社会的なラベリング

人は自分が所属するグループのアイデンティティに沿った行動を取る傾向があります。

  • 日本人なら日本人らしい行動をとる
  • クラスのオタクグループに入るか、イケてるグループに入るかで行動が変わる
  • ランニングクラブに所属してランナーのアイデンティティを持つと、ランニングが習慣になる

グループのアイデンティティを強調したり、自分が習慣にしたい行動に紐付いたグループに参加すると良いわけですね。

③将来の自分と関連づける

将来の自分を近くに感じるほど、セルフコントロール能力は高まります。そのため、今の自分と将来の自分のつながりを考えることが大切。具体的な研究結果としては

  • 将来の歳をとった自分の顔を見た人は、貯金額が2倍に増えた
  • 将来の自分と今の自分の共通点を考えると、3ヶ月後には成績が向上した
  • 将来の自分にメッセージを送ると、衝動的な行動が減少した

といった感じになっています。

④結合評価

何をするかとか何を買うかみたいな判断の時に、複数のものを比較して判断すると、良い判断ができます。例えば、仕事の応募者から採用する人を選ぶ時には、一人一人順番に面接してその都度判断するよりも、複数人を並べて比較して判断する方が、直感的な判断や人種差別的な判断が減って、良い判断ができることが分かっています。

⑤フレッシュスタート

新年の始まりや、誕生日などの、ちょうど区切りの良いタイミングで、人はそれまでの自分をリセットして、新しいことに挑戦するモチベーションが向上します。

⑥ライセンシングの防止

ライセンシングとは、自分に楽をしていい許可を与えてしまうことで、これには2種類のパターンがあります。

  • 過去の頑張りを理由にするケース
    「昨日運動を頑張ったから、今日はお菓子を食べていいや」というやつ
  • 未来の頑張りを期待するケース
    「今日はお菓子を食べて、明日から頑張ればいいや」というやつ

過去にしろ未来にしろ、頑張った自分に注目すると、甘えやすくなってしまうので、

  • 過去の甘えに注目する
    「前にお菓子を食べたんだから今日は運動を頑張ろう」
  • 未来の甘えを予測する
    「今日頑張れなかったら、また明日もズルズルと甘えてしまうから、今日だけは頑張ろう」

と考え方を変えるとセルフコントロール能力が上がります。

外部要因が状況を変える系

①強いパターナリズム

強いパターナリズムは、法律で禁止するとか、税金をかけるとかの強制的な制限をかけたり、逆に良い行動にはインセンティブを与えたりすることです。例えば、

  • タバコは健康に悪いので高い税金をかける
  • 学校内でスマホの使用を禁止する
  • 環境良い車は減税をして推進する
  • ゲームは一日1時間までの家庭ルールを作る

といったものが強いパターナリズムになります。

②小さな環境を変える

法律や市の条例などの大きな環境整備も多くの人の行動を良い方向に変えてくれますが、もっと身近な生活レベルの環境も行動を変えるのには大切です。例えば、

  • 自販機の一番目立つ目線の高さにジュースでなく水を置くようにすると、水を買う人の割合が増える
  • 食事のお皿のサイズを小さめにすると、食べる量を自然と減らせる
  • お店の角側に野菜やフルーツを配置すると、それらの購入量が増える

といった感じ。あまり意識しない小さなことでも、意外と人の行動を左右しているんですね。

③デフォルト

現状維持バイアスと言って、人は現状を維持することを好みます。そのため、デフォルトとして設定された選択肢を、そのまま受け入れやすくなっています。例えば、

  • 個人年金に加入することをデフォルトにして、加入したくない場合に申請が必要とすると、加入率が37%から86%に向上した
  • ドナーの提供意思表示を、デフォルトを提供するにして、提供したくない場合にチェックを入れるようにすると、提供者が16.3%向上した

と言った感じで、デフォルトの力は結構強いことが分かっています。

④アクティブ・チョイス

アクティブ・チョイスはデフォルトとは違うアプローチで良い選択をさせる方法で、「デフォルトを作らずに、自分で選択肢から選ばせる」というものです。

この方法には良い点があって、自分自身で考えて選択肢を選ぶため、選択したことへのコミットメントが高まる効果が期待できます。

⑤事前選択

選択肢がまさに目の前にある状態で選択するよりも、前もって選択を済ませておくと良い選択ができます。例えば、

  • ランチのメニューを前もって注文しておくと、カロリーが低いヘルシーな料理を注文しやすい
  • 今ここで貯金を選択するよりも、2ヶ月後の給料からいくら貯金するかを選択する方が貯金額が増える

と言った感じですね。

⑥誘惑を自分で計画する

ダイエット中にお菓子を食べたくなってしまうとか、勉強しなければいけないのにゲームをやってしまうとか、誘惑に負けてしまうときは、誘惑をやっていい時間を自分で計画すると良いです。

  • 毎週日曜日はお菓子を食べて良い
  • 週の勉強目標をクリアできたら、残りの時間は好きにゲームして良い

という感じで、未来に誘惑をやっていい時間があると、そこまでは頑張ろうと踏ん張れるわけですね。

まとめ

本稿では「セルフコントロールの向上テクニック(後編)」を見てきました。

全てのテクニックをまとめると次の通り盛りだくさんです。

①自分で環境を変える系

  • 罰や制限でコミットメントを高める
  • 誘惑バンドリング
  • 環境の整備

②自分で認識を変える系

  • 目標設定
  • 計画
  • 心理対比
  • セルフモニタリング
  • 心の距離をおく
  • マインドフルネス
  • 認知セラピー

③外部要因で環境を変える系

  • 強いパターナリズム
  • 小さな環境を変える
  • デフォルト
  • アクティブ・チョイス
  • 事前選択
  • 誘惑を自分で計画する

④外部要因で認識を変える系

  • 社会の規範を示す
  • 社会的なラベリング
  • 将来の自分と関連づける
  • 結合評価
  • フレッシュスタート
  • ライセンシングの防止

自分で使えそうだと思ったものは、ぜひ試してみてください。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Beyond Willpower: Strategies for Reducing Failures of Self-Control

Naoto

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

コメントする