仕事のパフォーマンスを上げるにはどの種類のジョブ・クラフティングが良いのか?
ジョブ・クラフティングとは、自分の能力や性質に合った形に仕事を変えることで、本ブログでもたびたび取り上げています。本稿では、このジョブ・クラフティングについて
- 仕事のパフォーマンスを向上するには、タスク・関係・認知のどれをジョブ・クラフティングすればいいのか?
を調べたヨハネスブルグ大学らの研究(*1)がありましたので、その中身を見ていきたいと思います。
3種のジョブ・クラフティング
ヨハネスブルグ大学の研究では、ジョブ・クラフティングを次の3種類に分類しています。
- タスクのジョブ・クラフティング
タスクをやり方や、タスクを行うスケジューリングなど、タスクの進め方を自分に合った形に変更する方法。例えば、午前中は集中力が高いから創造的な仕事をして、午後にメールのチェックなどの雑務をこなそうとか。
- 人間関係のジョブ・クラフティング
仕事で関わり合う人間関係を自分のあった形にクラフティングする方法。例えば、自分の得意な仕事を新人に教えてあげようとか、苦手な人とは間に人を挟んでコミュニケーションを取るようにしようとか。
- 認知のジョブ・クラフティング
仕事そのものは変えずに、自分がその仕事をどう捉えるかの認知を変える方法。例えば、このタスクは自分の今後の人生にどう役に立つのかを考えてみたり、仕事が自分の人生で達成したいこと一致しているのかと考えてみたりして、仕事に自分なりの意味を見出す方法。
従来の研究ではタスクと人間関係のジョブ・クラフティングがよく扱われていたようですが、この研究では3つ目として認知のジョブ・クラフティングも追加しています。タスクや人間関係は仕事の都合上どうしても変えられないこともあるのに対して、認知のジョブ・クラフティングは自分の捉え方の問題なので、どんな仕事でも活用できるメリットがあるんですね。
ジョブ・クラフティングと仕事のパフォーマンス
以前からジョブ・クラフティングには仕事のパフォーマンスを向上する効果があることが分かっています。そして、その背景には
- ジョブ・クラフティングで仕事と自分をフィットさせる
→ 仕事に高い意義を感じるようになる
→ 仕事のパフォーマンスが向上する
と、仕事への意義を感じることが一つのポイントになっているということ。そこで、ヨハネスブルグ大学の研究(*1)では、
- 3種類のジョブクラフティングで、仕事の意義の高まり方や、仕事のパフォーマンスの向上の仕方が違うのか?
を134人を対象の3週間の追跡調査をしています。
結果:仕事の意義とパフォーマンスの向上効果
まずジョブ・クラフティングと仕事の意義の関係として分かったことは
- タスクのジョブ・クラフティングで仕事の意義が高まった(γ=0.29)
- 認知のジョブ・クラフティングで仕事の意義が高まった(γ=0.46)
- 人間関係のジョブ・クラフティングでは仕事の意義は高まらなかった(γ=0.02)
ということ。
そして、仕事の意義が高まった結果として、最終的に仕事のパフォーマンスが向上したのかの分析結果を見てみると、
- タスクのジョブ・クラフティングで、自分の役割内の仕事のパフォーマンスが向上した
- 人間関係のジョブ・クラフティングでは、自分の役割外の仕事のパフォーマンスが向上した(仕事で他人を助けることが増えた)
- 認知のジョブ・クラフティングでは、自分の役割内と役割外の両方の仕事のパフォーマンスが向上した
となっています。
おそらくタスクのジョブ・クラフティングでは自分の仕事に目が向きやすく、人間関係のジョブ・クラフティングでは他人を助けることに目が向きやすくなるのでしょう。一方で、認知のジョブ・クラフティングでは両方が向上していい感じの効果が出ていますね。
まとめ
本稿では「3種類のジョブ・クラフティングの効果の違い」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- ジョブ・クラフティングには仕事・人間関係・認知の3種類がある
- 仕事の意義は、タスクと認知のジョブ・クラフティングで高まる
- 自分の役割内の仕事のパフォーマンスは、タスクと認知のジョブ・クラフティングで高まる
- 自分の役割外の仕事のパフォーマンスは、人間関係と認知のジョブ・クラフティングで高まる
ということ。
ジョブ・クラフティングで仕事のパフォーマンスを高める方法を調べた他の研究では、
- 仕事にチャレンジや楽しさを生むジョブ・クラフティングは、仕事のパフォーマンスを高めやすい
- 仕事のネガティブな側面を減らすジョブ・クラフティングは、仕事のパフォーマンス向上にはつながりにくい
ということも分かっています。なので、3種類のジョブ・クラフティングに加えて、これらのポイントも抑えると良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]