人生の質を高めるには、老化の認識を変えることも大切という研究
病気になってしまったり、体が弱くなって生活に制限がかかってしまったりと、体の健康が損なわれることは人生の質を低下させてしまいます。特に高齢者の方ほど、体の健康に生活の質が左右されやすいので、いつまでも若々しい体を保つことは、人生の質を上げるための大切なポイントの一つです。
そして、この老化と人生の質の低下について、ポワティエ大学病院の研究(*1)では、
- 物理的に体を若々しく保つことも大切だけど、精神的に自分はまだまだ若いと思えることも人生の質を左右するのでは?
ということを調べてくれています。本稿ではこの研究を参考に、精神的に年齢を高く感じてしまうことがどれだけ人生の質を低下してしまうのかを見ていきましょう。
老化の認識と人生の質
自分はまだまだ現役だと感じるとか、それとも自分はもう歳だからと感じるのかは意外と人生の質に大きく影響する可能性があります。それがなぜかというと、
- 年齢を理由に保守的な行動が増えてしまう
自分はもう歳だから若い頃みたいに新しいことは学べないとか、自分はもう歳だからスマホみたいなハイテク製品は使えないとか、年老いたと感じることで新しい行動や挑戦を減らしてしまう可能性がある - 年齢を感じると不安やうつが高まってしまう
年老いたと感じることは自分の無力感を高めてしまうため、不安であったりうつの傾向を高めてしまう可能性がある。そうすると、ネガティブな感情が増えてしまって、人生の質は低下してしまう。
といったことが起こり得るんですね。
実験:老化の認識と人生の質
そこでポワティエ大学病院の研究では、258人を対象に
- 自分の老化がどの程度だと感じているか?
- 老化が進むことはどれだけ人生に良い影響/悪い影響があると感じているか?
- 老化が原因の出来事にもうまく対処できると感じているか?
- 老化が進むことを感情的にどう思うか?
といった観点から、その人の老化の認識の仕方を測定しています。
さらにこの老化の認識とともに、
- 人生の質
- 経済状況の認識
- 家族のサポート
- 不安やうつの傾向
を測定してこれらの関係を分析しています。
結果:
早速実験の結果を見てみると、
- 自分の老化に対してポジティブな感覚を持っている人ほど、人生の質は高い傾向があった(r=0.39)
ということが分かっています。やはり、肉体的に健康なだけでなく、自分はまだまだ若々しいという精神も人生の質に大切だということですね。
それでは、これがどれくらいの影響度なのかというと、
- うつや不安の傾向が人生の質を低下する相関が−0.74
- 家族のサポートが人生の質を向上する相関が0.13
- 経済状況の認識が良いほど人生の質が向上する相関が0.19
ということ。老化の認識には、うつや不安といったメンタルの症状レベルの影響度はないけど、家族のサポートや経済状況の認識よりは強い影響度があることが分かります。
さらに、老化の認識の悪い効果として、
- 自分の老化に対してネガティブな感覚を持ってしまうことは、うつや不安の傾向を増やしてしまっていた(r=0.34)
ということ。つまり、年老いたと感じる→うつや不安が高まる→人生の質が低下するという間接的な影響もあり得るわけですね。
まとめ
本稿では「老化の認識と人生の質」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 自分は年老いたと老化を認めてしまうことは、新しい行動を減らしたり、不安やうつを高めたりで人生の質を低下させてしまう
- この影響は家族のサポートや自分の経済状況の認識が人生の質に与える影響よりも強い
- なので、肉体的に健康なだけでなく、精神的にも若々しくいることが人生の質を高めるためには大切
ということ。
自分はもう歳だからと運動を避けると、それが原因で肉体的な健康も低下してしまうこともあり得ます。つまり、肉体的な若さと精神的な若さがお互いに高めあったり、低下しあったりすることが考えられるわけですね。ということで、いつまでも若々しくいるためには、新しいことにもエネルギッシュに挑戦していきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Positive perception of aging is a key predictor of quality-of-life in aging people