好奇心が学習を高めるのは、好奇心で記憶力まで高まる効果もあるから
好奇心は新しいことを学ぶときにとても大切な役割をします。特に子供の頃は知らないことが多く必然的に好奇心は高いもの。そのため、こんなことをしてみたい、あんなことをしてみたいと、好奇心がモチベーションとなって新しい知識を増やしていきます。もちろん大人になってからも好奇心は大切で、好奇心が高い人ほど行動力が高かったり、研究熱心だったりしますよね。
それで、好奇心で学習が進むのは、好奇心が高い人ほど進んで学習することが第一の要因。しかし、マックス・プランク研究所らの研究(*1)では、
- 高い好奇心が向けられた物事には、記憶力そのものが高まる効果もあるのでは?
ということを調べてくれていました。本稿ではこの研究を参考に、好奇心が学びを高めてくれる仕組みについて学んでいきましょう。
好奇心と記憶力
マックス・プランク研究所らの研究では、60人の子供(10歳〜14歳)を対象に、好奇心と記憶力の実験を行っています。
この実験では、60問のトリビアのクイズを子供に答えてもらって、その答えをどれだけ正しく記憶できるのかをテストします。トリビアのクイズのジャンルは様々で、コンピュータゲーム、メディア、地理、歴史、科学、宗教、政治、一般教養、スポーツなどかなり幅が広くなっています。
これだけ幅広くクイズを出せば、子供によって「このクイズは面白かった」と思えるクイズがいくつかあるわけで、こうした好奇心が持てたクイズとそうでないクイズで、答えの記憶力に差が出るのかが分析されたわけですね。
そしてこの実験ではもう一つ工夫がされていて、クイズが出されて子供が答えた後で、正解が出るまでの間に、様々な人の顔の画像をスクリーンに映し出しています。これはクイズと直接関係ない付随的な記憶力を測るための工夫で、最後にはランダムに混ぜあわされた90枚の画像からクイズの中で見たことがある60枚の画像を当てる記憶テストも行っています。
結果:好奇心とクイズの記憶
早速実験の結果を見てみると、
- 高い好奇心が向けられたクイズは、好奇心が持てなかったクイズと比べて、20分後の再テストで正解率が高かった
- 好奇心が記憶力を高める効果は、10~13歳の子供と13〜15歳の青年の両方で確認されたが、特に13〜15歳の青年の方が効果が大きかった
ということ。
まさに好奇心が高いほど記憶力も高まるという結果が得られています。鉄道に詳しくて駅名を暗記している子供がいたり、好きなゲームのことだったらなんでも知っている子供がいたりと、好きなことだったら色々記憶できるのも、好奇心が関係しているのかもしれませんね。なので、学校の授業も、好奇心が高まる面白いものにできれば、授業の内容の定着率も上げられるでしょう。
また、子供の頃は年齢とともに脳が大きく変化するので、10~13歳と13〜15歳に分けて結果を分析していますが、年齢が高まるほど好奇心の大切さも増すようです。大人になるほど好奇心は薄れてしまいますが、それでは記憶力を低下してしまいます。大人になっても好奇心を忘れないようにしたいですね。
結果2:好奇心と付随的な記憶
続いて、クイズ中に映し出された人の顔の画像の記憶力に関しては、
- 高い好奇心が向けられたクイズで写された画像は、そうでないクイズの場合と比べて、20分後の記憶テストで正解率が高かった
- ただしこの効果は、好奇心によってクイズの記憶力が高まった場合のみ、統計的に有意な効果となっていた
ということ。
クイズに高い関心が持てれば、直接関係ない付随的な記憶力も高まるということ。好奇心は脳の記憶に関する部位を活性化してくれるようなので、直接関係ない付随的な記憶力もついでに高まるのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「好奇心と記憶力」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 好奇心はモチベーションとなって学習を促進してくれるが、好奇心には記憶力そのものを向上してくれる効果もある
- この効果には年齢によって若干の差がでて、10〜13歳よりも13〜15歳の方が記憶力の向上が少し大きい
ということ。
やはり好奇心は新しいことを学ぶときには欠かせないもののようですね。子供の頃は誰でも好奇心旺盛だったものなので、子供の頃を思い出して、大人になっても好奇心を忘れないようにしましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : States of curiosity and interest enhance memory differently in adolescents and in children