逆境は経験するほどメンタルが強くなるはどこまで本当なのか?
哲学者ニーチェの有名な言葉に、
Whatever doesn’t kills you makes you stronger.
というものがあります。
直訳すると「あなたを殺さないものは、あなたを強くする」。要するに、生きている限りどんな経験もあなたを強くしてくれるという意味ですね。
人生に辛い経験はつきもので、そうした逆境を乗り越えることで強くなっていく。しかし、本当にどんな経験も強さに変わるのかは微妙なところで、とてつもなく辛い経験をするとトラウマやうつになって逆に弱くなってしまうことも考えられます。
そこで本稿では、
- 人生の逆境は多く経験するほど、メンタルの強さや幸福感も向上するのか?
を調べてくれたニューヨーク州立大学らの研究を見ていきましょう。
逆境の多さとメンタルの強さ
ニューヨーク州立大学の研究では、総計2,398人の4年間にわたるパネル調査のデータを用いて、逆境とメンタルの強さの関係を分析しています。このデータでは、以下の七つのカテゴリーの逆境をどれだけ経験したのかが毎年測定されています。
- 自分の病気や怪我
- 愛する人の病気や怪我
- 暴力
- 死別(両親が亡くなるなど)
- 社会/環境的なストレス(金銭的な困窮など)
- 人間関係のストレス
- 災害
そして、これらの逆境の経験とともに、メンタル面や幸福感の変化も測定していて、逆境が多いほどメンタルも強くなるのかを分析したんですね。
結果:逆境の数とメンタル・幸福感
早速結果を見てみると、逆境の多さと幸福感やメンタルの強さのグラフが次のようになっています。
このグラフは上に凸の曲線が幸福感のスコアで、下に凸の三つの曲線がそれぞれ心身の苦悩・心身の機能障害・トラウマ症状を表しています。これらのグラフから分かることは、
- グラフ真ん中ら辺の適度に逆境を経験した場合に、一番幸福感は幸福感は向上し、メンタル面のネガティブな症状の一番低下する
- 逆境の経験は少なすぎても多すぎても、幸福感が低下して、メンタルが弱くなってしまう
- どちらかというと逆境が少なすぎるよりも、多すぎるときの方がメンタルの低下は大きい傾向がある
ということ。
やはり、逆境を経験することはメンタルを強くするために大切なようですが、逆境が多すぎて自分のキャパシティを超えてしまうを幸福感の低下やメンタルの不調が出てしまうようです。
結果2:逆境の蓄積と逆境への強さ
続いて、逆境を多く経験するほど、逆境に耐性ができて、新しい逆境に強くなるのかを分析して結果を見てみましょう。
このグラフはこれまでに経験した逆境の累計の数と、新しい逆境での幸福感の低下やメンタルの不調の度合いを表しています。上に凸の曲線が幸福感で、下に凸の三つのグラフが心身の苦悩・心身の機能障害・トラウマ症状となっています。これらのグラフから分かるのは、
- 逆境の経験を適度に蓄積すると、新しい逆境での幸福感の低下は少なくなり、メンタルの不調が出る可能性も低くなる
- 逆境の経験が少なすぎたり、多すぎたりすると、新しい逆境での幸福感やメンタルの低下が大きくなってしまう
- どちらかというと逆境の経験が少なすぎると、新しい逆境のネガティブな影響が強く出やすい
ということ。
こちらの結果でも適度な逆境が大切という結果になっていて、そうした経験が逆境への耐性をつけてくれることが分かります。なので、自分のキャパシティを超えないように気をつけて、少しずつ逆境への耐性をつけていくのが良いでしょう。
まとめ
本稿では「逆境の経験とメンタルの強さ」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 逆境の経験は自分のキャパシティを超えない適度なレベルであれば、メンタルを強くして幸福感を向上してくれる
- 逆境の経験が少なすぎたり多すぎたりすると、メンタルや幸福感は低下してしまうので注意が必要
ということ。
逆境を経験することが大切なのではなく、逆境を乗り越える経験をすることが、自信やメンタルの向上につながるのかもしれませんね。逆境は少なすぎてもメンタルが強くならないので、自分のキャパシティの範囲内で少しずつリスクを取った挑戦をすると良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Whatever Does Not Kill Us: Cumulative Lifetime Adversity, Vulnerability, and Resilience