成長マインドセットで失敗しないための一つのポイントとは?

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成長マインドセットとは、人は努力次第で能力を伸ばして成長できるという考えのことです。この考え方の逆が固定マインドセットで、人の能力は生まれつき決まる部分が大きくて固定的だと考えるもの。両者を比べると、成長マインドセットを持っている人の方が、学業成績が高かったり、失敗を学びに変えて挑戦する傾向があることがわかっています。

成長マインドセットを伸ばすことは、学業やスポーツ、仕事など、どの分野でも大切なことだと考えられています。しかしテネシー大学の研究では、

  • 成長マインドセットが高い人ほど、失敗のコストや可能性を軽視してしまうマイナス面もあるのでは?

ということを実験していました。本稿ではこの研究を参考に、成長マインドセットで挑戦していくときに見逃してはならないポイントについて学んでいきましょう。

実験:プロジェクトの継続判断と成長マインドセット

テネシー大学の研究では、ITプロジェクトの継続判断を成長マインドセットの研究題材として取り上げています。最近ではITの発展が凄まじく、多彩なアプリやIT製品がプロジェクトとして立ち上げられています。しかし、成功するプロジェクトは少ないため、失敗の見込みが高いプロジェクトは早めに断念する決断力が必要になります。成功する見込みが薄いのにプロジェクトを継続してしまっては、時間やお金などの多くのリソースを無駄にしてしまうわけですね。

テネシー大学の研究では、こうしたプロジェクトの継続判断に成長マインドセットが影響することを懸念しています。

  • 成長マインドセットが高い人は、失敗の課題が高いプロジェクトでも、うまく障害を乗り越えて成功できるはずだと、根拠もなく継続の判断をしやすいのではないか?

ということ実験したんですね。

この研究では、空気の質を測るIT機器の開発プロジェクトのシナリオを読んでもらって、プロジェクトが課題にぶつかって成功の見込みが薄くなってしまったときに、どのような判断をするのかが実験されています。集められたのは実際にIT企業でマネージャーたちで、三回の実験で合計351人が参加しています。

結果:成長マインドセットと継続判断

実験の結果を見てみると、

  • 成長マインドセットが高いマネージャほど、プロジェクトが失敗するイメージをせずに、プロジェクトが成功するときのイメージを強くしていた
  • その結果として、成長マインドセットが高いマネージャほど、成功の見込みが低いプロジェクトをそのまま継続する決断をしやすかった

ということ。

まさに想定の通りに、成長マインドセットは失敗を恐れずに挑戦する思考がゆえに、プロジェクトの失敗を軽視してしまうという結果になっています。学業で自分のレベルより一つ上の難しい勉強に挑戦するみたいな、失敗してもダメージが少ない場合には成長マインドセットでどんどん挑戦することは有益です。しかし、仕事のプロジェクト判断のように、失敗が会社の利益を損ねるなど、失敗のコストが高くつく場合には、成長マインドセットに任せて挑戦するのは少し危ない面もあるということ。この点は挑戦するときには忘れないようにしましょう。

結果2:不慣れな判断ほど成長マインドセットは危険

この実験ではもう一つ面白いことが分かっていて

  • 自分が不慣れでよく知らないプロジェクトの判断では、成長マインドセットがプロジェクトの継続を促す影響がより強まった

ということ。

自分が知識がある分野の判断なら、失敗するとどうなるかのイメージをある程度具体的にすることができて、それがブレーキになります。しかし、全く新しい領域で知識がない状態の判断になると、具体的なイメージが持てずに、成長マインドセットに任せて楽観的に考えてしまうようです。

自分が新しい領域に挑戦して、プロジェクトの継続判断をするときには、成功したときのイメージだけでなく、失敗するとどれだけのコストがかかるのかにもしっかりと目を向けるようにしましょう。

まとめ

本稿では「成長マインドセットのマイナス面」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 成長マインドセットは失敗を恐れずに挑戦して、前向きに成長する姿勢を促してくれる
  • しかし、成長マインドセットでは失敗のコストを軽視して挑戦を選びやすく、結果として損失を被ることもある
  • 特に自分がよく知らない領域の判断になると、成長マインドセットの影響は強くなる

ということ。

もちろん成長マインドセット自体は良いものなので、きちんと失敗のコストも考えて正しく成長マインドセットを使うのが良いわけですね。時間やお金などのリソースは有益なので、どのように挑戦すれば効率良く成長できるのかを考えていきましょう。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : When a growth mindset can backfire and cause escalation of commitment to a troubled information technology project

Naoto

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