残りわずかな時間を楽しもうで幸福感は向上するのか?の実験
人は希少なものほど価値を高く感じるもので、時間的な希少価値である、いわゆる期間限定にも大きな魅力を感じるものです。期間限定には、コンビニで売られている期間限定の商品だったり、季節限定のイベントなどがあります。しかし、人生にはもっと大きな期間限定もあって、残りわずかな学生生活や、残りわずかな人生といった人生の節目がそれにあたるんですね。
本稿ではこのような期間限定の効果を見ていきます。時間が制限されると人は”残された時間を十分に楽しもう”というマインドになるもので、最後の思い出作りを行ったりするものです。そして、残された時間では普段何気なくやっていることの見え方も変わって、毎日あっている友人や、毎日通っている場所にも、ありがたみや大切さが実感できたりもします。
こうした姿勢の変化のメリットとして、カリフォルニア州立大学らの研究では、
- 残された時間がわずかだと思えば、一つ一つの経験の満足感が増して、幸福感が向上するのでは?
ということを実験してくれています。本稿ではこの研究を参考に、残りの時間を楽しむマインドになることの効果を見ていきましょう。
時間制限と幸福感
カリフォルニア州立大学の研究では、139人の学生を次の二つのグループに分けています。
- 時間制限グループ
「引っ越しを予定していてあと1ヶ月しか今の生活を送れない」と考えて1ヶ月を過ごしてもらう - コントロールグループ
特別なこともせずに今までの生活通りに1ヶ月を過ごしてもらう
実験の期間は1ヶ月間で、その後にはフォローアップの2週間もつけられて、
- 具体的にどんなことやったのか?
- 欲求の満足感がどのくらいか?
- 幸福感がどのくらいか?
が測定されています。
これらのデータから、残りわずかな時間を楽しもうというマインドが、毎日の満足感を高めて、幸福感まで向上させるのかが分析されたわけですね。
結果:
実験の結果を見てみると、実験期間の1ヶ月の後では、
- 残り1ヶ月だと考えたグループでは、満足感が高まっていた(0.37)
- 満足感が高まると幸福感まで向上していた(0.34)
と幸福感が有意に高まっていることが分かります。
さらに、フォローアップの2週間の後でも、
- 満足感は2週間経っても高まっていた(0.31)
- 幸福感の向上も2週間経っても残っていた(0.25)
ということ。
毎日同じような生活が続くと、どうしても毎日の価値が薄れてしまうものです。変化のない日常でも、残りわずかな時間しか経験できないと思えれば、”1日1日が貴重な経験なんだ”と満足感が高まって、幸福感が向上できるわけですね。人生の時間が一定になってしまわないように、新しいことに挑戦するなどして、ところどころで節目を作ってあげると良いのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「残りわずかな時間を楽しもうで幸福感は向上するのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 人生の節目などで、今の生活が残りわずかだと思えると、人は残された時間を満喫しようという気持ちになる
- 残り時間を楽しむマインドは、日々の満足感を高めて、幸福感を向上させてくれる
ということ。
人生は限られた時間しかありませんが、毎日の仕事や生活に追われていると、なかなかそれに気づくことができません。残された人生が1ヶ月だったら何をするだろと考えると、自分にとって本当に大切なことや、本当にやりたいことが見つけられたりするので、ときには時間を区切って考えてみるのも良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Reframing the ordinary: Imagining time as scarce increases well-being