モラルがある人ほどセルフコントロールのキャパが高いのか?

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セルフコントロール能力とは、一時的な快楽や満足感といった誘惑に負けずに、長期的な良い選択をできる能力のこと。健康に良い食生活を維持したり、貯金をためたりと、セルフコントロール能力は人生の成功のためにはとても大切な能力になります。

この点に関してモラルを考えてみると、

  • 自分の利益を優先せずに、他人を助けてあげたり
  • 相手を敬って礼儀正しくしたり
  • 偏見を持たずに公平に人を扱ったり

と、モラルとは一時的な感情に任せた行動ではなく、他者や社会のために自分を律する行動。そのため、モラルが高い人ほどセルフコントロール能力が高いことが想像できます

本稿ではこの点について、

  • 個人のモラルと縛りのモラルは、セルフコントロール能力とどう関係しているのか?

という観点で調べてくれたペンシルバニア州立大学の研究(*1)を見ていきましょう。

モラルの種類とは?

モラルは大きく五つの分類に分けられます。その五つとは

  • 親切:他人に優しくし、他人に害を与えないこと
  • 公平:他人に公平に接して、えこひいきしたりズルしたりしないこと
  • 権威:権威のある人を敬い従うこと
  • 忠誠:自己中心的にならずに、社会や家族などのグループのために行動すること
  • 尊厳:文化的な価値観を大切にし、礼儀正しくあること

ということ。どれも道徳的に大切な価値観であることが分かりますね。

ペンシルバニア大学の研究ではこれらのモラルをさらに2種類の切り口で見ていて、

  • 個人のモラル
    正義感だったり親切心だったりと、自分が倫理的に大切だと思う心情からくるモラル
  • 縛りのモラル
    忠誠だったり権威だったりと、グループや社会の規範として外から縛られるタイプのモラル

としています。

個人のモラルが主体的な行動なのに対して、縛りのモラルは周囲の圧力が行動を縛り付けるもの。なので同じように行動をコントロールできたとしても、この二つで中のメカニズムが違うので、セルフコントロール能力への影響は変わってくることが予想できるんですね。

モラルがある人ほどセルフコントロール能力が高いのか?

ペンシルバニア大学の研究では、モラルとセルフコントロール能力の関係を調べるために、四つのデータセットを分析しています。これらのデータセットを合わせると、データ数は1万3000人を超えるということ

データとして測定がされた指標には、

  • 個人のモラル
  • 縛りのモラル
  • セルフコントロール能力
  • 親のサポートや監視

が含まれます。

モラルの形成には子供の頃のしつけが大きく影響することが予測されるので、親のサポートといったポイントもデータをとって調べているんですね。

結果:個人のモラルとセルフコントロール

最初に個人のモラルとセルフコントロールの関係をの結果を見てみると、

  • 個人のモラルが高い人ほど、セルフコントロール能力が高い傾向があった
  • 個人のモラルとセルフコントロール能力の関係は結構強くて、この関係を超えるのは年齢とセルフコントロール能力の関係だけだった

ということ。

正義感や親切心といった個人のモラルは、アイデンティティとも深く関わるもので、自分らしさの基盤を支えるものでもあります。なので、個人のモラルを大切にする人ほど、一時的な感情や満足感を抑えて、他者や社会のために行動するセルフコントロール能力が身に付くようですね。

結果2:縛りのモラルとセルフコントロール

続いて縛りのモラルとセルフコントロール能力の関係としては

  • 縛りのモラルが高い人ほど、セルフコントロール能力は低い傾向があった

ということ。

なんと周囲の圧力に縛られるタイプのモラルでは、セルフコントロール能力は逆に低下してしまうという結果になっています。縛りのモラルは、自分で自分をコントロールしているのではなく、周囲の圧力で自分がコントロールされている状態とも言えます。なので、縛りのモラルではセルフコントロールが高まらないのも無理はないでしょう。

結果3:親のサポートや監視

続いて子供の頃の親のサポートや監視が与える影響を見てみると、

  • モラルがセルフコントロール能力を高める効果の一部には、親のサポートや監視が影響していた

ということ。

つまり、親のしつけが子供のモラルを向上して、それによりセルフコントロール能力も高まっている可能性があるということですね。よく付き合う友達の影響で自分の考え方が大きく変わるように、子供の頃からモラルのある親を見本として育てば、子供のモラルもすくすく向上するのかもしれませんね。

まとめ

本稿では「モラルがある人ほどセルフコントロール能力が高いのか?」についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • 正義感や親切心といった自分の価値観からくるモラルが高い人ほどセルフコントロール能力が高い
  • 忠誠や権威といった周囲の圧力からくるモラルが高い人ほどセルフコントロール能力は低い
  • 親のしつけが良いとモラルが向上して、セルフコントロール能力が高まる可能性がある

ということ。

やっぱりセルフコントロール能力を高めるには、周りに強制されてやるのでなく、自分で自分を律して選択していく経験をしていかないとダメみたいですね。セルフコントロール能力は鍛えられるという説もあるので、正義や親切を毎日実践してみるのも良いと思います。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Morality and Self-Control: The Role of Binding and Individualizing Moral Motives

Naoto

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