先延ばしをしやすい人ほど未来思考が弱いというメタ分析
先延ばしとは、本来やらなければいけないことを後回しにして、今楽することを選んでしまうこと。先延ばしにはセルフコントロール能力が関わってきますが、過去・今・未来のどの時間に思考を向けるのかにも影響されます。
それで、現在を重視する思考が先延ばしを増やしてしまうことは多くの研究から分かっているということ。まあ先延ばしは今を楽しんで、嫌なことを後回しにするわけですから、当然のことではあります。そうなると、未来を重視する思考を持った人は先延ばしが少ないことが想像できますが、実はこちらの関係を調べた研究は比較的数が少ないということ。
そこで本稿では、
- 未来思考の人は先延ばしが少ないのか?
をメタ分析で調べてくれたビショップス大学の研究を見ていきましょう。
先延ばしと未来志向
先延ばしを未来志向・現在志向の関係を調べた14件の研究をメタ分析でまとめています。これらの研究を合わせるとデータの規模は4,312人にもなるということ。
このメタ分析では未来思考と現在思考の両方と先延ばしの関係を調べています。
- 未来志向
“将来の成功のために、今の楽しさを犠牲にできる”とか
“将来のことを考えて、日々の行動をそれに向けている “とか
“1日の計画はその日の朝までに決めておくべきだ “といった考えの傾向のこと。
未来志向の測定方法にもいくつか種類があるようですが、メタ分析ではそれらの測定方法をまとめて分析しています。
- 現在志向
“何よりも今を楽しむことが大切だ”といった考えの傾向のこと
未来志向と現在志向はどちらか一方しか持てないというわけではなく、それぞれ独立していて両方高いということもあり得ます。
そしてこの研究では未来志向と現在志向に影響する要因として
- ストレス
先延ばしをすると一時的に楽しめたとしても、将来的にはストレスが高まって自分を苦しめてしまうことが考えられる
- ポジティブ感情の低下
ポジティブな感情が多いときに、人は視野が広がって長期的な考え方ができるようになる。そのためポジティブ感情が低下してしまうと現在思考が強くなって、先延ばしが増えてしまうことが考えられる。
の二つもメタ分析に含まれています。
結果:未来志向と現在志向
メタ分析の結果として分かったポイントは、
- 先延ばしが多い人ほど、未来思考が低い傾向があった(−.45)
- 先延ばしが多い人ほど、現在思考が高い傾向があった(.15)
ということ。
想定の通り、先延ばしが多い人ほど、現在思考が強くて未来思考が弱いという結果になっています。未来志向の方が強い関係になっているので、一時的な快楽を求めやすい人もそうですが、未来に対する意識が低い人の方がより先延ばしをしてしまいやすいということです。
結果2:ストレスとポジティブ感情の低下
続いて、ストレスとポジティブ感情の低下の影響を見てみると、
- 先延ばしが多い人ほどストレスが高く、ストレスが未来志向を低下させる要因にもなっていた
- 先延ばしが多い人ほどポジティブな感情が低く、ポジティブ感情の低下も未来志向の低下の要因になっていた
- しかし、これらの二つの影響はごく一部で、それ以外にも先延ばしと未来志向の関係に影響する要因が隠れていることもわかった
ということ。
先延ばしを減らすには、ポジティブな感情を保つことと、ストレスをうまく発散することも大切なのでしょう。ストレスが高いときはセルフコントロール能力も低下してしまうので注意しましょう。
まとめ
本稿では「先延ばしと未来志向」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 先延ばしが多い人ほど、未来志向が弱く、現在志向が強い傾向がある
- 先延ばしはストレスやポジティブ感情の低下につながっていて、それらも未来志向を低下してしまう要因になるので注意が必要
ということ。
仕事で疲れてストレスが溜まっているときに、食器洗いを次に日に先延ばししてしまったりとかはありますよね。なので、感情的にもストレス的のもさっぱりしている朝に、先延ばししやすいタスクを片付けてしまうのも良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]