ストーリーテリングは本当に説得力を向上してくれるのか?の研究
プレゼンテーションやマーケティングなどの説得が必要なビジネスシーンで、最近ではストーリーテリングが大切だと言われるようになりました。
ストーリーテリングとは、その名の通り「物語を語って説得する」こと。
例えば、ただ「日々の努力は大切で、努力すれば将来成功できる」と伝えるよりも、「野球選手のイチローは毎日欠かさず努力を続けて、その努力の積み重ねで一流の選手になった」という物語を伝える方が効果的に伝わるんですね。
そこで本稿では、このストーリーテリングの効果について
- ストーリーテリングで本当に説得力が向上して、聞いた人の考えや行動は変わるのか?
ということを分析してくれたペンシルバニア州立大学の研究を見てみましょう。
ストーリーテリングと説得力
ペンシルバニア州立大学の研究では、ストーリーテリングの効果を確かめた74件の研究をメタ分析でまとめています。これらの74件の研究結果を総合したとき、本当にストーリーテリングの効果があるのかを分析してくれたわけですね。
それでこの研究がストーリーテリングの効果として取り上げたのは
- ストーリーテリングで聞き手の信条が変わるのか?
- ストーリーテリングで聞き手の心構えが変わるか?
- ストーリーテリングで聞き手の意識が変わるか?
- ストーリーテリングで聞き手の行動が変わるか?
となっています。
これらの四つは似たような言葉なので、「日々の努力が大切」という具体例で四つの変化を見てみると、
- 信条の変化:日々の努力が大切なんだと考えを改める
- 心構えの変化:努力は大変で避けたいという評価から、努力は成功につながる良いものだと、行動に対する評価が変わる
- 意識の変化:自分も努力しようと、行動を起こす意識が高まる
- 行動の変化:実際に行動が変化する
という感じになります。
つまり、人が考えを改めて行動を起こすには、信条→心構え→意識→行動という4段階のプロセスがあって、ストーリーテリングがどこまで効果があるのかを調べてくれたわけですね。
結果:ストーリーテリングの説得力
早速結果を見てみると、
- ストーリーテリングで聞き手の信条が変わった(効果量0.17)
- ストーリーテリングで聞き手の心構えが変わった(効果量0.19)
- ストーリーテリングで聞き手の意識が変わった(効果量0.17)
- ストーリーテリングで聞き手の行動が変わった(効果量0.23)
ということ。
効果量は小さめの値となっていますが、確かにストーリーテリングでは説得力が高まりやすく、聞き手の考えや行動に変化を起こしやすいということが分かります。
結果2:ストーリーテリングで大切なこと
続いて、様々なストーリーテリングの研究を比べて分かったポイントを見てみると、
- 物語が事実かどうかはストーリーテリングの効果には関係なかった
- 物語の伝え方はテキストや音声の方が効果が高く、映像の方が効果は低かった
ということ。
物語は事実でなくても良いということで、映画や漫画、昔話のようなフィクションであっても、それに感銘すれば考えや行動を変える力があります。また、面白いことに物語の伝え方はビジュアルを含まないテキストや音声の方が効果が高いということ。実は自分で物語のイメージを膨らませることが説得力を高めるのに役立っているようで、映像として外から物語のイメージが提供されてしまうと、ストーリーテリングの効果は若干落ちてしまうみたいなんですね。
まとめ
本稿では「ストーリーテリングで説得力は高まるのか」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 効果量は小さいながら、確かにストーリーテリングは説得力が高く、聞き手の考えや行動を変える力がある
- ストーリーテリングの物語は事実でなくても効果はあるが、伝え方に映像は含めない方が効果が高い
ということ。
仕事のプレゼンで上司を説得したり、子供のスポーツのやる気をモチベートしたりと、物語で説得力を向上できる機会は色々とあると思うので、ぜひ物語を活用していきましょう
以上、本稿はここまで。
[参考文献]