ハードな仕事もコントロール感があれば疲れにくいという研究
仕事が山のようにたくさんあったり、締め切り間近で時間の余裕がなかったりと、仕事の要求が増えれば増えるほど、疲労感は溜まってしまうものです。
しかし、心理学の研究では、自分でやりたいと思えるモチベーションが続くなら、ハードな仕事でも疲労感を感じにくくなることが分かっています。つまらない仕事はすぐにやめたくなってしまうけど、自分の好きなことなら何時間でも続けられるようなものですね
そこで本稿では、仕事の疲労感について
- 自分で仕事を自由にコントロールできるのであれば、モチベーションも高まって、疲労感が感じにくくなるのでは?
ということを調べてくれたフローニンゲン大学の研究を見てみましょう。
コントロール感と疲労
自分で物事をコントロールしている感覚は大切なもので、
- 人生を自分でコントロールできている感覚がある人ほど幸福感が高い
- 仕事を自由にコントロールできると、働きがいやパフォーマンスが向上する
- スケジュールなどの時間を自分でコントロールできている感覚は、時間のストレスを減らしてくれる
など、コントロール感はメンタルを前向きにしてくれることが分かっています。
そのため、仕事においても当然コントロール感は必要なもので、やらされ感で仕事を行うよりは、自分で主体的にコントロールしている感覚で仕事を行なう方が断然メンタル面に良いんですね。
コントロール感はハードな仕事の疲労感も減らしてくれるのか?
フローニンゲン大学の研究では、仕事のコントロール感と疲労感の関係を調べるために、555人のナースを対象に測定を行なっています。この測定では
- 仕事の要求の多さ
- 仕事のコントロール感
- 周囲のサポートの多さ
- 仕事の内発的モチベーション
- 仕事の疲労感
の4つが測定され、これらの関係が分析されています。
結果:コントロール感と疲労感
早速結果を見てみると、
- 仕事の要求が多いほど、疲労感は高まってしまう傾向があった(0.43)
- しかし、仕事のコントロール感が高いほど、疲労感は軽減する傾向があった(−0.32)
ということ。確かにコントロール感があれば疲労感が軽減されることが確認されています。
これをグラフにして見てみると、次のようになっています。仕事のコントロール感が低い場合(上の直線)では、仕事の要求が増えるとともに右肩上がりに疲労感が大きく向上してしまっています。一方で仕事のコントロール感が高い場合(下の直線)では、この傾きが低く抑えられていて、ハードな仕事でもそれほど疲労感が高まっていなことが分かります。
しかし、一点注意点もあって
- 仕事の要求が高いほど、コントロール感が低い傾向もあった(−0.34)
ということ。仕事が山積みになっていたり、自分のスキルを超える難しい仕事だったりと、要求が高い仕事はそもそも自分でコントロールしにくい傾向があるわけですね。その場合は、仕事をサブタスクに分割して進捗感を出すなど、コントロールしている感覚を向上させる工夫が必要になるかもしれません。
結果2:コントール感と内発的モチベーション
続いて、仕事のコントロール感に内発的モチベーションを高める効果もあるのかを見てみると、
- 周囲のサポートが多いほど、仕事の内発的モチベーションは向上していた
- 周囲のサポートが少ない場合には、コントロール感がハードな仕事の内発的モチベーションを高めてくれていた
ということ。
なので、内発的モチベーションを高めるのには、コントロール感よりも周囲のサポートを充実させて助け合える環境をつくってあげるのが基本ということです。そもそもハードな仕事ほど、周囲のサポートが必要になるものなので、困った時でもサポートしてもらえる安心感を作ることが大切なようですね。
まとめ
本稿では「コントロール感と仕事の疲労感」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- ハードな仕事でもコントロール感があれば疲労を感じにくくなる
- 内発的モチベーションを上げるには、コントロール感よりも周囲のサポートの方が効果が高い
ということ。
仕事のコントロール感は疲労感以外にも、働きがいやパフォーマンスも向上してくれます。コントロール感を高めるにはジョブ・クラフティングなどを取り入れてみると良いのではないでしょうか。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]