読書のフロー体験を起こすには、事前知識が役に立つという研究

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フロー体験とは、時間の感覚も忘れるくらいに活動に没頭すること。ゲームに没頭したり、スポーツの試合に集中したり、芸術作品の作成に夢中になったりと、フローは人生の様々な場面で役に立つものです。

本稿ではこのフローを勉強の文脈で見てみましょう。教科者を読んでいても、他のことが頭に浮かんで全然集中できないこともあれば、なぜそうなるのか?を疑問に感じてワクワク夢中になれることもありますよね。

この点について、イランの研究では

  • 読書におけるフロー体験は、その内容についてある程度事前知識を持っている方がおきやすいのでは?

ということを調べてくれています。本稿ではこの研究を参考に、フローに入って勉強に没頭する方法について学んでいきましょう。

事前知識の深さとは?

新しい本を読むときには、その本の内容に関する事前知識の深さによって、興味の持ち方や読書のスピードが変わります。例えば、本の内容が水は凍るとなぜ固体になるのか?みたいな話なら、私たちは氷を身近に知っているので興味も持ちやすいでしょう。一方で、本の内容が微分・積分の話になってしまうと、何それ?何のために必要なの?と最初に学ぶときにはイメージすら湧かないものです。

そこでイランの研究では、事前知識の深さを次のようにレベルに分けていてます。

  • 全く知らないレベル
    何それ?美味しいの?と全く分からないレベル
  • 聴覚レベル
    なんとなく聞いたことあるレベル
  • 視覚レベル
    聞いたこともあるし、自分で見たこともあるレベル
  • 運動レベル
    自分で直接触れたことがあるレベル
  • 内面レベル
    その内容について直接経験したことがあるレベル
  • 最大レベル
    その内容について詳しく調べたり経験したことがあるレベル

具体的にサッカーで例えるなら

  • 全く分からないレベル
  • なんとなくどういうスポーツかは聞いたことあるレベル
  • 直接サッカーのプレイを見たことがあるレベル
  • 自分でサッカーボールに触れたことがあるレベル
  • 自分でサッカーの試合を体験したことがあるレベル
  • 部活動などでサッカーを深く経験したことがあるレベル

という感じですかね。

事前知識とフロー体験

それで、イランの大学では、文章に関する事前知識とフロー体験の生まれやすさの関係を調べる実験を行っています。この実験では、第2言語として英語を学習している238名の学生を対象に、4つの文章を読んでもらいます。これらの文章は学生に馴染みのあるトピックスもあれば、あまり馴染みのないトピックスもあって、こうした事前知識の差がフロー体験や文章の読解力にどう影響するのかを調べています。

結果:事前知識で読書体験は向上するのか?

早速実験の結果を見てみると、

  • 事前知識の多いトピックスの文章の方が、フローの体験が生まれやすかった
  • フロー体験が多いほど、文章の読解力も向上していた
  • ただし、事前知識の多さと読解力の直接の関係はなかった

ということ。

つまり、文章の内容についてあらかじめある程度知っている方が、読書でフローが生まれやすく、フローの集中力により読解力も向上するということですね。やはり自分が想像できない分野だと、関心も向けづらくなってしまうので、読書の集中力を高めるには事前知識を高めておくことが大切ということですね。

活用:事前知識で読書をよりよくするには?

それでは、この研究結果は現実でどのように活用できるでしょうか?

読書体験を改善するいくつかの活用方法を考えてみると、

  • いきなり難解な本は読まずに、自分が読みやすいレベルの本で事前知識をつける
  • 本を読む前に、ざっと目次に目を通してどんな本なのかを下調べしておく
    (このとき気になる章やトピックスをピックアップしても良い)
  • 教科書を読む前に、資料集を読んで、画像などのイメージを事前知識としてインプットしておく
  • 体験できるなら早めに一度体験してみる

などができるでしょう。

ポイントとしては、本の内容についてイメージや体験を準備して、本への関心を高めておけば、フローが生まれやすくなるわけですね。

まとめ

本稿では「事前知識で読書のフローは高まるのか?」についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • 本の内容についてある程度事前知識を持っていた方が、読書注のフローは生まれやすい
  • 読書中のフローが高まれば、本の読解力も向上する
  • なので、読書のフローを増やしたければ、事前知識を高めてみよう

ということ。

読書のフローを高めるには、まずはその内容について体験したり、イメージを膨らませたりで、事前知識や関心を高めるようにしていきましょう。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Flow and reading comprehension: Testing the mediating role of emotioncy

Naoto

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