エクスプレッシブ・ライティングで、頭から離れないネガティブな考えが減るのか?
人生で鬱を経験する人は20%近くいて、さらに一度鬱を経験した人は75~80%の確率で他の鬱の経験をすることが分かっています。思考がネガティブになってしまうと、嫌なことばかり目につくようになって、なかなか抜け出すことができないんですね。
そこで本稿では、こうしたネガティブな思考から抜け出すテクニックとして
- エクスプレッシブ・ライティングで反芻思考を減らすことができるのか?
について調べてくれた研究を見ていきましょう。
メンタルがネガティブな人の2つの特徴
メンタルがネガティブな人には、その原因として次の2つの特徴があることが知られています。
- ネガティブな思考を抑えつけようとする
有名な話ですが、「ピンクのゾウについて考えないようにしてください」と言われると、逆にピンクのゾウが頭に浮かんできてしまうようになります。つまり、ネガティブな感情を無理に抑えつけようとすると、逆に増長してしまう危険があるんですね。メンタルがネガティブな人は無理に感情を抑えつけようとしがちで、適切に対処するならネガティブな感情は客観的に受け止めてあげることが大切なんですね。
- 何度も同じことを思い出してしまう(反芻思考)
ネガティブな思い出を何度も繰り返して思い出してしまうことは、反芻思考といってメンタルに非常にマイナスであることが知られています。楽観的な人なら過去のことはパッと切り離して前を向けるのですが、メンタルがネガティブな人は、過去に引きづられて何度もネガティブな思いをしてしまうんですね。
つまり、ネガティブな感情をうまく対処したいなら、この2つの問題を起こさないようにしなければいけません。
エクスプレッシブ・ライティング
そこで役に立つのがエクスプレッシブ・ライティングというテクニックです。エクスプレスには感情を表に出すという意味があるので、このテクニックは簡単に言えば感情を書き出すことで表に出す方法になります。どのように実践するのかというと、
- 自分が感じているネガティブな感情について、20分ほどかけて深く具体的に書き出す
というもの。
- 自分は何に対してどのような感情を感じているのか?
- なぜ自分はこの感情を感じているのか?
- 自分の深い部分ではどのような思考が働いているのか?
といった感じで、自分の感情や思考について深く掘り下げて書き出していきます。
エクスプレッシブ・ライティングはネガティブな感情を抑えるのに有効だと分かっているので、反芻思考にも効果があることが期待できます。
反芻思考とエクスプレッシブ・ライティング
テキサス大学の研究では
- エクスプレッシブ・ライティングを実践することで、反芻思考を抑えることができるのか?
について、97人を対象に実験を行っています。
この実験では、20分のエクスプレッシブ・ライティングを3日間続けて実践した場合に、反芻思考が減るのかを測定したんですね。さらに、実践から6ヶ月後までフォローアップをしていて、エクスプレッシブ・ライティングの効果が持続するのかも分析がされています。
結果:エクスプレッシブ・ライティングの効果
早速結果を見てみると、
- 3日間のエクスプレッシブ・ライティングを行った人は、6ヶ月後の鬱の傾向が低下していた
- この効果は考え込むタイプの反芻思考が低下することで得られていた
ということ。
反芻思考にも、単純にネガティブな感情を繰り返して思い出してしまうタイプと、そのネガティブな感情についてあれこれ考え込んでしまうタイプの2つがあります。あれこれ考え込んでしまうとは、私はなんでいつもダメなんだろうとか、私は他の人より劣っているんだとか、反芻思考がネガティブな自己評価につながってしまうことを言います。
エクスプレッシブ・ライティングでは、反芻思考を減らす効果がありますが、特に後者の考え込むタイプの反芻思考が減ることが、鬱の傾向の低減に役に立っているということです。
結果2:人による効果の違い
もう一つこの研究で分かったことは、人によって効果が違うことで
- 普段から感情をあまり表に出さない人ほど、エクスプレッシブ・ライティングの効果が高かった
ということ。
感情をよく表に出す人は、友達に相談するなどしてネガティブ感情に対処することができますが、感情をあまり表に出さないタイプの人は、自分中に感情を押し込めてしまいます。エクスプレッシブ・ライティングでは、そうした心の中に押し込められた感情を書き出すことで、ネガティブ感情を開放する役割があるみたいですね。
まとめ
本稿では「エクスプレッシブ・ライティングで反芻思考が減るのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 3日間のエクスプレッシブ・ライティングで、反芻思考が減って半年後の鬱の傾向が軽減された
- この効果は普段から感情を表に出さない人ほど効果が高かった
ということ。
20分だけネガティブな感情について書き出すだけならやるのも簡単です。嫌なことがあった日や、ネガティブな感情が頭から離れない日だけでも、一枚紙を出して感情をとことん書き出してみてはいかがでしょうか。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Benefits of expressive writing in lowering rumination and depressive symptoms