クリエイティブなアイデアを出すのに時間制限は有効なのか?
タスクのパフォーマンスを上げるのに、時間制限は一つの有効な手段でもあります。締め切りのない仕事がだらだらと後回しになってしまうのと同じで、時間制限のプレッシャーがタスクのモチベーションを高めることがあるわけですね。
しかし、時間制限は厳しすぎてもダメで、やるべきことが山積みで手が回らないとか、締め切りが近すぎてどうしても間に合わないとなると、焦りから仕事の質が低下してしまうこともあり得ます。つまり、時間制限はゆるすぎても厳しすぎてもダメで、ちょうど良い時間制限で一番仕事のパフォーマンスが高まるような逆U字型のグラフを描くわけですね。
そこで本稿では、こうした時間のプレッシャーについて
- クリエイティビティが求められる仕事でも、時間制限は逆U字方のグラフを描くのか?
について調べてくれたイリノイ大学の研究を見ていきたいと思います。
時間のプレッシャーはクリエイティビティを高めるのか?
イリノイ大学の研究では、時間のプレッシャーとクリエイティビティの発揮の関係を調べるために、170名の従業員とその上司10名を対象にデータの取得を行なっています。どのようなデータが取得されたのかというと
- 仕事中に時間のプレッシャーをどれだけ感じているのか?
- 仕事でどれだけクリエイティビティを発揮しているか?
- 新しい経験にどれだけオープンな人か?
- 職場はクリエイティブな働き方をどれだけサポートしているか?
といったポイントが測定されています。
想定としては、時間のプレッシャーを適度に感じているときにクリエイティビティはピークになるということですが、
- 職場のサポートがなければクリエイティビティは高まりにくいのでは?
- その人が新しい経験を好まないタイプだとクリエイティビティは高まりにくいのでは?
という2点も追加で分析がされています。
結果:時間のプレッシャーとクリエイティビティ
早速結果を見てみると、次のようなグラフが得られています。
このグラフは横軸が時間のプレッシャーで、縦軸がクリエイティビティの高さを表しています。
4つの直線のうち1本だけは、逆U字型の想定通りの結果となっています。この直線が意味するのは
- 職場がクリエイティブな働き方をサポートしていて、かつ新しい経験にオープンな社員であれば、適度な時間のプレッシャーはクリエイティビティを高める
ということを示しています。
一方で他の直線は右肩下がりの直線になってしまっていて、
- 職場がクリエイティブな働き方をサポートしていない場合
(例えば、従来通りの働き方を好んで新しいアイデアを嫌うとか) - 社員が新しい経験にオープンでない場合
- あるいはその両方の場合
の3つのケースでは、時間のプレッシャーが高まるほどクリエイティビティが低下してしまっています。
仕事に活用するには?
それでは、この研究結果を仕事に活かす上で大切なポイントは
- 職場はクリエイティブな働き方をサポートして、新しいアイデアや新しい仕事の進め方を積極的に採用するようにすること。そうしないとせっかくクリエイティブな人がいても、その人のクリエイティビティが発揮されなくなってしまう。
- クリエイティビティが求められる仕事には、新しい経験にオープンな人を採用した方が良い。
- その上で時間のプレッシャーも適度に与えること。締め切りや時間の制限が全くないのもダメだし、仕事量が多すぎたり締め切りが厳しすぎたりで、時間のプレッシャーが高すぎるのもダメ。
ということになります。
この研究では時間のプレッシャーを次のような質問にどれだけ合致するかで聞いています。
- 私は仕事を完了するのに十分な時間がない
- 新しいアイデアを考えるための時間が取れない
なので、これらの質問に対して、1点(全くそうだ)〜7点(全くそうではない)で採点した時に、3〜5点くらいになる程度の時間プレッシャーを目指すと、クリエイティビティが発揮されるピークポイントを作れるでしょう。
まとめ
本稿では「時間制限はクリエイティビティを高めてくれるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 適度な時間のプレッシャーはクリエイティビティを高めてくれる
- ただし、時間のプレッシャーはなさすぎても、高すぎてもクリエイティビティを低下してしまうので、ちょうど良いポイントを作るのが大切
- 時間のプレッシャーを活用するには職場のサポートと新しい経験へのオープンさの両方が必要で、どちらか一方でも欠けると、時間のプレッシャーはクリエイティビティを低下してしまう。
ということ。
自分で時間制限をつけるなどして、自分でも時間のプレッシャーはコントロールできる部分もあるので、自分でもちょうど良いポイントを探ってみると良いかもしれません。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]