混乱が勉強の学びを深くするのか?の研究
勉強をしているとたびたび頭が混乱する経験をすることがあるでしょう。難解な数学の問題の解き方が分からず途方に暮れたり、手に取った専門書が難しすぎて意味が分からなかったり、自分の理解を超えた知識に出会うと頭は混乱してしまうものです。
そして、こうした混乱の最中では、一生懸命に勉強をしているのに、なかなか理解が進まずに、知識が身についていないような感覚を持ってしまいます。逆に「猿でも分かる〇〇」系の簡単な本は、サクサク読み進められてすごい勉強が進んだ気になりますよね。
しかし、勉強が進んだ気になることと、本当に理解ができているのかはまた別の問題です。難解な勉強に悩む方が、頭を使うことは明白ですから、実際のところの理解がより深くなることが考えられるんですね。
そこで本稿では、
- 勉強に混乱が多いほど、学びも深くなるのか?
について実験して調べてくれた研究を見てみましょう。
勉強と混乱
ノートルダム大学らの研究では、意図的に勉強中に混乱を起こしたら、勉強の学びが深くなるのかを実験により調べています。
この実験では、①教師、②生徒、③生徒(参加者)の三者会談で新しいことを学んでいきます。この時に意図的に混乱を起こすために、
- 教師が正しいことを言っているが、ペアの生徒が間違っていることを言っている場合
- 教師が間違ったことを言っているが、ペアの生徒が正しいことを言っている場合
- 教師もペアの生徒も間違ったことを言っている場合
- 教師もペアの生徒も正しいことを言っている場合(混乱なしの基準グループ)
の4パターンの学習方法を実験しています。
どのケースにおいても、参加者は教師とペアの生徒のどちらの意見に賛成するのか、その根拠な何かを説明しなければいけないようになっています。そして、間違った意見に釣られて、間違ったことを学習してしまっては元も子もないので、3人で話し合う中で最終的には正しい意見へ辿り着くように誘導がされています。
そして、学習後には、学習中にどれだけ頭が混乱したのかと、内容をどれだけ正しく理解できているのかが測定されています。
結果:混乱は学習を助けるのか?妨げるのか?
早速実験の結果を見ていると、
- 話し合いの最中に見解では、教師またはペアの生徒に間違ったことを言っている人がいると、参加者も間違った意見を言ってしまうことが増えた
- しかし、最終的に正しい正解を知った後では、学習中に間違った意見を聞いた人の方が学習成果が上がっていた
ということ。
確かに、教師もペアの生徒も正しい意見ですんなりと正解をも学ぶよりも、どちらか一方でも間違った意見で、自分で本当に正しい意見が何かを悩む方が学習効果が上がっているんですね。
そして、この実験ではもう一つ重要なことがわかっていて
- 教師またはペアの生徒が間違った意見を言っても、参加者の頭が混乱しなかった場合には学習成果は向上しなかった
ということ。
つまり、より深い学びを得るためには、頭の中が混乱して自分で答えを考え抜く経験が必要なわけです。間違った意見を聞いても、初めから予備知識があって迷わず自分の答えが出たような場合には、学習効果は上がらないわけですね。
まとめ
本稿では「混乱は勉強を助けるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 対立する意見などを聞いて、勉強中に頭が混乱するほど学びは深くなる
ということ。
深い学びを得たいときには、スラスラ学べる簡単な教材よりも、少し難しめの教材にして、自分で考える時間を増やす方が良いでしょう。難しい勉強している時には、理解が進んでいる感覚がなかなか得られないのでつらい面もあります。しかし、自分で考え抜く経験はしっかりと深い理解につながっていくので、挫けずに頑張っていきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Confusion can be beneficial for learning