子供の頃の辛い経験はやり抜く力(GRIT)を育ててくれるのか?

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GRITとは長期的なゴールに向かって忍耐強くやり抜く力のことで、心理学者のアンジェラ・ダックワース博士の提唱しています。GRITが高い人は、学業成績良かったり、仕事のパフォーマンスが高かったりと、成功の鍵となる能力であることが分かっているんですね。

それで、自分の周りの人を見渡してみれば、すぐ諦めてしまうGRITの低い人もいれば、一流のスポーツマンのように毎日厳しい練習を忍耐強く続けられる人もいるでしょう。こうしたGRITの高さの違いは、生まれつきの性格による部分もあるかもしれませんが、子供の頃からの経験の中でGRITが育まれるということもあり得るでしょう。

そこで本稿では、

  • 子供の頃の辛い経験はGRITを高めてくれるのか?それともGRITを損なってしまうのか?

について調べてくれた研究を見てみましょう。

子供の頃の辛い経験とGRIT

両親がすぐ怒鳴る人だったり、暴力を振るわれたりと、子供の頃に辛い経験をする人もいます。こうした経験は、忍耐力を鍛えてGRITを高めてくれるそうでもありますが、一方でトラウマのように心に傷を追わせてGRITを低下してしまうことも考えられます。

ラトガーズ大学の研究では、この点について1871人の大学生を対象に調査を行っています。この調査では

  • 子供の頃にどれだけ辛い経験をしたか?
  • 大学生になった今GRITがどれだけ高いか?

を測定していて、この2つの関係性を分析しているんですね。

この研究がいう辛い経験が具体的にどんなものかというと、下記の10項目になります。

  • 虐待系
    ①感情的な虐待を受けていた
    ②身体的な虐待を受けていた
    ③性的な虐待を受けていた
  • 育児放棄系
    ①家族から感情的に放置されていた
    ②家族から身体的に放置されていた
  • 家庭問題系
    ①親が離婚や別居をしていた
    ②母親によく暴力を振るわれた
    ③薬物を使用している人が家族にいた
    ④メンタルの病気を持つ人が家族にいた
    ⑤投獄された人が家族にいた

実験の参加者ではどれか一つでも該当する人が35.16%、3つ以上に該当する人が8%だったということです。

結果:

早速実験の結果を見てみると、

  • 全体を総合すると、子供の頃の辛い経験はGRITを低下していた

ということ。つまり、虐待や育児放棄などの辛い経験は、忍耐力を鍛えるよりも、メンタルを傷つけて弱くしてしまう効果の方が強いみたいですね。

辛い経験の10項目を個別に見ていくと、特にGRITの低下に強く関連している3項目があって

  • 感情な虐待
  • 性的な虐待
  • 感情的な放置

となっています。上記の10項目の中では虐待系と育児放棄系が特にGRITの低下につながっていて、家庭問題系の経験はそこまでの低下にはつながらないようです。

他の研究で分かっているのは、家族や学校のクラスなどの社会的コミュニティに受け入れられている感覚を強くてるとGRITも高まりやすいということ。この点から考えると、虐待や育児放棄は子供に孤独感を与えてしまうこともGRIT低下の一つの要因のようです。

なので、子供のGRITを高めたければ、努力して何かを達成する成功体験を積ませて、それを家族が褒めてあげるのが良さそうですね。

まとめ

本稿では「子供の頃の辛い経験はGRITを高めるのか?」についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • 虐待や育児放棄といった子供の頃の辛い経験は、GRITを低下してしまう

ということ。

社会の底辺から忍耐力と努力で這い上がるサクセスストーリーはよくありますが、こんなのはごく稀な話。こうした辛い環境では、多くの人は心理的に弱くなってGRITは低下してしまうようです。この結果からすると、スパルタで怒鳴りつける教育もGRITにとってマイナスだと考えられます。GRITを鍛えるには、もっと暖かく見守って、子供自身が努力して、自分の力で達成できるようにしてあげましょう。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Passion and Persistence: Investigating the Relationship Between Adverse Childhood Experiences and Grit in College Students in China

Naoto

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