年齢を重ねるほど、感情の対処方法が豊かになるのか?の研究

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年齢を重ねると、体力のように低下していってしまうものもあれば、知識や経験のように積み重ねられていくものもあります。

そこで、本稿で注目するのは

  • 年齢が高まるほどに、感情のコントロール方法も学んでうまくなっていくものなのか?

という点。なんとなくですが、高齢者の方が感情が安定していて、うまく日常的な感情に対処ができているイメージがありますよね。

本稿ではこの点について、しっかりとデータをとって調べてくれた研究を見ていきましょう。

感情の対処方法の種類

ネガティブな感情の対処方法にも様々な種類があります。気晴らしに友達と遊びに行ったり、感情を抑え込もうとしたり、人によって対処方法も違うのではないでしょうか。

カリフォルニア大学の研究では、感情の対処方法を次の6種類に分類しています。

  • 状況の選択
    友達と遊びに行くなど、自分にとってポジティブになれる状況を作ること
  • 状況の修正
    ネガティブな感情を感じてしまっている状況を改善して、感情の根本原因をなくそうとする方法
  • 気を散らす
    全く別のことを考えて、ネガティブな感情から考えをそらすこと
  • ポジティブなリアプレイザル
    ネガティブなことをポジティブに捉え直す方法。例えば、失敗してしまったけど、学びの機会になってよかったなとか
  • 距離を置くリアプレイザル
    ネガティブなことを客観的に距離を置いて見る方法。例えば、失敗してしまったけど、全部が悪かったわけではないなとか。
  • 抑制
    ネガティブな感情を抑制して、できるだけ鎮めようとする方法

年齢と感情対処のバラエティ

それでカリフォルニア大学の研究では、

  • 年齢が高まるほど、より多くの感情対処方法を学んで、対処法のバラエティが増しているのか?

という点を調べています。

対象となったのは23歳〜85歳にわたる136組の夫婦で、普段のどのような感情の対処をしているのかの習慣の調査と、実際に9日間の毎日の感情対処の記録がデータとして分析されています。

結果:年齢と感情対処法の変化

早速研究の結果を見てみると、まず感情の対処方法の変化として

  • 年齢が高い人ほど感情を抑制して対処することが多い傾向があった
  • 他の5つの感情の対処法については、年齢とともに増える傾向はなかった

ということが分かっています。

唯一感情の抑制のみが年齢とともに使われることが増えています。感情を無理に抑制することは、逆にその感情が頭から離れなくなって強めてしまうこともあるので注意が必要です。どちらかと言えば、リアプレイザルなどの感情への反応を変える系は効果が高いことが分かっているので、そちらが増えた方が良い気がします。

結果:年齢と感情対処のバラエティの変化

次に年齢が高い人ほど、様々な対処法を活用しているのかの分析結果を見てみると、

  • 年齢が高い人は、1日に使う感情の対処法の数は若い人と変わらなかった
  • 年齢が高い人は、日のよって感情の対処法を変えていることもなかった

ということ。

つまり、年齢が高いからといって、様々な感情の対処法を組み合わせたり、状況によって使い分けたりはしていないということ。うーん、これらの結果からすると、年齢が高まるだけでは感情の対処は上手くならないみたいですね。

まとめ

本稿では「年齢を重ねると感情の対処が上手くなるのか?」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 年齢が高まると、感情の抑制がよく使われるようにが、他の対処法は特に使用頻度は増えなかった
  • 年齢が高まっても、感情の対処法のバラエティは増えていなかった

ということ。

年齢を重ねるだけでは感情の対処はあまり上手くならないようなので、きちんと若い頃から対処法を学ぶことが大切なのかもしれませんね。リアプレイザルなどの、ネガティブな感情を実は良いものだと考える方法は効果が高いので、自分なりの良い対処法を学んでみると良いでしょう。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Another Year Older, Another Year Wiser? Emotion Regulation Strategy Selection and Flexibility Across Adulthood

Naoto

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