仕事のクリエイティビティは、歳をとるほど低下してしまうのか?
一般的に若い人の方が脳の働きが活発で、柔軟な発想も得意というイメージがあります。
そのため、斬新な商品のアイデアを出したり、既存の製品の新しい使い道を考えたり、とクリエイティビティを発揮するような仕事は若い人の方が得意だと思えます。
しかし、良いアイデアを出すためには、豊富な知識も必要なもの。そのため、仕事の経験が長くて高齢な社員の方が、知識面で上回っている分だけ、クリエイティブなアイデアを出すのにも有利かもしれません。
そこで本稿ではこの点について
- 年齢と仕事のクリエイティビティは、実際のところどう関係しているのか?
を調べてくれた研究を見ていきましょう。
年齢とクリエイティビティ
コンスタンツ大学らの研究では、117名のナースを対象にして、
- 年齢はいくつか?
- 最近1ヶ月でどんなアイデアを生み出したか?
- そのアイデアはどれくらいクリエイティビティが高いか?
(第三者が独創性を評価)
のデータを取得しています。
データは普段の仕事の中でのアイデアを対象にしているので、年齢と実際の仕事中のクリエイティビティの高さの関係が分析できるわけですね。
さらにクリエイティビティに作用する要因としては、
- ジョブコントロール
仕事をどれだけ自分の裁量でコントロールできるか? - 職場のクリエイティビティのサポート
新しいアイデアを出すことを、職場が推奨して、言い出しやすい雰囲気があるか?
の2つも考慮がされています。
結果:年齢とクリエイティビティの高さ
早速結果を見てみると、まず純粋に年齢とクリエイティビティのみを考慮した場合では
- 年齢とクリエイティビティの高さには特に関係性はなかった
ということ。
つまり、全体を平均すると、若い人も高齢な人もクリエイティビティは同じという結果になっています。
これに対して、ジョブコントロールと職場のサポートを考慮した結果を見てみると、
- ジョブコントロールが低い場合は、高齢になるほどクリエイティビティが低下していた(β=−0.35)
- ジョブコントロールが高い場合は、高齢になるほどクリエイティビティが向上していた(β=0.29)
- 職場のサポートが低い場合は、高齢になるほどクリエイティビティが低下していた(β=−0.29)
- 職場のサポートが高い場合は、高齢になるほどクリエイティビティが向上していた(β=0.22)
ということ。
つまり、仕事を自分の裁量でコントロールできて、クリエイティブなアイデアを出すことを職場が推奨している場合には、年齢が高まるほどクリエイティビティが高まるということ。こうした職場では、新しいアイデアに挑戦しやすい、高齢者は自分の経験や知識を活用してクリエイティブに働けるのでしょう。
一方で、仕事の裁量が小さく、新しいアイデアを推奨しない職場では年齢が高まるほどクリエイティブティは低下してしまっています。例えば、ルールがガチガチに決められていて、ルール通りに働くことが推奨される職場では、高齢になるほどクリエイティビティを発揮できなくなってしまいます。年齢が高くなると失敗もしにくくなるので、失敗を恐れす気持ちがクリエイティビティに壁になってしまっているのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「歳をとるほど仕事のクリエイティビティは低下してしまうのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 職場がクリエイティブな働き方を推奨せず、仕事のコントロールが低い場合には、歳をとるほどクリエイティビティは発揮できなくなってしまう
- クリエイティブなアイデアが推奨され、仕事のコントロールが高い場合には、歳をとるほどクリエイティビティは向上できる
ということ。
年配の社員の方が、経験や知識の土台がしっかりしている分だけ、クリエイティブなアイデアを考え出すの有利。しかし、この力を発揮させるには、クリエイティブな働き方を推奨する職場環境が重要ということ。失敗してもいいから自由に新しいアイデアにチャレンジする風土を大切にしましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Age and creativity at work : The interplay between job resources, age and idea creativity