人は仕事のペースを意図的に遅くしてでも、暇な時間を避けようとする
現代は仕事に追われているイメージが強く、暇なく働いているのが当たり前だと思えます。
しかし、仕事をサボるつもりはなくても、お客さんが少ない時間帯があったり、上司の判断待ちの時間があったりと、自分以外の要因で仕事が暇になることもあるでしょう。
そこで本稿では
- 人は仕事でどれくらいの時間を暇してしまっているのか?
- 暇な時間があると仕事のペースにどのような悪影響があるのか?
について調べてくれた研究を見てみましょう。
仕事の暇と仕事のペースダウン
テキサス大学の研究では、仕事の暇な時間の調査と、暇があるときの仕事のペースの変化に関する3つの実験を行っています。この研究がいう仕事の暇とは、「外部要因で仕事が進めたくても進められない状態」のことで、決まった休憩時間や自分の意思でとる小休憩は暇な時間とはカウントしていません。
この研究が行う仕事のペースの実験は
- 決められた文章をパソコンに打ち込むタスクを2回行う
というもの。ここで一つ工夫がされていて、
- 半分の参加者は1回目のタスクが終わったらすぐに次のタスクを始められる
- もう半分の参加者は1回目のタスクが早く終わっても、制限時間の20分が経つまで次のタスクに進めない
となっています。
つまり、後者の参加者の”早く仕事を終えると暇になってしまう”状況で、このときに暇にならないために意図的にタスクのペースを落とすのか?が分析されたんですね。
結果:普段仕事の暇はどのくらいあるのか?
早速結果を見てみると、
- 1週間(実働5日間)の仕事のうち暇な時間の平均は1時間9分であった
ということ。
忙しくて仕事に追われているイメージが強いので、平均で週に1時間も暇になってしまっているのは意外ですね。これは意図的な休憩時間でなく、外部要因で仕事が止まってしまっている時間なので、できれば有効活用したいわけです。
ちなみに暇な時間の経済損失をアメリカの労働人口1億3500万人で算出すると、なんと年間で1000億ドルにもなるということ。うーん、これはすごい損失ですね。
結果2:暇が予期できると人は仕事のペースを落とすのか?
続いて、仕事が早く終わっても20分経つまでは次の仕事の進めない状況で、人は意図的に仕事のペースを落とすのかを実験した結果を見てみると、
- 仕事が早く終わると暇になる状況では、参加者は仕事のペースを意図的にスローダウンさせた
- 特に仕事が終わりに近づくほど、スローダウンもどんどんひどくなっていった
- 仕事のスピードが低下したからといって、仕事が正確になっているわけでもなかった
ということ。
人は暇で退屈な状況がとことん嫌いなもの。この退屈嫌いはかなり強い感情で、ある実験で「15分間完全に暇な状況で、自分に電気ショックを流せるボタンだけあげる」と、人は自ら進んで電気ショックを受けるという実験結果もあるんですね。
今回の実験では、暇を避けるために人は意図的に仕事をペースダウンして引き伸ばすということなので、外部的な要因で暇になってしまわないように仕事のコントロールするといいでしょう。
まとめ
本稿では「仕事の暇と仕事のペース」についてお話ししまいした。
ポイントをまとめると、
- 人は週に平均で1時間9分も仕事で暇をしている
- 人は仕事が暇になりそうだと、意図的に仕事のペースをスローダウンして引き伸ばす
- 仕事のスローダウンは暇が近づくほどひどくなるし、正確さが向上することもないので単純に悪い影響しかない
ということ。
繰り返しになりますが、今回の研究がいう仕事の暇とは「外部的な要因で仕事がやりたくてもできない状況」のことです。決して休憩無しで働きっぱなしにしろという意味ではないので注意してください。
仕事で暇になることがあるなら、あらかじめ他の仕事を用意しておくとか、対策を考えておくと暇な時間も仕事のペースダウンも防げるでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : The downside of downtime: The prevalence and work pacing consequences of idle time at work