「多様性の科学」を読んだのでポイントをまとめてみた

最近、マシュー・サイド氏の著書「多様性の科学」を読みましたので、本稿ではこの本で書かれていたポイントについてまとめたいと思います。マシュー・サイド氏は「失敗の科学」でも有名なコラムニストの方ですね。

多様性のメリット

似通った人ばかりが集まると意見やアイデアも同じようなものばかりになってしまいます。そこで、国籍や性別、考え方、スキル、経験など様々なバックグラウンドの人を集めて、それぞれの個性を活かした方がアイデアが広がるわけですね。これは会社のような組織でもそうですし、社会全体で見てもそうでしょう。

この図を見れば一目瞭然で、多様な人が集まった集団の方が、知識や視点の範囲が広がって、より多面的な考え方ができるようになるわけですね。

「多様性の科学」によると、多様な集団の方がパフォーマンスが高いぞ!という研究結果や、均一的な集団が大失敗したぞ!という事例はたくさんあって

  • 暗号解読に数学者だけでなくクロスワードパズルの選手を投入したら、歴史が変わるような発見をした
  • CIAが中流階級出身のエリートばかりだったので、テロの前兆に気がつけなかった
  • サッカーの技術委員会に起業家や陸軍士官を参加させたら、メンタルの鍛え方や食事の管理など多様な意見が出て成功した

などなど面白い話がたくさん書かれています。

多様性を活かすためにやってはいけないこと

さらに、多様性を高めたとしても、いくつかの阻害要因があると全く活かされなくなってしまいます。「多様性の科学」にはそれらの要因についても詳しく書かれていたので、そのポイントをまとめます。

阻害要因①:全く関係ない人まで集めてしまう

多様性を高めるといっても全く関係ない人まで集めてしまうと問題になります。例えば、飛行機の設計やAIのプログラミングなど専門知識が必要な仕事で、最低限の知識がない人がいたら話が進まなくなってしまうでしょう。下図のように役に立つ範囲外の多様性は意味を持ちません。

阻害要因②:固定観念

多様な意見が発言されても、それが馬鹿げた意見だと頭ごなしに否定してしまっては知識は広がりません。これはイノベーションのような新しい発明によく見られ、

  • スーツケースにキャスター(車輪)をつける発明は、当初頭ごなしに否定されて全く受け入れられなかった

など、この手の話はよく聞きますよね。

なので多様性を活かすには、柔軟でオープンな思考が必要になります。オープンな思考を手にした集団では、一つのアイデアが他の人にインスピレーションを与えて新しいアイデアを生み、それがまた他の人にインスピレーションを与えるといった波及効果が得られます。

阻害要因③:順位制(ヒエラルキー)

順位制(ヒエラルキー)の強い組織、つまり偉い人の権力が強くて逆らえない組織では、多様性は意味を持たなくなってしまいます。せっかく多様な人を集めても、みんなが意見を言い出せないのなら意味がないわけですね。この問題は結構根強くて、

  • 飛行機のパイロットで上官に間違っていることを言い出せなくて大事故になった
  • 登山家の集団で天候などの状況が怪しくなってきたが、下山すべきことを言い出せなくて死者が出た

といった大事故がこれまでにも起きているということ。しかし、権力を持つ人が全く必要ないわけではなく、以前にGoogleが管理職を廃止して失敗したりしています。みんなが好き放題したらまとまらないので、全体をまとめるリーダーも必要なわけです。

これらの事例から学べる大切なポイントは

  • 尊敬されるリーダー + 自由に意見を言い出せる心理的安全

の組み合わせが多様性を活かすために必要だということなんですね。

阻害要因④:エコーチェンバー現象

多様性を高めるには、色々な人とコミュニケーションをとって、様々な考え方に触れることが効果的と考えられます。しかし、これが現実には逆効果になってしまうというのがエコーチェンバー現象。具体的にどんなことが起こるのかというと、

  • 多様な人をたくさん集めすぎると、人は自分を似た人ばかりとグループを作って多様性は広がらなかった。多様な人を少人数だけ集めると、少人数ゆえに自分と違う人ともコミュニケーションも必須になり、こっちの方が多様性は広がった
  • 〇〇派vs〇〇派のように対立する場合、自分と違う派閥の意見に触れさせると、相手の理解が深めるどころか、自分達の方が正しいという信念を強めてしまった

ということが起きるんですね。

なので固定観念を捨てて相手の意見を受け入れる姿勢がないと、多様性が対立の元になってしまう危険があるわけです。

まとめ

本稿では「多様性の科学」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 多様な人が集まったチームは、似通った人が集まったチームよりも、知識や視点の幅が広く、良いパフォーマンスを発揮する
  • ただし多様性を活かすには次の点に注意すること
    ①役に立たない知識や視点はチームに入れても意味ない
    ②固定観念があると多様な意見がつぶされてしまう
    ③権力者に意見が偏っていると多様な意見がつぶされてしまう
    ④エコーチェンバー現象に注意しないと対立を生んでしまう

ということ。

多様性の科学には様々な事例が載せられていて、それらがどれも面白いので、興味がある人はぜひ自分で読んでみてください。

以上、本稿はここまで。

Naoto

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